「農民」記事データベース20010702-499-03

“基準値以下だから大丈夫!? 【NO!】

安全基準はSPS協定で改悪 ポテトのクロロプロファム1000倍も緩和されました

関連/ドーナツ、ケーキ、パンから農薬検出

 「ベビーフードに農薬が入っていた」「マクドナルドやロッテリアなどのハンバーガーから農薬がゾロゾロ」――輸入食品が激増するなかで、国民は食と健康への不安を高めています。農民連食品分析センターは「安全な国産の農産物を食べたい」という国民の切実な願いに応え、輸入農産物の分析を行い、その都度、本誌で発表し、大きな反響を呼んで来ました。

 こういう事態の背景にあるのは、一九九五年のWTO協定の「衛生植物検疫の措置に関する協定」(SPS協定)。SPS協定は、農薬などの食品の安全基準を国際的に統一して、輸出国とアグリビジネスの都合の良いように大幅に緩められ、日本国民の安全を無視して輸入農産物が急増しているからです。SPS協定を抜本的に改定することが、いま国民の要望です。

 数倍から千倍残留農薬の安全基準を改悪

 政府は「残留基準値以下だから大丈夫」といいますが、はたしてそうでしょうか。農薬の場合、最高で千倍も緩和されているのですから、基準値以下だといっても決して安心できないのが実体です。


小 麦

 マラチオンは10倍緩和

 マラチオン(有機燐系殺虫剤で神経毒、環境ホルモンなど毒性が強い)は小麦で八ppmです。変更前の登録基準が〇・五ppmですから、実に十六倍も緩和したのです。

 小麦の分析でマラチオンが四・三ppmも検出されたことがあるため、アメリカの要求通りに十六倍も農薬が余計に残っていても輸入できることにしたのです。

 レモンやオレンジでは八倍も緩和しました。

 フェニトロチオンは20倍改悪

 フェニトロチオンは、かつて輸入小麦の分析値が六・一ppmもあったこともあって、基準値は一〇ppmとしており、改正前の登録保留基準〇・五ppmと比較すると、二十倍も緩和されています。

 米と比較して小麦五十倍はひどすぎるのでは…

 小麦の消費量は米の約半分。パンやうどんを主食代わりに食べている人もいますので、米と基準値を比較してみましょう。

 米の基準値はマラチオンが〇・一ppm、フェニトロチオンが〇・二ppmです。小麦は米の五十〜八十倍も農薬が残留してもよいことになっているのです。

 こんなに緩和しているのは、SPS協定でアメリカなど輸出国の言い分通りにしているから。これでは国民の安全は守れません。

 ハンバーガーのパンから農薬

 ハンバーガーのパンからマラチオンが〇・〇三ppmも検出されたことについてマクドナルドは「基準値より少ないので問題がない」といっていますが、そんなことはありません。小麦の場合、変更前の〇・五ppmのままだとすれば、小麦粉では〇・〇五ppm相当。パンは水分などが加わりますから、値はそれ以下で、パンに〇・〇三ppmも残留していることは大問題なのです。本来なら残留のないようにすべきなのです。

 環境ホルモンとして悪影響

 そのうえ、マラチオンは、精子の数が減り、動物がメス化するなど、生殖に影響を与える環境ホルモンです。

 環境ホルモンはピコグラム(一兆分の一グラム)の単位――プールに一滴落としたくらいの少ない量でも悪影響があります。〇・〇三ppmは三万ピコグラム。これから結婚して子どもをつくる若い人が食べるハンバーガー。「問題がない」どころではありません。

 また、野菜から発見されたシペルメトリン、フェンバレレート、総BHCなども環境ホルモンです。

 
環境ホルモン〔農薬〕が検出されたことのある輸入農産物
環境ホルモン〔農薬〕名
輸 入 農 産 物
2.4-D レモン、グレープフルーツ、オレンジ
OPP レモン、グレープフルーツ、オレンジ
T-BHC 落花生、大豆、コーン、サンザシ、干しブドウ、リンゴ、ナツメ、ほうれん草
DDE 絹サヤ
アルディカープ オレンジ
エンドスルファン 枝豆、サクランボ、アプリコット
カルバリル イチゴ、サクランボ、枝豆、ライチ、乾燥プルーン、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、メロン、アプリコット、高菜
ディルドリン カボチャ、大豆
パラチオン オレンジ、マンゴー、枝豆、絹サヤ、ライチ、ナツメ、サクランボ
ピンクロゾリン チェリー、キウイ、レモン、イチゴ
フェンバレレート ブロッコリー、ほうれん草
ベノミル バナナ、マンゴー、オレンジ、レモン
ベルメトリン セロリ
シペルメトリン オクラ、ほうれん草
マラチオン 小麦、米、イチゴ、トウモロコシ

