「農民」記事データベース20021028-560-02

DECの犯罪

雪印食品一般労組 佐々木典昭委員長

関連/DEC


 BSE対策を悪用した牛肉偽装詐欺事件を起こして、今年四月に解散した雪印食品。犯罪をおかしたのは、「DEC(デック)」と呼ばれる、労働者を抑圧するための秘密組織のメンバーでした。

 働く場を突然失った、無実の労働者はいま、子会社を長年支配してきた雪印乳業への再雇用を求めてたたかっています。雪印食品一般労働組合の佐々木典昭委員長に話を聞きました。

 無実の労働者を守れ

 雪印食品は、事件発覚からわずか一カ月で解散を発表し、二千人を超える労働者が職を奪われました。

 私は、事件が明るみに出た一月二十三日の広瀬正夫元部長の会見をテレビで見て、「こいつはウソをついている」と直感しました。それは、彼こそがDECの中心メンバーだったからです。

 会社はそれから半月も経たずに、パート・アルバイトの首切りを発表しました。彼らは、不正のことなど露知らずに働いてきた人たちです。そこから私たちの「経営陣の堕落で、罪のない労働者が路頭に迷うのは許せない」というたたかいがスタートしました。

 工場の再生と雇用の確保を求めて、地域の人たちの支援も得ながら、工場内の組合事務所に九十日間泊り込みました。今は、北越谷にある元研修センターに事務所を移してたたかいを続けています。

 腐敗の源泉はDEC

 雪印食品に秘密組織「DEC」が作られたのは、七二年のことです。会社は当時、千人の合理化を計画していました。DECの目的は、ありとあらゆるイジメや嫌がらせで労働者に退職を強要し、労働組合を転覆させることでした。

 真っ先にねらわれたのは、私たちのような、会社にもの言う労働者です。私の婚約者にも、嫌がらせの手紙が送りつけられました。草むしりやペンキ塗りを毎日やらされた仲間もいます。

 まわりの労働者も、私たちと言葉を交わしただけでDECからにらまれ、職場は暗く沈み、会社をよくしようと仲間うちで話すこともなくなりました。仲間を蹴落として「成績」をあげたDECのメンバーは、転覆させた労働組合の役職につき、その役を終えると出世していきました。

 より良い食品を消費者に

 こうした会社の腐敗を是正しようと、九二年に結成されたのが、雪印食品一般労組です。私たちは労働者の権利と生活を守るとともに、よい製品作りを会社に提案してきました。それが実ったのが無添加ウインナー「職人気質」でした。会社は、これに社運をかけるといい、株主総会でも一般労組に感謝を述べました。

 こうした積極的な活動によって、「連合」労組を脱退して、私たちの組合に加入する労働者も出てきました。その一人が、後藤貢さんです。彼の父親は、黒澤酉蔵とともに雪印を創業した一人であり、彼自身も優秀な技術者で、社内の「ハム・ソーセージ学校」の講師を長年勤めてきました。ところが、労組を移ったことが気に入らない会社は、彼を突然講師から外しました。一般労組はこれに抗議し、彼は再び講師に就きました。

 日本のもの作りの存続を

 私の実家は今でも岩手で肉牛を飼っています。私は「金の卵」と言われ、十五歳で上京し、三十九年間、雪印食品に勤めてきました。会社解散で一番くやしいことは、私たちが積み上げてきた技術がここで途絶えてしまうことです。私たちのたたかいは、日本の「もの作り」を守るたたかいでもあります。みなさんのご支援をお願いします。


 DEC

 ディフェンス・オブ・エンタープライズ・フロム・コミュニストパーティ(共産党から会社を守る組織)の略。七〇年代に労働運動の右翼的再編をねらった財界が、全国の職場にこのような秘密組織を作った。日立では「消防隊」(赤い火を消す)、石播では「ヘチマの会」(アカを落とす)などと呼ばれた。

(新聞「農民」2002.10.28付)
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2002年10月

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