「農民」記事データベース20010226-482-01

これはユニーク“げたばき”ヘルパーさん

長野・栄村

 高齢化率(人口に占める六十五歳以上の割合三九%という長野県下水内郡栄村。「田直し事業」で知られるこの村で、こんどはお年寄りを地域で世話をする「住民ヘルパー」(通称“げたばきさん”)制度が始まり注目されています。

 雪に埋まる栄村を広瀬進組合員の案内で訪ねました。

(冨沢)


“私も介護役”160人が有資格者に

気軽に、いつでもきめ細かいサービス

 人口二千七百人の村でヘルパー養成講習を受けた人が百六十人。うち家事援助が中心の三級資格者八十六人、身体介護ができる二級資格者が三十三人のあわせて百十九人が登録され、福祉センターの要請に応じて身近な範囲で地域や施設で介護をしています。この人たちが“げたばきさん”と呼ばれているのです。

 村役場近くにある高齢者総合福祉センターが活動拠点となり、きめ細かくさまざまな介護サービスを行います。センターには高齢者夫婦が住む住宅が二室、独身者用が三室あり、診療所へも廊下伝いに行けるなど、高齢者にやさしいつくりになっています。役場の保健福祉課長で社会福祉協議会事務局長の市川正良さんは「デイサービス、ショートステイ、在宅支援、それに住宅が一つになっていて、しかも診療所まで近くにある所はあまりないでしょう」と胸をはります。

 村の集落の多くは山や谷の間に点在して移動がたいへんです。そこで「げたばきさん」たちは地域別に八チームに分かれて訪問介護、配食サービス、デイサービス、ショートステイ、入浴サービスをします。

 なかでも秋山地区は豪雪地帯で、冬は雪道を一時間もかかる福祉センターは遠すぎます。一昨年、村は秋山郷にある村の観光宿泊施設「のよさの里」で実験的にサービスをしてみました。

 それもあってか、昨年十月、国の事業として介護予防施設「栄村高齢者生きがいセンター」が秋山地区小赤沢にできました。ここでは職員の介護員と主任ヘルパーのもとに十四名の“げたばきさん”が、月曜と金曜が訪問、火曜、水曜がデイサービス、木曜は配食サービスをしています。

 この日、生きがいセンターはデイサービスで、七人のおばあさんたちが床暖房の効いたホールで職員やげたばきさんの指導で体操や工作をしたりして楽しんでいました。長年の苦労のためか、足の悪い人が多く、それでも「おれはまだ十七歳だすけ」と笑い飛ばす元気さです。なにしろ寝たきりは村全体でも十二人、痴呆は三人しかいないのですから。

 当番日の三級の資格を持つ山田つるさん(五九歳)は「実家に八五歳、嫁ぎ先に九三歳のばあちゃんがいて、家の回りの草取りをしてくれるが、動けなくなったときの介護の役にたつと思い受講しました。みんな気心が知れてるので気楽に接することができます。でも、みなさん元気で手がかかりません。秋山で一人暮らしは十五人ほどいるけど寝たきりの人はいないんです」と話してくれました。

 だから「サービスを受ける人が少なくて介護保険料ばかり入ってくる」と市川さん。でも確実に高齢化は進みます。げたばきさんと福祉センターや生きがいセンターが、もっと力を発揮するときが来るでしょう。

 自立しながらお互いに助け合う良き農村の風習を村の行政が励まし支える―。住民自治の暖かい村の姿が白一色の雪の中に見えました。

(新聞「農民」2001.2.26付)
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2001年2月

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