「農民」記事データベース20020408-534-04

牛飼いはすごい!

2・22行動で

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 二月二十二日、農民連・畜全協、食健連が共同した「第二次BSE損害請求行動」には、生産者とともに群馬、茨城、千葉から乳牛六頭も参加した。何台ものテレビカメラが牛に向けられ、政府の無責任な態度に対する怒りともあいまって、農水省前は騒然たる状況に。

 佐々木健三会長が、かけつけた仲間をねぎらい、自身が牛飼いであるがゆえに迫力もあれば説得力もあるスピーチをはじめた。

 舞台裏では、三台のトラックから牛を下ろして農水省正門に移動させる作業。牛舎での作業着そのままの熟練した牛飼いたちが見事な綱裁きで牛を移動させる。

 その中の一頭。畜全協の住谷輝彦会長が朝早く群馬を発って運んできた乳牛二頭のうちの一頭が、宣伝カーの音響に驚いたのか、霞が関の喧騒に興奮したのか、はたまた煮え切らない農水省の対応に怒ったのか、突然、暴走した。日頃見慣れないシーンに、農水省前は空気が張り詰めた。

 挨拶途中だった佐々木会長がマイクをかなぐり捨てて暴走する牛を追いかけ、歩道と車道を隔てた垣根に突っ込んだ牛の手綱を握る住谷さんを応援。二人で牛に体を密着させ、声をかけ、顔をやさしく撫であげ、荒れ狂う牛を瞬く間に静めて、参加者を安堵させた。背広のあちこちを牛のよだれで汚しながら、「私は、暴れる牛をさばくのが得意なんですよ」と、にこやかな佐々木さん。このシーンを目の当たりにしたある労組幹部が、「畜産農家ってすごい。普段の佐々木さんと違う一面をみた」と絶句した。

 牛飼いはすごい。こんな芸当、他の誰に真似ができるというのか。牛に心を通わせることのできる牛飼いだけがなせる業だ。

 大きな目であたりを見回していた、千葉県八日市場市の安藤正司さんの牛が、農水省の正門で糞をした。「あぁー、やっちゃった」。おそらく農水省の歴史上、門前で牛が糞をしたのは初めてのことだろう。

 以前、農水省の無責任な態度に腹を立てた畜産農家が「農民連BSE一一〇番」で、「牛を連れていって、あのあたりを糞だらけにしてやりたい」と言ったことがある。

 行動に参加した仲間の思いも同じだろう。しかし、さすがである。牛を運んできたトラックにはしっかり“備え”が用意してあった。オガ屑とチリ取り、ホウキの三点セットが。すかさずオガ屑をサッとまぶしてホウキで処理。衛視の方に「すみません、やっちゃいました」と詫びたら、「牛は仕方ありませんよね。片づけてくれればいいですよ」と、やさしい言葉が返ってきた。

 政府の無責任な対応によって引き起こされたBSE。「政府は損害を償え」は、日本中の畜産農民の声であり、打撃を受けた関係業者の声だ。その運動の先頭に立つ農民連の仲間。運動は、熟練した牛飼い、洗練された紳士たちによって支えられている。

(S)

(新聞「農民」2002.4.8付)
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2002年4月

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