「農民」記事データベース20021014-558-03

小泉内閣がねらう 庶民大増税 ■中■

立正大学法学部教授・税理士 浦野広明

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 定率税率の廃止〜所得税・住民税は一・五倍に

 九九年以後の所得税・住民税については、定率減税の制度が適用されています(表4)。

 
表4〔定率減税〕
所得税 所得税額の20%(最高25万円)
住民税 住民税額の15%(最高4万円)

 「方針」は、「所得税・個人住民税あわせて約四・一兆円の定率減税は、経済情勢を見極めつつ、廃止していく」としています。

 定率減税適用前の所得税・住民税額が十万円の人は、定率減税の適用で六万五千円になります。多くの人は、定率減税の廃止によって、所得税・住民税が一・五倍以上になります。

 公的資金等控除の廃止で年金生活者からも税金をむしり取る

 「方針」は、公的年金等控除(表5)について「本来不要とも考えられる」と言っています。これは、年金と直売などで細々と生計を立てているお年寄りの方々からも、情け容赦なく税金をむしり取るということです。

 
表5〔公的年金等控除額〕
受給者の年齢
年収(A)
公的年金等控除額
65歳以上 260万円未満
260万円以上 460万円未満
460万円以上 820万円未満
820万円以上
140万円
A×25%+75万円
A×15%+121万円
A×5%+203万円
65歳未満 130万円未満
130万円以上 410万円未満
410万円以上 770万円未満
770万円以上
70万円
A×25%+37.5万円
A×15%+78.5万円
A×5%+155.5万円

 さらに、年金控除額の縮小は、年金を受給しているお年寄りなどを扶養している大黒柱の方々にも大増税をもたらします。配偶者控除や扶養控除などの所得控除は、いま、控除対象配偶者や扶養親族の合計所得金額が三十八万円以下でなければ適用されません。しかし、年金控除額が縮減されれば、今まで扶養控除、配偶者控除、配偶者特別 控除などの対象になっていた年金者が、控除の対象から外されることになるからです。

 給与所得控除の引き下げで勤め人も大増税!

 日本の農家の九割以上を占める兼業農家にとって、給与所得控除の引き下げは大問題です。

 給与、事業、年金等から生ずる所得に対する所得税・住民税は(表6)の順序で求めます。給与所得は、年収から給与所得控除額(表7)を差し引いて求めます。つまり控除が引き下げられると、収入は変わらなくても給与所得額が増加し、税負担は重くなります。

 
表6〔主な収入と所得税・住民税〕

 

表7〔給与所得控除〕
年収
給与所得控除額
162.5万円以下
162.5万円超〜180万円以下
180万円超〜360万円以下
360万円超〜660万円以下
660万円超〜1000万円以下
1000万円超
65万円
年収×40%
年収×30%+18万円
年収×20%+54万円
年収×10%+120万円
年収×5%+170万円

 「答申」は、勤務費用を含む給与所得者の必要経費を「平均年収の一割弱」だと試算し、給与所得控除の大幅な縮減をねらっています。

(つづく)

(新聞「農民」2002.10.14付)
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2002年10月

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