 

 アレルギーの原因ではないか

 小児科医の角田和彦先生は食物起因のアナフィラキシー(劇症型アレルギー)の原因の第一位は小麦だとしています。また、アレルギー性疾患を疑っての検査では小麦アレルギーが第一位で十歳の子では四五・五%もありました。

 角田先生は、その原因についてパンの原料の小麦も家畜飼料も輸入が多く、その残留農薬やダイオキシンなど化学物質を体内に取り入れることが原因だと警告しています。

 子どもの視力低下の原因?

 また、マラチオン、フェニトロチオン、クロルピリホスメチルなど有機リン系殺虫剤は神経毒で、とくに視神経を傷めます。近年、十五歳で視力一・〇以下の子どもが六割以上といわれ、子どもたちの視力の低下が心配されています。

 正木健雄教授(日体大)は輸入小麦などの有機リン系殺虫剤の影響もあることも指摘し、「子どもたちに国産の小麦で作ったパンを食べさせたいものだ」と発言しています。

 子どもらに国産小麦のパンを

 とにかく、十六〜二十倍も緩められた農薬がいっぱい入った輸入小麦を子どもには食べさせたくありません。埼玉県などでは国産の小麦を使ったパンやうどんを供給して喜ばれています。

ポテト

 農薬基準値を一番ひどく緩和したのがポテトのクロロプロファム(除草剤)です。農民連食品分析センターの分析結果では、一・〇五ppmありました。

 もとの基準〇・〇五ppmであれば輸入できません。輸入禁止をさけるため千倍も緩和し五〇ppmとしたのです。ほかのいもや野菜はみな〇・〇五ppmなのにジャガイモ調整品だけ飛び抜けて千倍も緩和したのは、大輪出国・アメリカの要求を受け入れたためです。

 子どもたちは、マクドナルドなどで売っているフライポテトが大好きです。これはほとんどがアメリカから冷凍で輸入されたものです。

 アメリカでは、ジャガイモの発芽防止にクロロプロファムを使うため必ず残留します。農薬が残っているポテトを子どもたちには絶対食べさせたくないですね。

遺伝子組み換え

 一九九九年には、グリホサート(除草剤)が大豆で六ppmから二〇ppmと三・三倍も緩和され、綿実では〇・五ppmから一〇ppmへと二十倍も緩和されました。

 これは遺伝子組み換えの大豆や綿実のグリホサート含有量が増加し、今までの基準では、輸入禁止が予想されるため。私たちは、遺伝子組み換え食品はいらないのです。

 農薬をたくさん含んだ遺伝子組み換え食品を輸入しやすくするために、基準を緩和するなんて、とんでもないことです。

 今年五月には、ハウス食品のポテトチップ「オーザック」から日本では未承認の組み換えジャガイモが検出され、全国的な回収騒ぎも起きています。


国民の健康守るためWTO・SPS協定の改定を

 基準を超えた違反品が続出

 こんなにガタガタに基準が緩められているのですが、最近はこの緩い基準にさえ違反している食品が続出しています。

 農民連食品分析センターの結果でも、ゴボウや冷凍ほうれん草、そして恐ろしいことにベビーフードからも違反品が見つかっているのです。

 こうした基準値を超えた違反の食品は、本来、チェックされて輸入禁止処分になるのが当たり前なのに、堂々とまかり通って国民の口に入っています。とくに日米構造協議でアメリカの要求で作られた「計画輸入制度」は、いったん小麦・大豆の輸入実績をつくればそれ以降は無検査で輸入できるというもの。継続輸入や事前承認を受けた場合はすぐに品物が受け取れ、まったく検査しません。

 小泉さんが大好きな「規制緩和」で、水際での検査がたったの七・七%で、あとは書類だけの審査が九二・三%というひどい状態――これが違反品続出の原因です。これでは、国民の健康は守れません。

 私たちは、アメリカなど外国の要求に従うのでなく安全基準は厳しくすること、とくに水際での厳重なチェックを要求します。

(新聞「農民」2001.7.2付)
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2001年7月

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