「農民」記事データベース20020916-554-03

農民連食品分析センター

重金属など新設備導入募金呼びかけ

関連/農民連食品分析センター二千万円カンパの送り先


 農民連食品分析センターが、農産物や食品に含まれる重金属汚染の分析に乗りだします。いまなぜ、それが必要なのか。同センターの石黒昌孝所長は、先に開いた農民連全国研究交流集会で解明しながら、新たな分析装置の導入などのための二千万円カンパを呼びかけました。

 「重金属汚染の分析は、どうしてもやらなければならない課題です」と石黒さん。そのわけは、新たな米のカドミウム含有基準が決められようとしており、国民の健康を守るためにも、自主的に検査する必要があるからです。

 カドミウムは、体内に蓄積されると骨をむしばみます。工場廃水が原因で富山県で起きたイタイイタイ病は、あまりにも有名です。

 米に含まれるカドミウムのいまの安全基準値は、一・〇ppm。これを強化して〇・二ppmにするといわれています。

 カドミウム汚染は、カドミウム電池が産業廃棄物として捨てられ、それが川に流れ出て起こります。また、燐酸肥料(海鳥の糞など)に含まれているともいわれています(*)

 「そうした原因物を明らかにし、分析をとおして取り除いていきたい。とくに輸入米のカドミウム汚染が心配なので、調べていきたい」と石黒さん。

 カドミウムばかりでなく、重金属汚染の危険は高まっています。鉛、砒素、水銀、錫(すず)、亜鉛…。「中国産のシイタケから砒素が出た」という報告や、中国産のウナギやエビなどの水産物からも、重金属が検出されたという報道もあります。重金属汚染ではこれまでも、イタイイタイ病のほか鉛中毒、森永砒素ミルク事件、水銀中毒の水俣病などいたましい事件が頻発しています。

 いま中国では、七〇年代の日本がそうであったように、工場廃水による河川の汚染が問題になっています。開発輸入が増えていく中で、農産物や食品がそんな重金属に汚染されていないかどうかの検査は、欠かせなくなっています。

 「それに…」と、石黒さんはいいます。「重金属の微量元素を解析すると、農産物の産地が分かるんです。育ったところによって微量元素の割合が違うからです。それが外国産か国内産かもわかります」。

 国民がスポンサーの分析機関

 農民連食品分析センターは、多くの人々のカンパでできた、文字どおり国民がスポンサーの機関です。国や大企業、それに外国にだって何も気づかうことはありません。公正な検査の結果を、会社名もきちんと出して公表する。そのために検査の実績保存、資料の保管も厳密にして、信頼性を高めています。そうした分析センターの六年間の地道な成果が、世論を喚起し、行政を動かしてきました。

 中国野菜の農薬汚染が心配されているのに、冷凍野菜は基準がないからといっさい検査してこなかった厚労省。そんな国を動かしたのは、食品分析センターの相次ぐ農薬分析結果の公表でした。

 厚労省も検査を余儀なくされ、違反が続発した中国産冷凍ホウレン草の輸入はゼロに。違反がひどい場合は輸入を禁止できるよう、食品衛生法も改正されました。

 その間、マスコミの取材攻勢も毎日のように続き、「分析技術を教えてほしい」と公共機関や経済連、民間会社の依頼も相次ぎました。それに加えて、商社や青果市場など、全国各地から検査依頼が殺到します。

 「七月ころからパンク状態です。無登録農薬が発覚してからは、出荷停止処分を受けたナシや、タケノコ、レンコンなど水煮の加工・販売業者からの依頼が多いですね」

 こう話すのは、分析センターの八田純人さん(28)。「仕事が片付くより、入ってくる仕事量のほうが多い」ため、ここ二カ月余は深夜業が続いているといいます。壁には、八月二十九日に受けた大手スーパーからの「十月初旬の予約申し込み」のファックスが張られていました。

 残留農薬だけでなく、食品分析センターでは米の品種、ブレンドの有無、新古米、外米の判定、遺伝子組み換えの有無などを手がけています。

 このため、重金属分析装置の新設だけでなく、検査範囲や精度の向上、必要な自動化など、現在の機器の性能を上げるための付属設備や、冷凍冷蔵庫、薬品庫の増設、それに人員の強化も待ったなしの状況です。

 所長の石黒さんは「食の安全は、国民的な要求になっています。いまこそ国民との共同を広げるために打って出るときです。その意味でも、分析センターの活動が決定的に重要になっています。広くカンパを寄せてもらって、すぐにでも新体制で臨めるようにしたい」と話しています。


重金属の分析設備の導入と、機能強化へ

農民連食品分析センター二千万円カンパの送り先

郵便振替口座 〇〇一六〇-六-七七三五四二
 農民運動全国連合会分析センター
問い合わせ 農民運動全国連合会
〒171-0022 東京都豊島区南池袋2-23-2
池袋パークサイドビル4階
電話〇三-三五九〇-六七五九 Fax-六九五三

(新聞「農民」2002.9.16付)
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2002年9月

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