農民連
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[組織の紹介]

「有機農産物」と「表示」問題

安全性をいうなら、輸入農産物の残留農薬こそ大問題!
「表示」は農民から買いたたき、消費者に高く売りつけるだけ


はじめに

 コーデックス委員会(国連食糧農業機構・世界保健機構合同食品規格委員会)が決めようとしている「有機農産物」認証の基準は、
 a三年間、化学肥料と農薬をまったく使わない農畜産物を「有機農産物」と認証する
 b有機物を腐らせて腐植をつくり、土づくりをするという有機農業本来の概念はない
 cそれ以外のものは「有機農産物」と名乗ってはならない
──というものである。
 コーデックス委員会の有機農産物の基準は、土作りや輪作、観察・考察という本当の有機農業に長年取り組んできたものと、似て非なるものとをいっしょくたにして、消費者ばかりか、当の農民すら混乱させるものである。

I 「表示」をめぐる問題と議論から

 コーデックス委員会の検討とあわせて、「有機農産物」の「表示」をすべきだという議論が行われている。生協や学者、農民の間から様々な議論がある。問題点を整理してみよう。

1 “基準”“表示”問題を輸入との関係だけでみるのはズレているか

(1) 「基準問題は輸入攻勢以前から始まっている。ヨーロッパの農民が自主的に始めたのだ」「“基準”“表示”問題を輸入との関係だけでみるのは一面的だ」(研究者Z氏)という意見について

 学説や解釈はさておいて、現実に日本で起こっている事態は、「有機農産物」をテコにした輸入攻勢であり、販売合戦である。現に、大商社は大宣伝をし、デパートでも「オーガニック」大豆製品などが並べられている。この輸入攻勢を議論からはずせというのは、まさに洪水のような残留農薬漬け農産物の輸入を免罪するものである。農業基本法以来、日本農業は、規模拡大・効率主義など、有機農業の考え方とは相いれない輸入第一主義によって歪められてきた。いままた残留農薬問題を免罪して「農産物の輸入総自由化」攻勢に歩調を合わせることができるだろうか。
 農民連・産直協は、九二年に農水省が「有機農産物等に係わる表示ガイドライン」を決めたときから、これが農産物の輸入総自由化に標準を合わせたものとして批判してきた。昨日今日の話ではない。
 いま農民連は、コーデックス委員会の「有機農産物認証基準」を農産物の輸入攻勢と位置づけ、「表示」問題も結局、これに結びつくものと位置づけるとともに、「有機農業宣言」で日本農業の「歪み」をただし「本来の農業」を探究することを掲げているのである。

(2)「ヨーロッパでもアメリカでも、“基準”に国が関与しているのにわが国は遅れている。そういう事態を認識しないのは情勢認識がズレている」(Z氏)という意見について

 ヨーロッパと日本の農業政策には、農業保護・振興や条件不利地域対策、価格引き下げ補てんなどで雲泥の差がある。
 また、ヨーロッパでは硝酸態チッソによる地下水汚染が大問題になっており、これが「低投入型」の農業を進めざるをえない背景にある。一方、日本では「消費者においしい農産物をより安定的に届けたい」として有機農業運動が始まったが、日本政府は、これを妨害こそすれ、支援などはまったくせず、リスクは全部農民が負ってきたではないか。
 こういうことをアイマイにしているのが、この主張の特徴である。

(3)「残留農薬を分析するという方法もあるが、これはエンドレスで、出る確率も高くないし、出るときはすでに食べてしまっている」「残留農薬分析はコストがかかる。消費者は支持しない」(Z氏)という主張について

a「エンドレスだ(きりがない)から分析をやめろ」ということなのだろうか?
 残留農薬が検出される確率が低いのは、厚生省の基準と統計の取り方に大きな問題があることを見る必要がある。
 山口英昌氏によると、厚生省の農薬の検出率は輸入品で検査農薬数の〇・九五%、国産品で〇・六〇%となっている。
 「ところが、東京都食品監視指導センターの九四年度の輸入農産物の調査結果では、農薬の検出率は二〇・〇%と報告されており、厚生省の調査結果とはケタが違います……たとえば、農産物十品目についてそれぞれ十農薬の検査をしたとき、一品目から一農薬が検出された場合、厚生省の検出率は、調査農薬延べ百件に対して一件検出として、検出率一%としています。東京都の場合は、十品目中一品目からの検出で検出率一〇%としています。この集計方法の違いによって検出率に大きな違いがでています。厚生省の検出率の数え方では、検出されそうにない農薬をたくさん検査すれば検出率は下がることになります。農薬の検出される農産物の割合をあらわす東京都の検出率のあらわしかたの方が適切でしょう」(『食の安全読本』合同出版)

