「農民」記事データベース20020812-551-02

「米政策の抜本見直し」

松岡利勝(自民党・農業基本政策小委員会委員長)に任せていいのか

鈴木宗男氏の“一の子分”


 「あんな奴が、米政策の改革だって?」。そんな怒りに満ちた声が、列島のあちこちから聞こえてきそうです。むりもありません。あの疑惑のデパート鈴木宗男氏の“一の子分”で、みずからも幾多の疑惑にまみれた御仁が陣頭に立って、これからの稲作りの基本をつくろうというのですから……。

 その人の名は、松岡利勝氏(57)。熊本三区選出の衆院議員で、自民党農業基本政策小委員会の委員長です。いま、食糧庁の生産調整研究会の中間とりまとめをうけて、米政策の抜本見直しで論議を進めています。

 「松岡氏の地元・阿蘇谷地域の稲作農家は、一戸当たり平均二町の田んぼをもっています。私たちは一町に満たないんですがね。だけどそこでは、農家が基盤整備した田んぼを、償還金が払えなくて売りに出しているという話を聞きます」

 こう話す梅木隆志さん(42)は、松岡氏の選挙区にある熊本県阿蘇郡小国町で、野菜や米をつくっています。

 「米政策の抜本改革というなら、価格問題こそやって欲しいですね。一俵一万三千円ではどうしようもない。その価格を押し下げているのが輸入米です。日本でいま必要なのは、米だけは絶対自給するんだという姿勢です。穀物の自給率で見ると、わずか二九%ですよ。なぜこれ以上輸入しなければならないのか。おかしいじゃないですか」

 “農林族のボス”といわれながら、こんな切実な農家の声には、とんと耳を貸そうとしない。松岡氏の行状や地元選挙区の農業の様子にも、それはよく現れています。

 農業対策費の行方

 ウルグアイ・ラウンドで日本は、再三の国会決議も反故にして、「米の輸入自由化」に道を開く合意を受け入れます。そのときに、宗男氏とともに松岡氏が汗を流したのは、その対策費として組まれた六兆百億円の予算の獲得と配分でした。

 「この掴み金の配分の際に、采配を思う存分ふるったのが、この最強のペアである」と「文芸春秋」(二〇〇二年五月号)は書いています。

 それによると松岡氏はその金で、生まれ故郷の阿蘇町に「はな阿蘇美」というテーマパークをはじめ、温泉ランドなどをつくったといいます。

 梅木さんがいいます。「ウルグアイ・ラウンドの農業対策費は、土木事業に回ってしまった。温泉施設のいくつかは、赤字で閉鎖しています。ほかの施設もほとんど採算が合わず、町の予算を食いつぶしている」

 「それに……」と、梅木さんは続けます。

 「地元の新聞で書かれていたことですが、松岡氏の選挙区にある一の宮町で、町の事業として農産物の直売所を作ろうとしたときのことです。町長があいさつにこないということで、松岡氏が県や農水省に圧力をかけて予算が宙に浮いてしまったことがあるんです」

 献金の疑惑次々に

 もちろん、地元の選挙区対策だけではありません。「頼まれて口を利き、見返りに政治献金という名の賄賂をもらう」。そんな実態も次々と明らかになっています。

 談合組織からの献金、がその一つ。林野庁所管の任意団体で、「国有林野測量事業協力会」というのがあります。不特定多数の利益実現を目的とする公益法人です。ところがこの会への入会は、林野庁OBの天下りが条件でした。そこが、国有林野の調査・測量業務などの入札で談合を重ねて不当な利益をあげ、公取委の排除勧告をうけます。松岡氏は、この「協力会」などから、九六年からの五年間で計九百四十二万円の献金を受けていました。この問題を国会でとりあげた日本共産党の緒方靖夫参院議員は、「公益法人が談合組織をつくって不当な利益をあげ、一部を林野行政に強い影響力のある松岡議員に“還流”させていたことは重大だ」と糾弾しています。

 もう一つが、九二年ごろから国有林の違法伐採を続けて、行政処分を受けた製材会社「やまりん」からの献金疑惑。松岡氏が二百万円の献金を受けたのが、九八年の八月四日。彼はその二日後に「林野庁長官を呼び、処分について善処を働きかけたが、拒否された」(日刊スポーツ)といいます。

 やまりんは氷山の一角

 献金疑惑はまだまだあります。

 国土交通省の川辺川ダム(熊本県相良村)関連工事を受注した業者四十二社からも、松岡氏は合計三千三百八十五万円(日本共産党・小沢和秋衆院議員調べ)の献金を受けています。

 BSEの発生で、大量の在庫を抱えた食肉業者のために、松岡氏は宗男氏とともに農水省に圧力をかけ、買い上げさせたといいます。「二人は、大阪のハンナン、名古屋のフジチクという日本を代表する食肉卸大手と親密なことでも知られる」(「選択」二〇〇二年五月号)といえば、疑惑の臭いもしてきます。

 また、「FLASH」二月五日号は「松岡利勝代議士に秘書の退職金&給与ピンはね疑惑」と報じています。

 法政大学の五十嵐仁教授(政治学)はいいます。「鈴木宗男氏とか、宮路和明厚生労働副大臣の入試口利きもそうですが、頼まれて口を利き、見返りに政治献金をもらう。本来、公正でなければならない政治が、公正さが損なわれてゆがめられる。それに口利きの結果の事業は、自治体や国の予算を使ってやるわけで、税金の無駄遣いにもなっているんです。こういう政治のスタイル、構造は古く、もう許されなくなってきている」。

 こんな古臭く、骨の髄までの利権政治家に米政策の抜本見直しなんか任せたんでは、稲作農家ばかりか米を主食とする日本民族の名折れです。

(新聞「農民」2002.8.12付)
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2002年8月

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