「農民」記事データベース20010115-477-06

深刻なタイワンザル被害

和歌山「全頭捕獲」は決まったが…


 「タイワンザル全頭捕獲」の方針を打ち出した和歌山県(注)。県農民連は「農家にとっては死活問題。一刻も早い全頭捕獲を」と要求していますが、県は捕獲後の処分の仕方がまだ決まっていないとして捕獲を先延ばししようとしています。

 エスカレートする猿害に農家は自衛手段を講じてきましたが、もうこれ以上後がないところまで追いつめられています。十二月に猿害対策の先進地、印南町丹生地区を視察しました。

 「十年前までいなかったサルが二、三年経つと民家の屋根に登って瓦をはがす、農作物は半分食べられ、残りの半分をイノシシにやられ四分の一しか収穫できなくなった。たまりかねて九五年にサル対策委員会をつくった」と、区長の法女木(ほめき)道夫さん。

 山の畑の縁にミカンや柿などエサを置いた檻を設置。区民総がかりのとりくみで、捕獲したサルは百五十頭を超え、今では丹生地区に近寄らなくなりました。しかし「油断しては元のもくあみになるので、檻は壊せない」といいます。捕獲したサルは再び山に帰すわけにいかないので、木箱に入れて沢の淵に浸して“処分”し、来迎寺の墓地内の墓に埋めてきました。

 いま捕獲をめぐって、「サルがかわいそう」という報道が先行し、農業を続けられない深刻な農家の状況を後回しにする傾向が、一部のマスコミにあります。

 しかし、来迎寺の住職の池上省吾師は「人の生活を守るためで、むやみな殺生ではない」と言い、毎年サルの霊を鯉に移し、放流する放生会(ほうじょうえ)という供養を営んできました。さらに住職から「食事の時の『いただきます』は、あなたの命を私の命に換えさせていただきますの意味」と教えられ、命を育て、恵をいただき、日々の糧にする農業の役割をあらためて思いました。

(南部川農民組合 中田健司)


  海南市と和歌山市境付近の丘陵に出没し、農作物に被害を与えているタイワンザルを、和歌山県は昨年八月、「純粋な日本種のサルの保存」という目的で全頭捕獲の方針を決めました。このタイワンザルは、一九五〇年ごろ和歌山市南東部の自然動物公園が開設される際に、逃げ出した六匹が約五十年の間に二百頭近くに繁殖したもの。

(新聞「農民」2001.1.15付)
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2001年1月

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