「農民」記事データベース20020415-535-02

農水省前で農家の苦境訴え

“農業守れ”政府に猛抗議

農民連・食健連 4・4中央行動


 BSEを発生させた政府の「重大な失政」が天下にさらされた二日後の四日、食健連と農民連が主催して「第三次BSE損害請求中央行動」が繰り広げられました。

 「共同を広げ、損害の全面補償など政府に要求の解決を迫ろう」と集まった人々は、遠くは北海道や鹿児島などから三百人余。この日提出したBSE損害請求額は、六百三十戸の十一億六千万円、累計で二千九十七戸六十億円にのぼりました。

 この日はBSE損害請求を中心とした行動でしたが、輸入の激増で生産者価格の大暴落を招いている野菜や果実農家、自主流通米の価格が六千円も暴落して収入が激減、経営が成り立たなくなっている米作農家の苦境の解決を求め、三つのグループに分かれて農水省と交渉しました。

 正午からは、農水省前で「栃木の牛」も参加して要請宣伝行動を展開。「武部大臣モ〜ヤメロ」「BSE失政の責任を取れ! 弁償せよ!!」のムシロ旗が揺れ、道行く人々には「野菜農家の実情を知ってほしい」と、無農薬のダイコンやニンジン、タマネギ、晩柑類が配られました。

 マイクを握った農民連の佐々木健三会長は「食の安全を求める大きな運動を、日本の食と農を守る大きなうねりにするために力をあわせてがんばろう」と呼びかけました。

 夕方には衆院議員面会所で、「BSE等要求実現をめざす決起集会」。福島や群馬、北海道、岩手、徳島からの代表、新日本婦人の会の高田公子副会長、日本共産党の中林よし子衆院議員らが発言しました。

 野菜・果物 価格保障を要求

 輸入が増加する野菜、果樹などのセーフガード発動と価格保障を求めた交渉には、約六十人が参加。暴落する野菜や果樹の生産者価格の実態、農民の苦しみをぶつけ、どういう対策をとるのか激しく迫りました。

 会場となった衆院第二議員会館第二会議室。愛媛県松山市で伊予柑を作っている、愛媛農民連書記長の大野政信さん(49)は、オレンジジュースの輸入が二〇〇〇年と二〇〇一年の対比で一二二%、グレープフルーツも一一四%増えていること、この輸入を止めるだけで、生産者価格を守ることができるではないか、とただしました。

 これに農水省側は「(果樹の価格に)一番大きな影響を与えているのは、国内の生産量だ」というばかり。「輸入が増えているのは関係ないというのか!」と、交渉参加者の怒りが爆発しました。

 「輸入が増えることによって、価格が下がっているんだ。あなたたちは、本当に農家のことを見ているのか。おれは、ホウレンソウとかニンジンを作っているが、いま一把五円とか十円だ。これで生産費が補えるのか」の声が飛びます。

 「輸入のせいではないというのなら、なぜ下がったのか」との追及に、「国際競争に勝たなければならない。何でも、いつまでも保護してくれでは……」と、農水省の担当者。この発言に、「日本に農業はいらないというのか」「農業を続けさせるのが農水省の仕事ではないのか」と、抗議の声が飛び交いました。

 野菜のセーフガードの発動については、「暫定発動で輸入が減った」「発動したいと思っても、他の省庁に反対されるので」と、調査に入る気がないことが示されました。

 カボチャを作っている群馬県農民連会長の長沢尚さん(68)は、「カボチャも去年はおととしの半値。農民の苦しみとか悩みとかを、何も分かっていない。農水省は誰のためにあるのか」と、怒りをぶつけていました。

 米価暴落の責任追及

 「外米が輸入されたために一俵(六十キロ)六千円も米価が暴落した。そのうえ米政策で農家を切り捨てようとしている。農家の苦境を知っているのか。BSEと同じように農水省の失政だ」米問題の交渉で、参加者の怒りが爆発しました。交渉には約六十人が参加。

 外米を輸入しながら減反を押しつけていることに対して、農水省は最初は「外米は主食用には回らないから影響はない」と答弁。しかし、参加者の要求で配られたミニマム・アクセス米(MA米)の輸入・在庫状況の資料では、この六年間に主食用にMA米が三十六万トン、加工用に百三十九万トンも輸入されています。

 参加者は「政府はWTO協定でミニマム・アクセス米(MA米)を受け入れるときに主食用に影響しないようにすると閣議決定をした。農水省は閣議決定と違うことをしているではないか」と農水省の責任を追及。さらに「加工用米は国内産の米が使われていたが、MA米が輸入された分、国産米が使用されなくなったではないか。MA米の輸入で大きな影響を受けている。外米を輸入しながら減反するのはやめろ」と要求しました。

 第三次請求書提出

 牛肉消費の低迷、廃用牛の滞留が続くなかで、農村を歩いて集めた請求書を持ち寄り、農水省の松原謙一・大臣官房審議官に手渡すとともに、交渉を行った第三次BSE損害請求行動。農水省を断罪する調査検討委員会の報告を受けて、損害の補償に踏み切るのかが大きな焦点でした。

 「夜逃げするか、自殺するしかないと話す農家もいる。一刻も早く廃用牛を出せるようにしてほしい」というのは、地域を回った福島・川俣町の斉藤房子さん。埼玉の国分衛さんは「F1は一キロ千二百円が二百円に下落。マル緊をもらっても十万円以上の赤字」と言います。北海道遠別町から参加した木村秀雄さんは「BSEが発生した猿払村は野菜も貝も売れず、地域が崩壊の危機。私の町は『絶対出すな』と農家に金を出させて廃用牛を焼いている」と現場の実態を訴えました。

 しかしまったく反省の色を見せずに、「補償は難しい」と繰り返す松原審議官。これには、「失政の責任を償うのが当然だ」という農家の怒りともに、消費者からも「地震で倒れた瓦礫の下にいる人を見殺すようなもの。そんな農水省は信用できない」と批判の声があがりました。

(新聞「農民」2002.4.15付)
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2002年4月

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