「農民」記事データベース20020916-554-07

全国研究・交流集会への報告(1/3)

農民連事務局長 笹渡義夫

関連/佐々木健三会長あいさつ(要旨)
   全国研究・交流集会への報告(1/3)
   全国研究・交流集会への報告(2/3)
   全国研究・交流集会への報告(3/3)
   『闘いの中での民衆の知恵と力、そして協同』――南部三閉伊一揆に学ぶ―上―


〔1〕全国研究・交流集会の目的

〔2〕今日の情勢をどうみるか

 (1)ますます進む自民党政治の体制的危機

 昨年の研究交流集会からの情勢の大きな変化は七割、八割あった小泉内閣の支持率が半減し、破綻しつつあることです。

 小泉内閣が発足して一年あまり、この内閣がやってきたことは、「改革」の名による、不況やリストラで苦しむ国民に情け容赦なくムチを振るう弱者切り捨ての政治、アメリカに追随して憲法の理念を踏みにじって戦争国家に突き進む政治、公共事業を食い物にした利権政治など、まさに自民党政治そのものでした。農民に対しては、内閣が発足して最初にやったことは、セーフガードの本発動の妨害でした。

 こうした古い自民党政治の本質が国民の前に明らかになり、その矛盾の深まりが、内閣支持率低下の原因です。

 私たちは、小泉内閣が「自民党を変える」と言わざるをえなかったこと自体、自民党政治の後のない体制的危機ととらえ、BSEの損害補償やセーフガードの発動、食の安全問題など、当面する農民要求実現の運動と、政治を変えるたたかいを結びつけて全力をあげてきました。

 自民党が政権担当能力を失って久しいものがあり、その堕落ぶりはますます深化しているのが今日の情勢の特徴です。同時に、自民党政治を終焉させ、暮らし、経営を守る、新しい国民の政治が望まれているなかで、国民のたたかいをどう広げるか、なかでも、私たちが活動する農村や農民の中で、どう共同を広げ、たたかう力を強めるか、そのことが鋭く問われています。

 (2)悪政の犠牲は農民だけではない、悪政によってますます墓穴を掘る自民党政治

 小泉内閣の悪政は、ますます国民との矛盾を深め、彼らの支持基盤を掘り崩しています。

 先の国会では、中心的法案であった有事三法案が継続審議とはいえ阻止されました。陸・海・空の関連労組や日本弁護士会など、憲法の理念を擁護し、平和を願う国民のたたかいによって世論の逆転を勝ち取り、小泉内閣を包囲した結果です。戦後、国民のなかに営々と培われてきた民主主義の底力の勝利でもあります。

 医療制度改悪は強行されましたが、署名が二千七百万人集まり、自民党の強固な基盤で集票力を誇る「日本医師会」も正面から反対の声をあげ、今後、自民党支持を見直すことを表明しています。彼らが国民の反対が強い悪法を支持団体を敵に回してまでも強行したのは、これをやらなければ内閣がもたないからでした。失うものが大きくても悪政を進めざるをえない。まさに今の自民党政治が直面している危機を象徴しています。

 農産物価格の安さや、農業経営の困難、国民負担の強行などのもとで、一見、悪政を進める側が大きく見えるものの、大きな流れは、確実に国民のたたかいが彼らを追い詰めており、早晩、破綻は避けられません。その事態がますます顕著になっています。

 今、こうした情勢の大局的流れをよく見て、最も切実な要求を掲げて全農民を視野に入れた共同を広げること。そして、政治を変えてほしいと願う大きなうねりを地域からまきおこすことが求められています。

 (3)全国センターだからこそ前進できた――農民連の果たしている役割

 この間の農民連のたたかいは、行政や政治を動かし、小泉政治を追い詰めるうえで大きな役割を果たしました。

 数年来のセーフガードの発動を要求する運動の前進に加え、BSE問題で政府の失政の追及と、損害補償要求、畜産農民の要求を守るために全力をあげてきました。

 多くの農業団体が「嵐が通り過ぎるのを待つしかない」という対応をしたなかで、農民連のたたかいは、多くの畜産農民や国民の共感をよび、一定の救済措置を勝ち取るとともに「BSE緊急特別措置法」を制定させました。農民連が取り組まなければこうした成果は実現しえなかったでしょう。

 中国の冷凍ホウレン草の残留農薬問題を暴露した食品分析センターの奮闘は、国民の命や健康を守る責任を放棄してきた政府への怒りを広げ、政府を揺り動かし、「食品衛生法改正」に結びつきました。

 ひとつの国会で二本の法律を成立ないし改正させたことは快挙であり、私たちのたたかいは、多くの農民に共感を広げ、国民のなかに農民連の存在を広く知らしめました。マスコミの注目も空前のものがあります。

 重要なのは、こうした前進は「全国センター」だからこそ成しえたということです。BSE問題で、他の農業・農民団体がたたかわないのに、なぜ農民連がたたかえたのか。それは農民連が資本からも政党からも独立して、誰に対しても何の遠慮もなく、あくまで農民の要求を基礎にたたかう組織だからです。

 農産物の輸入とのたたかいでも、WTO協定の発足によって、「安さ」をセールスポイントにあらゆる農産物の輸入が激増して日本の農業を踏みつぶすことや、食の安全基準と監視体制の骨抜きが、安全な国内産の食べ物を求める国民との最大の矛盾となることを早くから見抜き、全国の力で食品分析センターを発足させました。こうした努力が、一歩一歩、農民や国民の共感を呼び、WTO協定の本質を広く国民が理解することに貢献し、農民連が社会的にも存在感を高めてきているのが今日の状況です。

 米をはじめとする流通業者との提携も、まだ緒についたばかりとはいえ、全国センターだからこそ成しえた成果です。七月二十一日に北海道・東北、関東、北陸の各ネットが東京で米屋さんとの大交流会を成功させ、「このままでは共倒れする」「両者の利益を守るために手を結ぼう」と誓いあいました。大企業の横暴極まりない買いたたきと流通支配、これに歩調をあわせた政府の規制緩和(米政策の改悪もそのひとつ)のもとで、大きな視点から国民の立場にたった流通の構築に接近できるのも、全国の知恵を結集して日本農業の自主的発展を探求するからこそです。

 こうした教訓は、全国でも、都道府県段階でも、そして地域でも農民連がさらに前進することなしに、日本農業も農民経営も守ることができないということを浮き彫りにしています。

 これらの点を確信に、運動と組織をさらに発展させましょう。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2002.9.16付)
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2002年9月

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