「農民」記事データベース20020415-535-09

炭焼き農民のすすめ(2)

杉浦銀治


タケノコの早出し

 竹は、松、梅とともにめでたい植物であり、日本人の文化と深い関わりがある。竹材は、カゴなど生活用品のほか、日本建築にも欠かせない存在である。しかし現在は、プラスチックなどにとって替わられ、安い竹材の輸入とあいまって、業界は瀕死の状態にある。

 昔から竹は、「伐(き)ることが植えること」と言い伝えられてきた。番傘で通れるくらいにすくことが竹林経営の基本である。古竹(五年以上)を伐らなければ、よいタケノコは生えないし、伐った竹は業者に販売してきた。ところが今は、竹が売れないのである。

 そこで、古竹を竹林内で炭にして撒けば、土壌改良剤にもなり、タケノコの生長を早められるのではないかと、一九七八年に千葉県大多喜町で実験した。「雨後のタケノコ」というくらいタケノコは水を欲しがるが、炭は保水力、保温性とも高める。孟宗竹を十アールたり二百五十〜三百本にすいて陽光が入るようにし、一平方メートル当たり三百グラム〜一キログラムの竹炭粉(五ミリ以下)を散布した。

 結果は、地温が二度くらい上昇し、タケノコの発生が六〜十日ほど早まった。カラス(商品価値がない皮の黒いタケノコ)も少なく、収量の増加、品質の向上と早出しで生産者が喜んでくれ、竹林経営の指針ができた。当時、県の普及員で竹研究者の君塚喜利氏との共同研究だった。

 いま、竹炭やきがブームで、竹炭・竹酢液もいろいろな用途が開発されている。竹炭は、炊飯器に入れたり、インテリアとしても喜ばれている。タケノコから採った栄養液も“竹の生命力の健康飲料”として開発されている。竹酢液は、PH二・五〜三・五の酸性で、アトピー予防にお風呂に入れたり、竹炭石鹸、竹炭パックなどに活用されている。

 最近、「日韓草の根炭焼き交流」で、韓国・釜山市郊外の竹塩製造工場を見学する機会に恵まれた。韓国炭研究会々長の趙在明先生の配慮である。竹塩は、真竹に天然塩を圧積して炭窯で九回焼く。最後に高温度で処理すると、紫水晶のような美しい結晶ができる。松薪だけを燃料にして松脂を助燃材に使う秘法を継承している韓国人の優れた知恵を垣間見た思いがした。竹塩は、温泉卵と究極の命の源の味がした。

(新聞「農民」2002.4.15付)
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2002年4月

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