「農民」記事データベース20021007-557-11

殺すより、増やさない

害虫防除 (21)


土着性天敵の利用

 1 天敵利用上のポイント

 昨今、害虫防除に天敵を利用する試みが積極的に行われるようになりました。ここでは土着性天敵を生かすためのポイントをあげてみます。

 (1)バンカープランツ上での天敵の増殖

 バンカープランツを畑の周囲やうね間に植えて、天敵を増やします。バンカープランツとして効果が高いのがムギで、ナスやタバコの麦間栽培が良い例です。ソルゴー、クローバーなどもバンカープランツとして利用できます。

 (2)無農薬、減農薬栽培との組み合せ

 天敵昆虫類は害虫よりも農薬に弱いので、農薬との併用は困難です。しかし、天敵だけで主要な害虫を抑えることはできないので、捕殺にたよる部分がかなり多くならざるをえません。例えば、ナス栽培では、フキノメイガ、テントウムシダマシ、ナスノミハムシの天敵は見つかっていません。

 (3)天敵の効果の判定

 バンカープランツ上での天敵の増殖と栽培作物への移動を観察し、さらに害虫発生状況を観察する。

 より発展すれば、害虫を採集して飼育し、天敵の有無を確認後、畑に放すことも有意義です。

 2 主な天敵と見分けかた

 
主な天敵の見分けかた
天敵名
特徴
摂食方法と害虫の変容
テントウムシ 卵:黄色、細長く、長さ1.5ミリ、30個くらいがかたまっている。
蛹:橙色の地に黒色の斑紋があり、半球状、5ミリくらい。
 アブラムシに食いつき、体液を吸う。
 アブラムシは白色のぬけがらとなる。
ショクガアブ幼虫 幼虫:体長1.5センチ(図1〈図はありません〉)透明感のある緑〜黄色。
蛹:ナスをたてに半分に切った形で葉にはりついている。約1センチ。
アブラバチ(寄生蜂) 成虫:体長1ミリ(図2〈図はありません〉  アブラムシに寄生する。アブラムシは、体が膨張して球形になる。死後、体色が黒や白などに変化。
ヨトウタマゴバチ 成虫:体長1ミリ以下。ヨトウムシの卵塊はサトイモの葉裏でよく見かけるが、葉をひっくり返すと、ハチのはねがチカチカと微細な光を反射する。  寄生されたヨトウムシの卵を虫めがねで見ると、穴があいている。
 ヨトウムシの卵塊が汚れた感じになり、生臭い。
マイマイカブリ 成虫:体長5センチ前後、黒色で細長いヒョウタン型。夜行性。ワラマルチや土物の収穫中に土中で見つかる。
幼虫:体長4センチ、黒色で青色金属光沢あり(図3〈図はありません〉
 ガ、コガネムシの幼虫、蛹を食う。
(表中の図は次号掲載)

 このシリーズ六回目で紹介したほか、表を参考にして天敵の増加と効果 を判断して下さい。この表に載せた害虫のほか、例えば、アザミウマ、ハダニなどの被害が減ったならば、表以外の天敵が活動したと思ってよいでしょう。

桑山洋三(農の会会員)

(新聞「農民」2002.10.7付)
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2002年10月

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