「農民」記事データベース20001120-471-08

“採れたて”が人気の秘訣

住宅街の直売所36年

東京・国立市の中村信久さん

 東京都国立市の専業農家で、新聞「農民」の読者である中村信久さん(66歳)は庭先で直売所を始めて今年が三十六年目。店の売り上げは一千万円を超える。そんな話を聞きつけ、東京農民連の武山健二郎氏と訪ねました。
(産直協 笠原尚)


 中村さんの直売所はJR線谷保駅の近く、大通りに面したところにあります。直売所の敷地は二坪ほどで、こじんまりとした印象。一間ほどの店頭に、野菜をズラリと並べています。

 この日、店に並んでいたのは二十品。店の売り上げは年間千五百万円、自分の作ったものだけで千二百万円にもなる。五反の畑なので反収で二百四十万円の計算になるというから驚かされます。

 市の農業委員も務める中村さんは農作業に専念、販売は奥さんの喜和さん。

 店頭の買い物客は回転が速い。自転車で来る人、買い物車を押してくる人、次々に訪れます。店に並べた野菜が売れると、すぐに裏の畑から取ってくるので「本当にとれたてだよ」と信久さんは胸を張ります。

 固定客が多い

 この辺りは昔から住宅街。近所にお店がなかった頃からの固定客が多く、最近大きなスーパーができたが客は流れない。「近頃、中国からのネギなどがすごく多いけど、輸入物は安くてもいいことがない」と信久さん。「輸入ナスに運ばれてきた害虫が日本で被害を広げていると聞いた。外国では害虫を駆除するために大量の農薬をかけていると聞く。小さい子が食べ続けたらどうなるかと心配になる。輸入のブロッコリーは硬くて味も良くない。うちの野菜は少し高いけど、お客さんは味と中身で買ってくれているんだろう」

 中村さんの野菜はどれも一袋百五十円から二百円。「モロヘイヤはここのが一番おいしいの。全然違うわよ」と買い物に来ていた婦人二人が口をそろえます。味の良さが人気の秘訣のようで、車で買いに来る常連客もいるといいます。また、調理法など、喜和さんは客との会話を自然と膨らませるので来る者に親しみを感じさせます。

 中村さんは五カ所に点在する畑をさらに細かく区切り、葉物を中心に、一年を通じて作る野菜は二十三品目に及びます。

 こだわり野菜

 肥料は様子を見ながら三日に一度は蒔き、それも細かく使い分け、中身も牛糞、油粕などこだわっています。季節物を中心に売っているが、この時期にトウモロコシも作り、十二月に出す。小松菜などは、場所を移しながら年に七〜八回作る。農作業に休みはほとんどなく、正月三日、お盆は二日などで年に八日と休まないというから、頭が下がります。

 家は江戸時代から続く農家で信久さんが十四代目。四十年ほど前、高速道路建設地に引っかかり、大半の農地を手放しました。中村さんは親の後を継ぎましたが、市場に出そうにも量がない。「それなら自分で売ろう」と始めたといいます。

 会社勤めだったので、毎朝出勤前に農作業。次第に直売所の人気は広まり、会社の給料が百五十万円の当時、野菜の売り上げが二百万円にまでなりました。五十二歳のとき、農業一本に踏み切りました。九五年には優秀農家に贈られる東京都知事賞にも輝いています。

 休む間もなく大変だったのでは?との問いに「金になるから、畑に出ないのがもったいない。疲れも感じなかった」と信久さん。「ここの野菜が一番高いけど、一番おいしい、とお客に言われるのがうれしい」と笑顔で答えてくれました。

(新聞「農民」2000.11.20付)
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2000年11月

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