「農民」記事データベース20030609-589-13

集落のみんなの合意で水田転作

千葉・横芝町 北清水営農組合

 話し合いを大切にして集落の合意で水田転作に取り組む千葉県横芝町の北清水営農組合。ブロックローテーションで転作作物として小麦と大豆を栽培し、味噌や豆腐などの加工と販売に取り組み、女性や高齢者の働く場をつくり、より豊かな生活の実現をめざしています。その取り組みを発表した千葉県農業コンクールで最優秀賞を受賞した営農組合のある横芝町を訪ねました。
(西村正昭)


小麦・大豆作り、みそ・豆腐に

加工・販売に取り組む

営農意欲を失わせる「米政策」に不安も…

 「取材されるほどのことはしていないのですが」と、出迎えてくれた北清水営農組合の浅野卓さん(54)。浅野さんは農業コンクールで発表した人。

 生き生き働くお母さんたち

 浅野さんがまず案内してくれたのは、営農組合下部組織の加工部。加工部の女性たちが味噌まんじゅうを作っていました。「出来立てよ。食べて」と言われ、熱々のまんじゅうを試食しました。みそと小麦の香が食欲をそそります。「一日八十個ほど作ります。イベントがあるときには、多数の注文があります」という秋葉正子さん(加工部副部長)。

 転作大豆や小麦に付加価値を付けようと、最初に取り組まれたのがみそ加工。山武農業改良普及センターの指導員から教わりました。原料の大豆と米麹は地元産で、味の良さと安全性で好評を博しています。

 加工所では、味噌まんじゅう、豆腐、きなこなどの加工品とともに、大根など新鮮な野菜の直売もしています。販売は、水曜日と土曜日の午前十時から午後一時まで。

 怒賀あい子さんは「加工部ができて、みなさんと親しくなりました。農作業だけでなく、自分たちの加工したものが売れるので楽しい」と生き生きとしています。

 浅野さんは「大豆やみそ、小麦粉、乾麺などの転作作物の加工品は一年中、販売できます。露地の野菜生産も盛んであり、高齢者の経験と知恵を生かした多品目の野菜、豆腐、きなこ、手打ちうどん、そばなどの加工品をそろえた直売所を開く構想を持っている」と抱負を語ります。

 補助金頼らず収量増に努力

 横芝町北清水地区は、農家戸数九十一戸(専業農家十七戸)で三十〜四十歳代の農業後継者が八人います。

 大半の農地は平坦地にあり、雨が降ると湿田になるため、農家は水田の土地改良を望んでいました。一九九七年、「県営担い手育成基盤整備事業」で地区内の百五ヘクタールの水田のうち八十九ヘクタールが、暗渠排水もできるようになりました。この事業を実施するために、ほとんどの農家の参加で営農組合が組織されました。

 基盤整備事業の後、国の補助を受けてライスセンターを建設するためには、水田転作の地区目標を達成しなければなりません。

 九八年、九九年の転作は、ヒマワリやコスモス、菜の花などの景観作物を作りました。二〇〇一年からは、八十ヘクタールの水田を三つのブロックに分け、三年四作(水稲―小麦―大豆―水稲)のブロックローテーションを実施。転作による助成金や補助金だけに頼らず、売り上げを伸ばすために小麦と大豆の収量を上げる努力をしてきました。

 小麦は、初年度が暗渠排水工事のために播種の適期を逃してしまい、十アール当たりの収量は二百四十三キロでしたが、二年目の昨年は四百三十八キロでした。収量は全国平均を六十キロ以上も上回り、労働時間でも十アール当たり五・四時間と、全国平均の半分に省力化。営農組合が当初目標とした「小麦と大豆を合わせて、十アール当たり売り上げ十万円以上」を実現できる見通しができました。

 営農組合には、転作作物の栽培と水稲作業の請け負いを担当する「オペレーター部会」(北清水麦大豆生産組合、十五人)と先の「加工部会」(十五人)が組織されています。

 農政激変して見直したたず

 オペレーター部会には、地区の中心になっている担い手が入っています。オペレーターの平山衛さん(48)は「養豚を二十年ほどやった後、ネギを専業に作っている。小麦や大豆は作ったことなく、心配したが、普及員の指導を得ながらやっている。大規模な圃場なので効率よく農作業ができる。しかし、国の農政がくるくる変わるので、先の見通しが立たず、不安もある」と話します。

 浅野さんは、「やっと軌道にのり、歩み始めたばかりです。大豆と小麦の売り上げとプラス補助金でやっています。しかし、国は転作の補助金を総体的に減らそうとしています。補助金がもし半分になったら、厳しい事態になってしまいます」と、米つぶし政策に不安をいだいています。

 せっかく軌道に乗った転作までつぶしかねない「米改革」は許せないという思いを深くしました。

(新聞「農民」2003.6.9付)
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2003年6月

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