「農民」記事データベース20030623-591-02

食糧法改悪案審議の参院農水委

米改革で米価下落は明らか

白石淳一農民連副会長が意見陳述


成立すれば担い手いなくなる

 参議院の農水委員会で六月十二日、参考人質疑が行われ、食糧法改悪案の破綻ぶりがいっそう鮮明になりました。

 東京大学教授の生源寺眞一氏、那須野農業協同組合理事の高根沢市夫氏、東京農工大学助教授の矢口芳生氏に加え、農民連副会長の白石淳一氏の四人が参考人として意見陳述を行いました。

 負債の重圧に

 白石氏は、離農や自殺が相次ぐ北海道の農村の大変厳しい実態を紹介しながら、「高校以来の友人でもあった十ヘクタールの稲作農家が、負債の重圧に耐え切れず命を絶った。離農や自殺が多発する原因は、稲作農家の大部分の収入を占める米価の下落にある」と指摘。自らの稲作の収量と販売額などの一覧を示しながら、米価の下落が農家の経営を直撃している実態を、国会の場でまざまざと明らかにしました。

 さらに、農業経営の中で稲作収入をあてにできないほど米価が下落していると指摘。米価のさらなる下落につながる食糧法改悪案の問題点を具体的にあげ、米改革が「今より米価が保障されるだろう」「転作条件の整備も進むのでは」と期待していた多くの稲作農民の思いを裏切るだけでなく、こうした稲作農民を生産から締め出すものであると批判しました。

 また、消費者だけでなく業者からも敬遠され、九十五万トンもの在庫を抱えるミニマム・アクセス米を放置すれば、「輸入が増えれば生産調整が増える」という悪循環に拍車をかけると指摘しました。

 白石氏は、こうした立場から食糧法改悪に反対するとともに、(1)米の需給と価格安定に国が責任を持ち、ミニマム・アクセス米を削減・廃止して生産調整面積を大幅に減らすこと、(2)転作奨励金の大幅カットを中止し、稲作経営安定対策の抜本的な改善で、生産費を償う米価を実現すること、(3)備蓄を棚上げ方式に切り替えること、(4)計画流通制度の廃止をやめて大企業の流通支配をおさえ、農協や中小米卸・小売店の役割を尊重したシステムに改善することなどを強く求めました。

 破綻が鮮明に

 質疑では、「米改革の内容を農家は納得していますか」という日本共産党の紙智子議員の質問に、高根沢氏が「納得しない」と答え、白石氏も「周知されていないし、納得もしていない」と発言。それを受けた紙議員が生源寺氏に「このような生産現場の意見をどう受け止めているのか」と質問すると、「不信が渦巻いていることは十分承知している」と苦しい言い訳を余儀なくする場面も。また、高根沢氏、矢口氏、白石氏の三人が「この法律が成立すれば担い手がいなくなる」と述べ、改悪案が破綻必至であることがいっそう鮮明になりました。

 こうしたやりとりは、生産調整研究会報告を作った張本人である生源寺氏にとって堪え難いもの。質疑後、生源寺氏は白石氏に「不満が渦巻いていることは十分承知している。不信感は根深く、そう簡単に払拭できない」と深刻な口調で語りかけてきました。

 これは、政府による米改革の強行が、大多数の農民から支持されず重大な障害にぶつかっていることを物語っており、今、全国の農民とともにたたかえば、ストップをかける条件が広がっていることを示しています。

(新聞「農民」2003.6.23付)
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2003年6月

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