b「検査結果が出るときはすでに食べてしまっている」、だから「残留農薬の検査などやめてしまえ」というのでは、輸入自由化論者や大商社が泣いて喜ぶだろう。「コストがかかるからやめろ」というのも「輸入食品の分析をするな」というSPS協定を支持し、農民の後ろから鉄砲を打つようなものではないか。
 いくつかの生協は自ら分析装置をもって農民の産直野菜を分析している。そういう場合「検出しても、もう食べてしまった後だから仕方がない」などと言って済むのだろうか。

c Z氏は「オーガニックは“残留ゼロ”を証明しない。“残留ゼロ”よりオーガニックそのものに価値がある」とも主張している。「オリンピックは参加することに意義がある」じゃあるまいし、これほど残留農薬を免罪し、ニセ「オーガニック」に寛大な主張を見たことはない。

*  *  *

 こう言ったからといってわれわれは農薬を無頓着に使おうというのではない。
 われわれもまた、有機農業に意欲的に取り組むことを提唱する。そして農民連分析センターは会員の依頼に応えて分析するとともに、農薬の残留濃度を率直に指摘している。X、Y県の生産者が分析を依頼したところ残留農薬が検出されたが、その後改善された。

2 X生協の「表示」(シール)へのこだわり

(1) 「どんな栽培をしているのか、組合員からの問い合わせが多い。いちいち仕様書を送るわけにいかない。簡単なものがほしい。一瞬にして分かりやすいもの。それが表示だ」──という主張について

 農産物の栽培過程や農家の苦労を「一瞬にして分かりやすいものにしろ。それが表示だ」と畳み込んで回答を迫るのはいかがなものか。そういう信頼が欲しいからこそ、われわれは一部の代表者や職員だけでなく、一般組合員との交流を願っている。
 また、いちいちシールをはらないと生協は信頼されないのだろうか。かつては「○○歯磨き」は「コープ歯磨き」と変えただけで売れ行きがグンと増えたというが、生協の担当理事や職員が現地を確認するだけでは組合員は信用しない時代になったのだろうか。
 強風ですり傷がちょっとでもつけば、ナスが株間に敷きつめたほど捨てられる現場を見た理事長が「もったいない」と言ったという。しかし、農民はすり傷が少しでもついていたら担当職員からどなられる。しかもその農家はアブラムシを無農薬で防除しようとして、いつも吹く風上に背丈二メートルにも及ぶソルゴー(イネ科)を植えていたが、逆の風が吹いてすり傷がついたのだという。こういう事情を「一瞬にして分かりやすく」説明できるシールをと言われても、どう説明すればいいのだろうか。

(2)「シールを貼ることで野菜ボックスのイメージがかわる。だから安心して下さいと言える」──というが

 農水省は「有機農産物及び特別栽培農産物に係わる表示ガイドライン」 (九七年十二月二十六日) で農産物を六段階に分けた。
 X生協は、これによく似た「五段階表示」((1)有機=無化学肥料・無農薬)、(2)同転換中、(3)減化学肥料・減農薬、(4)減農薬のみ、(5)従来通りの作り方)に分類したシールをはることを生産者側に要請した。その話し合いのなかで「いまの表示だけではすまない。次の段階を考えていかないとまずい。ヨーロッパやアメリカから遅れる」という発言もあった。だが、この考え方の行き着くところはコーデックス委員会の基準である。

3「表示」問題は、栽培法や技術の問題ではなく、海外「有機農産物」を輸入して大もうけすることを狙い、さらにこれをテコにして国内農産物を買いたたこうとするところに問題の本質がある

