「農民」記事データベース20030602-588-01

リアルでユーモアいっぱいの人形たち

農村のお年寄りのゆかいでたくましくすてきな笑顔

見る人にあったかい気持ちを与える

 「忘れていた大切なもの、探しに行きませんか…」――農村の元気なお婆さん、お爺さんをモデルに、温かな人形を創作している人形作家、高橋まゆみさん。長野のアスパラ農家のお嫁さんでもある高橋さんの、たくましくて、愉快で、心優しい人形世界を紹介します。


 アスパラ農家のお嫁さん

 「農家のお年寄りの生き生きした姿が、私に人形を作らせてくれるんです。飯山では働くことを“かせぐ”って言うんですけど、農家のお年寄りって本当に“よくかせいでえらいなぁ”と。優しさとか、大切なものをお年寄りからたくさんもらっています」という高橋さん。長野市内の生家から、飯山市のアスパラと自家用米・野菜を作る農家に嫁いで二十年がたちました。「頭のなかにあるイメージが“形”になるのが楽しくて」、子育てしながら、ある時はパートもしながら、嫁いだころからずっと情熱を傾けてきた人形作り。最初はカッパや妖精のような架空の人形を作っていました。

 ところがあるとき、ふと、身の周りにいる農家の老人たちが、生き生きとたくましく働く姿にハッとしたと言います。

 「こんなに素敵な笑顔にどうして気づかなかったんだろう。この味わい深い表情を人形にして伝えたい」。以来、飯山の農村暮らしの中から、老人たちとのふれあいのなかから、リアルでユーモアいっぱいの人形が生み出されてきました。

 「食べ物を作る農家って、やっぱり一番強いと思うんです。近所の老人たちは“金が無くたって、戦争が起こったって、食ってく物さえあれば生きていけるよ”ってサラっと言うんですけど、この言葉の意味は深くて重いですね」と高橋さんは言います。

 心に焼きついた表情を…

 泣いてしがみつく子供をお爺さんが優しく抱きしめる『泣き虫』。手を合わせて何かを祈るお婆さんの『祈り』。数本しかないバスを待つ『冬のバス停』――たった三十?ほどの人形たちが、見る者を飯山の農村に連れていってくれます。「一番力が入るのは、やはり表情です。たいていは写真に撮ったりはせず、心に焼きついた老人たちの表情や風景を、人形に再現していくんです」。

 近所でも高橋さんの人形作りはよく知られていて、人形たちの着物になっている絣や藍染などの古切れ(こぎれ=古布)は、ほとんどが頂き物だそう。「実際に着てた野良着とか、布団側地とか、古い蔵を壊すので掃除してたら出てきたとか、お婆さんが農作業で首に巻いていた手拭いがいい味だったので、その場でもらって人形に着せたことも。作りきれないほど沢山の布をいただいて、本当にありがたいですね」と高橋さん。

 故郷の良さがずっと続いて

 「飯山は本当にいい所です。自然が豊かで、人は素朴で温かくて。このふるさとの良さがずっと続いてほしい。まだまだ作りたいものがたくさんあります。これからも見る人が優しい、あったかーい気持ちになれるような人形を作っていきたい」と、創作への情熱があふれています。

 写真についた短歌も高橋さんの作品です〈写真はありません〉

収穫 米の身が 実る青空 ゆうゆうと 豊作の年 笑みがはじける
いっしょに帰ろう迎え来る 我をみつけて 満面の 笑顔が歩く 夕暮れの径
帰り道 じいちゃんと ススキがゆ れる 草の道 唄って帰ろ 夕焼けこやけ
ひとやすみ おかえりと 声かけられ て 振り向けば 何とも 言えぬ 笑顔が二つ


人形作家高橋まゆみさん

 高橋まゆみ創作人形展「故郷からのおくりもの」 全国各地で開催予定

(新聞「農民」2003.6.2付)
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2003年6月

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