「農民」記事データベース20020401-533-10

どっぷりと発ガン性農薬中国国内でも被害者続出

いま食卓に急増する中国野菜は安全か(2/2)

香港などで「毒菜」と恐れられている実体を問う

関連/いま食卓に急増する中国野菜は安全か(1/2)


 日本向け野菜生産地で多発

 香港の“毒菜”は、広東省が発生源で、メタミドホスという毒性が強い、中国特有の農薬が問題になりました。メタミドホスは、まいてから一週間以上経てば有害なレベルを脱しますが、野菜の見栄えをよくするために出荷直前にまいたのです。(左ページ上へ)

 二、三日で出荷してしまうので、食べた人はたまりません。

 いっぽう、日本に野菜を輸出している主な基地は山東省周辺です。山東省、江蘇省、安徽省、この三省が、PANのリポートによると農薬中毒事件が起きている中心だというんです。九五年の五万件近い農薬中毒のうち七六%がここで起きており、DDT、BHCといった禁止農薬を使ったり、農薬を多用したりする特殊な事情があるのではないかと推測しています。

 無反省な日本の開発輸入商社

 石黒 一昨年、山東半島の冷凍野菜工場を視察した農民連の会員は、工場近くの数カ所の畑で収穫間際のほうれん草に農薬を散布している現場に出くわしました(写 真〈写真はありません〉)。開発輸入を進めている日本の商社が見栄えのいいものを欲しがっているという事情もあるのではないでしょうか。

 瀧井 そこはよくわかりませんが、農水省の現地調査では、開発輸入といっても純粋に日本企業の管理下にあるのは二割ぐらいということです。あとはスポット買いといって相場に応じて市場で買ってくる。中国国内で流通している野菜もかなり輸入されているというのが、農水省の見方です。ですから、少なくとも開発輸入だから安全とは言えないと思います。

 私が取材を通して一番腹が立ったのは、ある輸入商社の社長が「自分はタイからオクラを輸入して、高知の産地をつぶした」と豪語していたことです。国内産地をつぶしても構わないという手合いが野菜の輸入を手がけています。

 けれども、その社長は一方で、「輸入野菜の動きは止まらないですね」と聞いたら、「そんなことはない。ハンバーガーチェーンのレタスを見てごらんなさい。あんなの野菜じゃない。栄養価もまったくない。ただ見栄えがレタスに近いからレタスと言っているだけだ」と言っていました。

 石黒 そのうえ中国産キャベツの四五%、中国産ネギの三一%が、日本の港で青酸ガスか臭化メチルでくん蒸されています。虫がいればくん蒸を受けないといけません。くん蒸されれば一定の期間、置いておかれるし、費用もかかる。それを避けようと思えば、あらかじめ殺虫剤を思いっきりまいて、虫がいない状態にしておく方が得だということになります。

 瀧井さんは、香港政府の厳しい取り締りを紹介しましたが、日本はそうなっていません。輸入野菜の検査率は七%台にすぎず、ほとんどが素通りです。香港では、違反業者は二度と輸入できないそうですが、日本では業者名や産地の公表すらされません。公表して警告を発するべきです。

野菜だけではない! 危ない中国食品
品  名
禁止理由
冷凍食品蒲焼きうなぎ 大腸菌群陽性
冷凍フグ 異種フグ〔ドクサバフグ、クロサバフグ)の混入
フグの骨 魚種鑑別不能
冷凍むき身あさり 有毒有害物質検出(下痢性貝毒:0.1MU/g)
酢漬けにんにく 液漏れ、膨張、カビ、ウジの発生
油菓子 二酸化硫黄過量残存(0.16g/kg)
卵入り中華麺、ホタテ貝入り中華麺、エビの卵入り中華麺乾燥 着色料〔食用黄色4号、食用黄色5号)の対象外使用

 消費者が食べた後で当局検査

 瀧井 さらに七%台の検査のほとんどはモニタリング検査ですね。モニタリング検査の場合、違反がわかるころにはすでに流通 されて、消費者が食べてしまった後という問題もあります。違反が都道府県に通 知されるまでに四〜五カ月もかかる。そのことを厚生労働省の担当者に質したら、「ホームページで公開する。一カ月で公開することになった」という答でした。一カ月でも消費者の口に入った後ですよ。バカバカしくてお話になりません。危ないものが入ってきたときに身を守るような体制ではありません。国の担当者と消費者との意識のズレを感じました。

 石黒 消費者が危険な食品を食べざるをえない状況が作り出されていると言えると思います。昨年一年間の輸入禁止になった事例を調べたら、スナップエンドウで五十一件、キヌサヤも四十件など百件以上あり、毎年増加しています。

 それから農民連食品分析センターが、一昨年に引き続いて、中国産の冷凍野菜を調べたら枝豆とほうれん草からやっぱり農薬が検出されました。冷凍野菜は検査の抜け道になっています。さらにキンピラやほうれん草のゴマ和えなどの加工品も原材料の産地表示がないまま惣菜コーナーに並べられ、消費者は知らずに食べさせられています。

 米や野菜は地産地消でこそ

 瀧井 そうですね。石黒さんたちが八〇年代から輸入食品に気をつけようと国民運動をやってきているのに、国は動きませんでした。その時点で動いていれば、こんなに輸入野菜が増えて、こんなに日本の農民が苦しむこともなかったと思います。本当に失政だと思います。私自身は、米と野菜くらいなんとか自給でという気持ちでいます。できることなら地産地消、地域で作って地域で食べていくというのが理想だと思っています。

 実は、知り合いのライターが中国にあるサントリーのお茶工場に入ったのですが、とんでもない農薬づけで、それ以来、ペットボトルや缶のお茶を飲まないことにしたと言うんです。それから、サラリーマンがよく食べている立ち食いソバも、ほとんど中国産です。中国産のお茶とソバを、分析センターでぜひやってほしいと思っています。分析センターの今後のご活躍を期待しています。

(新聞「農民」2002.4.1付)
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2002年4月

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