 いま問題になっている有機農産物の「表示」は、栽培技術に関連するもののように見えながら、
(1)「表示」をテコにして、大量には出回りにくいはずの、したがってまがいものの恐れがある輸入「有機農産物」を売り込み、
(2) デパートや大スーパーが収益を挙げようとして国内農産物にも差別化を持ち込む。
(3) やがて、その他の流通業者や生協なども販売合戦に負けまいとして「有機農産物」を扱うようになり、
(4) 生産者にも「シール」などで差別化を要求し、完全無化学肥料・無農薬でなければ買いたたいたり、切り捨てる。
(5) 輸入「有機農産物」では農薬が検出されても黙って公表をしないのに、もし国産にまがいものがあればただちに取引停止にする。
──というように、全体として国内農産物を買いたたくようになるであろう。
 ここに「表示」の本質的問題がある。結局は、表示(シール)問題は、目先の議論で、大商社の戦略を見ない大きな弱点をもっている。
 産直野菜を幾つかの段階に分けてシールをはって出荷するのは「無化学肥料・無農薬」という一つの規格でなく数種に分けたものではあるが、本質は「有機農産物=無化学肥料・無農薬」の延長線上の問題である。

4 農民の側からも ──「差別化して有利に売るためには“有機農産物”の表示は当然」か?

 「苦労して有機栽培で作った農産物だから、まがいものの有機農産物と一緒にされてはたまらない」という理由で有機農産物 の厳格な表示を主張する人もいる。しかし、
(1) 土づくりを基礎とした農業こそ本来の農業であって、誇りには思っても、威張って他を排撃する筋合いのものではあるまい。農業が厳しい状況に置かれているので生き残るための努力はもっともだが、もし生き残ろうというなら、多くの仲間と団結するのが望ましいのではないか。
(2) ニセ有機農産物が安く入ってきたとき、どのようにして対抗するつもりなのか。個人が対抗できるだろうか。農民連は、北から南まで三千キロもある日本列島では、ほとんどの作物がどこかで生産できるから、全国をつないで輸入農産物と対抗するべきだと考える。
(3) かつて「世界の各地に私たちの食べ物を作ってくれる人たちがいる」というキャッチフレーズで「国際産直」を推進した生協があった。「外国産の方が表示がハッキリしていて安心だから」と、輸入優先か、買いたたきを招かないという保証があろうか。
 現実の「有機農産物認証基準」についての学習宣伝がないと、こうした動きに対応することはできないだろう。

II 安全性の問題なら残留農薬こそ
  ──大商社は残留農薬まみれの農産物を大量に輸入し、それには口をつぐんで、有機農産物の大宣伝──

1 残留農薬こそが大問題──WTO協定以後、いっそう大手を振って入っている

 国民にとって、食品の安全性で今日の最大の問題は残留農薬である。ところが、いま、大商社やマスコミは、この残留農薬にはまったくほおかむりして、あたかもアメリカの「有機農産物」が日本の農畜産物よりはるかに安全であるかのように宣伝している。すり替えもはなはだしい。ここにこそ最大の問題がある。
(1) WTO協定の「衛生・植物の検疫に関する協定」(SPS協定)にもとづいて、政府は従来の日本の残留農薬の基準を数倍〜千倍に薄め、食品衛生法を改悪した(表1)。
(2) 規制緩和の政策が港湾・税関にもあらわれている。港では輸入手続きがどんどん簡素化されて、いまや輸入食品の安全性の確認がますます難しくなって、素通りに近くなっている。

2 大商社のあくどさ

 残留農薬いっぱいの農産物を輸入している大商社が「オーガニック食品」を取り扱うのは、国民の八三・四%が「高くても国産の農産物を食べたい」(九六年総理府調査)と望んでいる動向を利用して、「有機農産物」を新たなもうけのタネにするためである。
 大商社はまた、遺伝子組換農産物を取り扱うのに大変熱心である。大豆製品を扱う業界に「遺伝子組換大豆を使わないのはケシカラン」と圧力をかけたといわれる。
 モンサント社は除草剤ラウンドアップを作る製薬会社である。そのモンサント社のラップ氏が、九七年二月十九日、「次世代組み換えDNA技術開発研究・国際情報交流会議」(科学技術庁研究交流センター)で次のように発言したことは、彼らの狙いが除草剤の売上げを伸ばすことにあること
 ──人類のためなどではなく、営業利潤のためであることを物語っている。
 「なぜ、我々はこんなに頑張って植物バイオテクノロジーの分野をやっているのか……具体的な答としてラウンドアップレディ大豆がある。つまり、このような技術を使うことにより、これから我々のラウンドアップという除草剤の売り上げを伸ばしていくビジネスチャンスが得られると考えた」
 ラウンドアップ・レディ大豆が強力な除草剤を使うために開発されたものであることは明白だが、こういう大豆を「有機農産物」として認めるという。こんないいかげんな話があるだろうか。

