「農民」記事データベース20000717-457-01

野ざらし、病原菌、農薬汚染…

輸入農作物の恐るべき実態を見た

神戸港・泉大津港

 「輸入農産物の恐ろしさを改めて感じた」――六月二十八日、二十九日の両日、農民連の小林節夫代表常任委員らとともに、大阪と神戸の港見学をしました。国民的に食の安全を求める声が高まっているなかで、“こんな輸入がまだ続けられている。しかもどんどんひどくなっている。信じがたく、許せない”という思いがこみ上げてきました。
(産直協 笠原尚)


一年以上野積みでコケ、カビ…“死骸”のようなショウガの山

 大阪・泉大津のある倉庫では、膨大な量の輸入ショウガが建物の外に見上げるほどの高さに積まれたまま雨ざらしにされていました。木箱は傷んでドス黒くなり、コケとカビがびっしり。大きなキノコまで生えていて、これが“食べ物”として流通するなどとは信じられません。一年以上も放置されることがよくあるそうです。

 ビニールで包まれたショウガは、タイで塩蔵加工されて来たもので、その後、日本国内で加工用として出回ります。二〇%濃度で塩漬けにされて来るので、冬でも夏でもいつまでたっても腐らない。それを加工業者が専用の薬品で塩を抜き、さらに別の薬品で脱色したあと、また薬品で着色し、味を付ける。お弁当や丼物に副菜として使われるため安く大量に出回るそうです。

 “死骸”のようなショウガを見て、「こんなもの食べられない」と一行は顔面蒼白で、その後入った寿司屋さんで出された“ガリ”には誰も手をつけようとしませんでした。ショウガのほかにも、山菜、漬け物など同じような方法で貯蔵されているそうです。

発ガン性農薬ドップリのグレープフルーツが公然と

 泉大津の港のあらゆる所でグレープフルーツを見かけましたが、ダンボール箱には「防ばい剤…イマザリル使用」と表示されていました。イマザリルは、輸入農産物に使用される防カビのポストハーベスト農薬。発ガン性があるため、日本国内では使用禁止です。以前は輸入農産物に対しても認められていませんでしたが、今日では食品添加物と名乗って平然と日本に入って来ます。

 これはWTO後、食品衛生法が大幅緩和されたからです。日本の国内では使っていけない農薬が、輸入農産物なら使ってもいいなど、道理が通るわけがありません。輸入果物の恐ろしさを感じる一方、安全な食を求める世論とWTO体制は両立しないと痛感しました。

輸入タマネギの病原菌が淡路産に感染して大被害

 神戸の港では、大量の加工用タマネギが積んでありました。積みっぱなしで芽が出ていましたが、これらは加工用にまわるそうです。この輸入タマネギに含まれる病原菌が、タマネギのスライス加工業者の多い淡路に深刻な被害をもたらしています。タマネギの皮には、ホワイトポトリストという、タマネギを腐らせてしまう病気を発生させる病原菌が含まれています。その病原菌がめぐりめぐって、淡路特産のタマネギにも感染しています。

 淡路島には、輸入タマネギが入ってくるまではこんな病気はありませんでした。「被害がひどく、淡路では深刻な悩みです。なにもしてくれない行政と年々広がる被害の板挟みで農家は苦しめられています」と兵庫県連の井之口薫さんは悲痛な面持ちで語ります。兵庫県議会でも取り上げられ対策を講じていますが、今だ打開策はないそうです。一方で輸入タマネギは止めどなく上陸して来ます。

ストップされた農薬漬けエンドウ豆が香港へ逆流通

 つい最近、税関検査の中で、中国から持ち込まれようとしたエンドウ豆から使用限度を大幅に超える農薬が検出され突っ返されるという出来事がありました。

 現在は輸入品のチェック制度が大幅に緩まり、ほとんどが簡単な書類手続きだけで素通りできます。安全を守る本来の税関制度が大きく歪められています。税関の現場では、輸入品百件のうち三件しか検査できないそうです。そんな中でも検査の力で、農薬たっぷりのエンドウ豆が食卓に並ぶことは免れました。しかし、圧倒的多数の輸入農産物は、検査を通らずに今も次々と入ってきています。

 驚くべきことに、このエンドウ豆は、なんと香港に運ばれ流通しているそうです。日本では危険だという烙印を押され、追い出されたはず。それを儲けのためには、検査の基準がゆるい他の国に売り込むなど、許し難い怒りを感じます。

カット白菜から大根オロシまで絶え間なく押し寄せる輸入品

 泉大津の港ではカット白菜も倉庫に積み上げられていました。「エコ・ベジー夕」(環境に優しい野菜)―野菜クズを出さないから環境を汚さない、という触れ込みです。しかし、カット野菜は酸化しないように必ず燐酸塩かクエン酸塩に漬けられています。何日たっても変色もしない野菜が、環境にも健康にも良いはずがありません。

 また最近では大根おろしまで輸入されています。ありとあらゆる調理品が輸入され見せかけの鮮度をつくろうためにどんな措置が施されているか知れません。

 ガントリークレーンという途方もなく巨大なクレーンが、神戸港に林立しています。その巨体からは想像もできないものすごいスピードで動き、コンテナを陸揚げします。神戸港では一日に六千体もの大型コンテナが運び込まれるそうです。

 農産物はリレー式で世界各国から切れ目なくどんどん輸入されてきます。例えばカボチャは、秋はメキシコ、冬はトンガ、春はニュージーランド。タマネギは秋はアメリカ、冬春夏はニュージーランド。他にもニンジン、メロンなど、世界中から輸入攻勢が年中無休で押し寄せてきます。

(新聞「農民」2000.7.17付)
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2000年7月

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