「農民」記事データベース20021007-557-06

登録失効農薬が波紋を広げるなか

食の信頼確保へ、群馬県が緊急事業

 全国で登録失効農薬が波紋を広げるなか、群馬県は全国に先駆けて、自主検査費用の半額を補助する「無登録農薬問題緊急安全確認事業」の実施を九月から始めました。


農家からは「助かった」の声

全国に先駆け九月から

自主検査用の半額補助

 補正予算で二千検体分確保

 同事業は、群馬県産のおもな果樹、野菜などで、JAや生産者団体が出荷前に行う自主検査の半額を、県が補助するというもの。上限額は、一つのサンプルで二万五千円。窓口は、各JAや生産組合、市町村で、登録失効農薬を使用または購入していない農家が対象です。検査分析は、県内四カ所の機関のほか、環境計量士のいる検査機関であれば全国どこの検査機関でも認める方針です。

 群馬県では今回の対策費を、知事の専決処分(知事の判断による支出)として九月の補正予算に計上。とりあえず二千件分、約二千七百万円の予算を確保しました。

 蚕糸園芸課の真下さんは、今回の県の対応について「産地の信頼を取り戻し、産地を守るために、県として何ができるか、緊急にとるべき対策を県で判断した」と、緊急性を強調します。

 打撃から立ち直る機会に

 群馬県では、JA新田郡が登録失効農薬を販売していたことが判明したほか、ヤマトイモの大産地尾島町では産地廃棄が決まるなど(のちに無登録農薬未使用のものは検査分析後、順次出荷が再開)、生産現場では多くの農家に深刻な影響が出ています。「一カ所でも使用した農家がいると、風評被害など産地全体が大きな打撃を受ける。市場には安全な物だけが流れる体制を作って、群馬県産農産物の安全・安心をPRし、県内農業が立ち直るきっかけにしたい」と真下さん。

 県には、近年の価格暴落のうえに分析費用の負担が重くのしかかっている多くの農家から「助かった」という率直な声が寄せられています。県では、この検査体制の整備を契機に、今後は生産者にも登録失効農薬の使用の重大性を理解してもらい、ルールある使用を呼びかける考えです。


キーワードは“安全の確保”と“県民への安心の提供”

四月には「安全会議」設置

店頭の野菜も分析し、チェック

 群馬県では、「食の緊急安全検査」の一環として、無登録農薬の出荷前分析と同時に、店頭に並んでいる野菜の安全検査にも取り組んでいます。県内のスーパーなどから野菜(生鮮も冷凍も、国産も輸入も)を購入し、残留農薬を分析するという取り組みで、予算は知事専決処分で一千万円が組まれています。

 この施策に取り組んでいるのが「群馬県食品安全会議」という知事直轄の部署です。同会議は、食品の生産から流通、消費にいたるまで、従来の縦割り行政を超えて、「食の安全」に取り組もうと、今年四月に設置されました。

 食品の生産から、流通、消費まで、すべてを見届ける

 普通、食品行政といっても、農業生産は農政部、食品衛生は保健福祉部、キノコ類は林政部……というように細分化されています。食品安全会議では、従来の部署の機能はそのままで、さらに食品に関する部署の調整・連携をとって、食品の生産から、流通、消費まで、すべてを見届け、同時に情報を発信していこうというわけです。

 設置のきっかけは、BSEや食品の偽装表示、輸入冷凍野菜の残留農薬問題など、近年、食の安全に関わる問題が相次いでいることでした。同会議事務局の斉藤さんは「キーワードは“安全の確保”と“県民への安心の提供”です。安全、安心をしっかり守ることが、群馬県の農業や産業の強みになる。県民の食の安全をどうやって守るか。安全を提供するのが行政の役割です」と言います。

 県民に安全なものを届けられるように…

 登録失効農薬問題でも同会議では、さっそく専門部会を設置して対応にあたり、生産地での出荷前分析と、店頭商品の残留農薬分析との二重三重のチェックで「群馬県産農産物はすべて安全と言えるように、また県民には安全な物しか届かないようにしたい」(斉藤さん)考えです。

 同会議チーフリーダーの酒匂(さこう)さんは「農民連の食品分析センターが輸入冷凍野菜の残留農薬を分析してから、群馬県でも何か対策をと考えていました。そこに今回の無登録農薬の問題がおこり、緊急検査では輸入・国産両方を検査することになりました。農民連の食品分析センターには注目しています」と話しています。

(新聞「農民」2002.10.7付)
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2002年10月

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