3 本当の有機農産物は圃場の〇・一五%だけ
  ──ニセモノが横行するのは当然──

 大商社はアメリカの「有機農産物」が、日本の市場を席巻するかのように宣伝している。
 だが、アメリカの「有機農産物」は生産が急激に伸びているとはいえ、全耕地面積の〇・一五%にすぎない(表2)。無化学肥料・無農薬であれば収量は少ないから、生産量は作付面積の比率より低いはずである。
 その有機農産物が多量に出回るというなら、その中にニセモノが入り込むのは当然である。
 農民連・分析センターが東京・池袋の西武デパートで入手した「有機農産物」の認証(ほとんどがOCIAの認証)を受けた大豆の製品(豆腐・味噌・醤油・納豆)のすべてから有機燐系農薬が検出されたことは、この主張を裏づけるものである。  果たせるかな、九七年十二月、アメリカのオーガニック(有機農産物)認定機関であるOCIA(アメリカ有機農作物改良協会)は上部認定団体であるドイツの有機農業運動国際連盟(IFOAM)から一カ月の猶予つきで認定の取消しを通告された。

4 有機農業についての根本的な認識の違い

 「地力」という言葉が外国にはない(江川友治『農と土の科学を考える』)といわれるとおり、アメリカのOCIAやコーデックス委員会の「有機農産物認証基準」のどこを探しても、「土づくり」という概念はない。
 さらに、「何も知らないのか」と言いたくなるような議論もある。
 「日本の農業は有機栽培に適していないという。九州・四国は高温多湿だ……アメリカの西部も北海道と全く同じでやりやすく、それは砂漠地帯、半乾燥地帯である。ここは水をまけば虫も出てこない。以前、サクラメントの農家に行ったら、わらを燃やして熱量を利用していた。なぜわらを燃やすんだと聞いたら、向こうは砂漠なのでわらが腐らないのだという。何年たってもその状態で、そういう土地は有機栽培がやりやすい」(横田哲治『オーガニック食品最前線』)
 要するに、土作り(有機農業)にとって欠かせない腐植ができない方が有機農業がやりやすいというのである。ワラが腐らないところなら、微生物がおらず、油粕のような有機質肥料も分解吸収されないはずである。それなのになぜ「有機栽培」が可能なのか。
 「有機農業とは化学肥料と農薬を使わないこと」という理解、土作りより、何が何でも農薬はもちろん、化学肥料までいっさい否定し、「無機」を排除すれば「有機」農業だという考えが内外に共通している。

III 「有機農産物認証基準」は何をもたらすか

1 農業は条件によって非常に違うので、一つの基準で律することは無理である

 作物の生育は条件によって非常に違う。極端な場合にはそれほど広くない一枚の圃場でも肥料や管理の仕方が違う。まして旧町村や郡単位で考えたら、一つの栽培基準で律しきれないのは当然である。
 いわんや、世界を無化学肥料・無農薬という一つの基準で律することの不合理さはいうまでもない。冷涼寡雨の乾燥地帯の農業の手法を、温暖多雨のモンスーン地域に適用することの愚かさはいうまでもない。
 「コーデックスの基準を適用しないのは世界の趨勢に遅れている」というのは、農業生産のなんたるかをわきまえないものではないか。
 誤解を生まないために、一言つけ加えれば、われわれも決して居直って農薬を大量に使うことをよしとしているのではない。
 土づくりをはじめとする農業本来のあり方を追求する人々の実践は貴重だし、それぞれの条件のもとに築いてきた技術だけに、どこでも一律に当てはまるものではないにしても、その観察や工夫や努力には傾聴に値するものがある(雑誌『農民』No.43参照)。
 大事なことは、そういう営みや試みの個々の例を一般的に押しつけたり、機械的にまねするのではなく、条件にあった工夫や栽培法を実践することである。

2 消費者にとって

(1) いっそうひどくなる残留農薬をそのま ま許すことになる

 現実には残留農薬たっぷりの農産物がいっそう大手を振って輸入されるのに、認証された「有機農産物」が安心だからとこれに飛びついて高く買わされ、それ以外のものはよりひどい残留農薬まみれのものを食べさせられることになる。

