「農民」記事データベース20030602-588-06

農薬制度の不備是正を

農薬取締法実施で 農民連・産直協が農水省に要求


 農薬取締法が三月十日から実施されました。違反した生産者には、懲役三年以下・罰金百万円以下という罰則強化が先行する一方、登録農薬の不備や矛盾は十分に改善されていないため、生産現場では混乱が激化しています。

 農民連・産直協は五月二十一日、事態の改善を求めて、農水省交渉を行いました。交渉には宮城、千葉、埼玉、東京、神奈川、京都、大阪の代表二十人が参加。農民連の笹渡義夫事務局長、産直協の椎名二郎事務局長代行が出席しました。農水省から生産局生産資材課の角田幸司課長補佐ら六人が対応しました。

 全国的に生産量が少量の「マイナー作物」は使用できる登録農薬の種類が依然、少ないままです。現在は三年間の経過措置を取っていますが、本格的な栽培の時期に入り、生産現場は窮地に陥っています。

 埼玉から参加した山口一郎さんは、ミニトマトの最盛期を目前に控え、産地の窮状を訴えました。「地元では環境に優しい農業を目指して、ミニトマトの受粉にマルハナバチの利用を広めてきた。薬品使用を減らすための努力だ。しかし法改定後、ミニトマトの登録農薬はごく限られたまま。認められている農薬は残効期間が長すぎるなど、マルハナバチと併用できるものがない。このままでは受粉期間が終わってしまう。早急に改善して欲しい」

 経過措置として未登録の農薬を使用するには、県に使用申請を出して承認を受ける必要があります。承認には、申請する農薬の残留検査を条件としていますが、その検査費用を一方的に農家に負担させる事例が全国的に発生しています。

 検査費用は、千葉のある産地では農薬一種類につき六十〜百二十万円、京都のある産地では九十万円という高額。参加者は「こんな検査費用を、どうやって払えというのか」「生産をあきらめろというのか」と訴えました。しかも申請が認められたとしても、申請者しか利用が許されないため、同じ県でも他の人は使うことができません。

 これに対して農水省は、この経過措置の運用は県の責任で行うとし、費用の捻出も県の裁量だとして、自治体への予算の増額は行わないと回答しました。

 これでは国民の食の安全を守る責任を、国が放棄し、都道府県に負わせるものです。農民連は、検査は国が責任を持って行い、費用を生産者に押しつけないようにと強く要請しました。また、経過措置についての農作物のグループ化の品目を増やすなどマイナー作物にも早急に打開策をとることを要請しました。

 農薬を添付するなどして防除効果を持たせた資材については、農薬名と使用割合を公表することを要請しました。これに対して農水省は、資材メーカーに対して登録農薬以外の農薬使用を禁止し、使用薬品については問い合わせれば、公表するように指導していると回答しました。

 農薬のヘリコプター散布では他の農耕地に飛散しないように厳重な規制を取ることを要請。農水省側は「もし飛散した場合は、散布者が罰せられる」「空散を行う場合、他の畑から百メートル以上の間隔を置くことなど、使用の際のガイドラインを五月一日に発表した」と回答しました。

 交渉の中で農水省の担当者は農家に責任を押しつける発言を連発、参加者から厳しい批判が相つぐ一幕も。今後も農水省に対して、責任ある措置を早急に取ることを求めていくことが重要です。同時に各県に対しても、生産現場での実状を伝え、国への要望も含めて県の責任を果たすように求めていくことが重要です。

(産直協 笠原 尚)

(新聞「農民」2003.6.2付)
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2003年6月

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