「農民」記事データベース20020408-534-02

農民が立ち上がったフランスでは

生産者・小売り 価格二重併記制に

大資本の暴利にメス

関連/この大暴落はなんだ!


 野菜の生産者価格は下がるが、スーパーなど量販店の小売価格は下がらない。この理不尽な事態をどう解決し、生産者の生活を守っていくか――。フランスでは青果農民などの激しい運動で、いくつかの成果をあげました。その一つが、店頭では小売価格だけでなく生産者価格を併記させる、価格の二重表示制度の導入です。

 フランスでは「効果が薄かった」とされていますが、これを日本でやるとどうでしょうか。フランスでは、「生産者価格と小売価格の差が大型スーパーの利益だ」と見られるのを嫌って、実際には小売の仕入れ価格も入れた三種類の価格が表示されました。

 例えば、農水省が発表した食品流通段階別価格形成追跡調査結果で、ハクサイ一個の価格を表示すると――

生産者手取価格 16円
小売仕入れ価格 109円
小売価格    210円

となります。

 農民からは安く買い、消費者には高く売りつける。この実態を知ってもらい、大資本の横暴にメスを入れることは、足を前に踏み出す大きな一歩です。


フランスの二重表示を日本でも

 不当な利益を得る量販店を告発/フランス

 青果物をめぐるフランスの取り組みを、中央果実生産出荷安定基金協会が隔月で発行する『中央果実基金通信 海外果樹農業情報』(No.46、一九九九年九月)が紹介しています。このなかで、同基金の現地情報員、佐川みかさんは、生産者価格が引き下げ続けられていることに反発し、量販店グループに抗議する農民デモの様子をはじめ、リアルに描いています。

 「デモの中には、青果物生産者が何トンものりんご、メロン、トマト等をハイパー(大型スーパー)の前にバラ撒いたり、酪農経営者が乳業工場の入口を塞いだりしたものもあった」

 ある県の農業会議所会長は、「もも、ネクタリンの…生産者価格は、これまでの生産コストをカバーしてきたが、最近は五フランまで下げさせられた結果、一kg当たり一・五フランの赤字になった。しかし、同じ商品が量販店では、相変わらず十三フラン前後で売られている」と語っている、といいます。

 フランス農業省はこの事態を受けて、九九年八月、小売店に対して、店頭表示価格に小売価格と生産者価格を併記させる二重価格表示制度を導入しました。農業団体がこうした措置を求めていたのは、「良識のある市民《消費者》に対して不当な利益を得ている量販店を告発しようという意図からである」と、佐川さんは指摘しています。

 “汚い”やり方を消費者に知らせる/フランス

 この制度を日本でも採用できないか。日園連(日本園芸農業協同組合連合会)専務理事の佐藤晉さんたちも、考えてみました。「だけど結局、二重価格表示でも生産者価格は上がらない」と、佐藤さん。

 中央果実基金の生産流通部も、この二重価格表示制度を振り返って、結果的には効果が薄かったと、同通信(No.56、二〇〇一年五月)のなかで分析しています。

 とはいえ、この二重価格表示制度は「量販店の顧客である消費者に、量販店の“汚い”やり方をみてもらい、取引の透明性を高めることを目的としていた」(同)わけで、野菜の場合、その意味では日本で試してみる価値は十分ありそうです。

 同生産流通部は、効果が薄かった原因の一つに、「フランスのほとんどの家庭が共働きなため、一週間にせいぜい一回しか買い物に行かない。短時間で必要品を買いまとめたい人達には、小売価格以外の価格表示は煩わしく思えたようだ」ということをあげています。しかし日本の消費者は、果物は別としても、生鮮食料をまとめ買いする習慣はほとんどありません。

 同通信によると、フランスではこの二重価格表示制度の動きを受けて二〇〇〇年一月、政府が主催して「商業・流通問題会議」を開催。「首相も出席し、関係業者、国会議員、ジャーナリスト、農業省及び経済省担当者等が発言を求められたこの会議で、量販店との不均衡な力関係から生産者・納入業者がつぶされないような法的な枠組みが必要である」との認識が得られました。

 そして、「ここで論じられた内容に基づき、青果物に対する特別措置が経済新規制法案に組み込まれることに」なります。この法案の審議中にも、値崩れの危機的な状況が生まれたことから、「もも、ネクタリンの規格に応じて最低生産者価格を決め」、業者間協定を締結。政府はこれにもとづいて省令でこの最低価格を全国に適用しました。

 相対取引の不透明さで生産者は昔より不利/日本

 日本では、一九九九年の卸売市場法の「改正」で、セリ・入札を原則としていた取引が崩れ、相対取引が自由になりました。このため、スーパーの力が強まり、仲卸が卸から仕入れた値段より安い値でスーパーが買い取るという逆ザヤ現象も生まれたりしています。

 こうしたことから農水省は、「相対取引の透明性を」ということで、昨年三月、相対取引について、量販店の取引面での圧力をなくすよう市場開設者に通達を出しています。

 日園連の佐藤専務は、「相対取引でも、売り手と買い手が交渉して数量と価格を決めると思っていたので、生産者の立場が弱くなるとは思っていなかった」といいます。それが、価格の決定は荷物を移動した後で、いつ決めたかも不透明。「卸会社は基準となる価格がないから、押されっぱなし。生産者は昔より不利になっている」と、佐藤専務。

 このため日園連は、この二月に「相対取引については、価格決定後でなければ荷物の移動を認めない等の行政指導の徹底」や、「量販店間の過剰な競争による行きすぎた行為(買いたたき、高利益販売等)を是正するため、フランスにおける法規制を参考にして、我が国に馴染む法規制について検討し、実施すること」を政府に要請しています。

(新聞「農民」2002.4.8付)
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2002年4月

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