(2) ニセ「有機農産物」が横行する危険性

 先に指摘したように、有機農産物がマスコミが騒ぐほど市場に出回るはずがなく、ニセモノがはびこるのは避けられない。
 現にアメリカで裁判にかかった例もあり、コーデックス委員会はその危険を否定しできなかった。
 われわれは、日本に多くのニセ「有機農産物」が輸入されること、消費者が「オーガニック」の名によって安全性に欠けるものを不当に高く売りつけられることを恐れる。農民連分析センターの分析結果は「表示」が消費者にとっては必ずしも安心できるものではないことを示している。

IV 「有機農産物」表示にどう対応するか
──農民連・産直協の「表示」──

 「どんな栽培をしているか」が分かるような便りを消費者に届ける努力と工夫をしよう。
 次の点を踏まえ、各組織で具体化し、消費者団体と合意しよう。

1 組織ごとに、栽培過程を明らかにできる表示システムを探究する

 「有機農業宣言」を実践し、発展させ、各組織独自の栽培基準、農薬使用基準、排除農薬など、それぞれの地域特性を生かした栽培過程を明らかにできる表示システムを各組織で作る。

2 各農産物に、生産者を特定できる個人カード(生産者カード)を入れる

 生産者名とその時々の様々な情報や思いを「生産者カード」として入れよう。

3 出荷時の残留農薬値に関する考え方

 農民連分析センターでの定期的な分析結果を栽培技術の向上や販売活動に生かしている産直センターの事例を普及し、分析を定期的に行おう。

V 本来の有機農業の追求を

 農民連・産直協は九七年六月「有機農業宣言」で、アメリカやコーデックス委員会の「有機農産物認証基準」を批判するだけでなく、本来の有機農業を実践することを宣言した。

(1) 日本農業のゆがみ

 農業基本法以来、政府は農産物輸入自由化を当然の前提にして、農政の基本を規模拡大・効率化においてきた(規模拡大や効率化・コストダウンを一律に否定するものではないが、自由化を前提にしたり、条件を問わず規模拡大・効率化を至上のものとしたところに問題がある)。
 土づくりの基本になる有機物、つまりワラ類のもとになる麦・雑穀類が輸入自由化で衰退した。これは土に腐植を増やして土づくりをする条件を大きくそこねた。また、輸入自由化は、大豆や雑豆も輸入自由化で衰退させ、輪作の条件も奪った。
 加えて、野菜生産出荷安定法は、少品目大量生産を促進し、連作障害を引き起こし、農薬の使用量は年を追って増えた。
 それが農薬をいっさい否定する傾向を生み、あるいは、冷凉寡雨の国の農法を高温多雨のモンスーン地帯の国に押しつける議論に拍車をかけた。
 農政のこうした歪みはWTO協定以後、さらに拡大した。

(2) 農業の基本である土づくりをしよう

 a麦・雑穀を含めて、穀物(イネ科)の作物を輪作に取り入れ、ワラを大地に還元しよう。田畑輪換を活用した作付けも考えよう。
 b堆肥センターを共同の力で作るなど、多くの人が土づくりに励める条件を作って、化学肥料や農薬の使用量を減らす条件を作ろう。

(3) 観察と考察を

 圃場・作物、あるいは昆虫(害虫も含む)の状況を詳しく観察して、農薬をなるべく使わなくてすむような栽培・管理に努めよう。

(4) 地域での組織的な研究・検討を大事に

 農薬をなるべく使わないための新しい研究成果を、地域の条件をふまえて活かす組織的な検討や研究会を開こう。

(5) 土づくり、輪作、観察と考察、集団的技術の研究などを基礎に、病虫害が出ないようにし、化学肥料や農薬が少なくてすむよう、地域の条件を考えた栽培法の確立に努力する。化学肥料・農薬は全面的な否定はしない

(6) 種苗会社や市場に振り回されて在来の貴重な数々の遺伝子を失った経験から、在来の品種の遺伝子の保存と位置づけ、自家採種にも努力しよう

(7) 奪われた農産物加工を取り戻して、産直運動にも活かそう

(8) 産地間競争でなく、共同して本当の有機農業を探究しながら、「有機農産物」輸入とたたかおう

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