「農民」記事データベース20011029-514-02

安全対策、所得補償など万全に

狂牛病問題 国の責任は重大

農民連畜全協 農水省に要請

 「ついに来たか」――。国民を震撼させた国内初の狂牛病発生。牛肉消費の落ち込みは、市場価格の暴落にはね返り、日本畜産存亡の危機ともいわれています。

 「なぜ日本にも狂牛病が発生したのか」――。最大の原因は日本政府の防疫対策の甘さ。狂牛病は、決して防ぐことが難しい病気ではなく、政府による万全の対策と農家への補償がいま求められています。


 農民連と畜全協は十月十七日、安全な牛肉のみを流通させるとともに、危機的状況にある畜産農家の経営の維持・再建に万全の施策をとるよう求めて、農水省と交渉しました。事件発生以来四回目。

 「農水省が風評被害を広めた張本人」と、農水省の専門家が指摘するほど、同省の責任は重大。後手後手になった防疫対策、感染牛を肉骨粉に処理した失態などなど、調査会社が主婦を対象にしたアンケートでは、農水省、厚労省の情報が信頼できないという回答は八割以上にのぼります(「朝日」十月十四日付)。イギリスの有力な科学雑誌『ネイチャー』(九月二十七日付)は、「日本のとった呆れかえる狂牛病対策」と題する異例の批判記事を掲載しました。農水省は、狂牛病発生による農家の損害のすべての責任が同省にあることを自覚して、その補償に全力をあげるべきです。

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 飛騨牛の産地、岐阜県では枝肉価格が一キロ三百円〜五百円も下落し、産地崩壊の危機に。農家の間では「価格の戻りはあるのか」「このまま安値が続くんじゃないか」と不安が渦巻いています。

 栃木の肥育農家が十月初旬に出荷した三頭の牛は合わせて六十四万円でしたが、経費は素牛代・エサ代などで百三十五万円かかっています。農家は「こんな状態が半年も続いたら廃業だ」と、対策の緊急性を訴えます。

 酪農家も各地で、「生まれたばかりの子牛を買いとってくれる肥育農家がいない」「出荷できないヌレ子にもエサ代を補償してほしい」と悲鳴をあげています。

 東京の中央食肉市場の相場は、狂牛病の発生前と比べて、和牛(A4)で平均一キロ四百円近く下落。「A4がA3に、A3はA2に等級が一ランク下の値段。産地が崩れ、優秀な牛飼いの技術が失われていく」という危機感が広がっています。

 また、とくに下落幅が大きいのがF1(和牛とホルスタインの交雑種)や乳牛の廃用牛など下位等級のもの。F1は四割以上も暴落(図〈図はありません〉)。乳牛も半値近くになり、発生前には一日二十頭以上あった出荷が十月はほとんどゼロ。

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 こうした畜産農家の窮状を踏まえて、交渉で佐々木健三会長は「従来型のやり方ではダメだ。思い切った対策を一刻も早くとってほしい」と述べて、損害農家の所得補償や政府の買い上げを要求。要請項目の検討を約束しました。

(新聞「農民」2001.10.29付)
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2001年10月

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