「農民」記事データベース20020729-549-08

炭やき農民のすすめ(8)

杉浦銀治


炭焼きは地球を救う

 炭やきは、酸(木酢液)とアルカリ(炭)が同時に生産できる。こんな産業は他にはない。私は、炭、木・竹酢液、灰、焼土、余熱の五徳が、炭やきにはあると提唱している。

 いま地球は、人間の活動によって、温暖化、酸性雨、大気・水質汚染などの問題に直面している。対策が叫ばれて久しいが、なかなか解決策が見当たらないのが現状だ。私は六十年の炭やき研究で、国内外でいろいろな実験をしてきて、いま炭が持つすばらしい地球蘇生の可能性を考えている。

 炭の基本的な構造(物理的性質)は、植物組成そのままの多孔質だから、保水性、保肥性に優れている。私は、JICAの仕事でケニアで炭やきを指導しているが、炭を焼いた跡地だけ、落ちたユーカリの種が芽を伸ばしているのに感動したことがある。

 ケニア山の麓は、三割くらいが日本の農村のような本当に気候がいいところで、あとの七割は砂漠でひどい。ナイロビから百七十キロほど離れたキツイというところに先輩たちが作った試験地を手伝うことになった。見渡すかぎりのサバンナで、木もそんなに大きくならない。雨が四百ミリくらいだから、雨季を上手に活用することが必要だ。

 雨水をしみ込ませて、次の雨季まで保持する。それには炭がおもしろいということで、穴を掘り、炭を焼いて、木を植えた。六年後に行ってみると、それが結構生きていて、うれしくて、木を抱いて帰った。

 ケニアでは、いろいろな部族の人たちが、それぞれ自分たちの文化を守っている。槍を持ったマサイ族の集落に行くと、牛の糞は燃料として大事だから踏んではいけないという。炭やきをやっていると、その地の人が、どんな風に火を使い、生活しているのかを見てみたい。「燃焼器具を見せてくれ」と言って、真っ暗な家の中に入ると、おばあさんが、乾かした牛の糞をコンロで燃やしていたので、ご挨拶をした。

 日本人もかつては、薪を使って煮炊きをし、暖をとりながら、その煙で萱葺き屋根を保存し、防虫してきた。たった五十〜六十年前には、日本各地でこんな生活が営まれていたのである。

(新聞「農民」2002.7.29付)
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2002年7月

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