「農民」記事データベース20030707-593-01

本物でおいしいのを作りたかった

国産大豆のお豆腐食べた〜い

大評判に“ウチの近くでも”と取り組みが広がる
材料不足にうれしい悲鳴他県からかき集め

関連/誇りをもって作っています

「おいしくて、安心できる農民連大豆の豆腐が食べたい」――愛知県ではいま、新婦人とお豆腐屋さんと農民連が共同する「豆腐産直」の取り組みが、波のように広がっています。たった一年ほどの間に、愛知県下の新婦人十一支部、お豆腐屋さん九軒、総計二千七百丁(一カ月)にまで広がりました。消費者の「安心・安全なものを食べたい」という素朴な願いが、大きな大きな追い風となって農民連のもの作りを応援しています。


新婦人 豆腐屋 農民連 共同で「豆腐産直」

愛 知

 「最近のスーパーの豆腐はどうもおいしくない。おいしくて、本物の、国産大豆の豆腐が近くで買えないかしらって、皆でよく話し合ってたの。そんな時に新婦人新宿支部の“豆腐の日”の話を聞いて、私の知ってるお豆腐屋さんにも農民連大豆のお豆腐を頼んでみようってことになって」。こう切り出したのは、愛知の新婦人で初めて豆腐産直に取り組んだ名古屋市緑支部の兼松友子さん。

 「私たち、野菜、豚肉、味噌とずっと愛知農民連と産直や交流をしてきて、安全なものといえば農民連の農産物しか思い浮かばなかったの」。

 ドラマここから

 ドラマはここから始まりました。

 「いいですよ。やりましょう」。スーパーに押されて廃業が相次ぐなか、緑区でたった一軒残っていたお豆腐屋さん、美濃食品の野々村博司さんは、兼松さんたちの願いを即座に快諾してくれました。「国産大豆は天然ニガリとの相性もよく、味もいい。日本は食料自給率が四〇%を切るような状態ですが、こういう取り組みでなんとかして自給率を上げたいですね。デフレと言われていますが、経済効率だけでいいのでしょうか」と思いを語る野々村さん。

 そのできあがった農民連豆腐のおいしかったこと! 「豆の香りがする」との大評判を聞きつけ、「うちも農民連大豆の豆腐がほしい」と乗り出す支部が続々と出てきました。それも美濃食品のものではなく、自分の町の豆腐屋さんに作ってもらおうというのです。「昔、豆腐は鍋で買いに行ったものでしょ。産直ポストに届けるには、近場の豆腐屋さんじゃなくちゃ」(同市千種支部の青木敦代さん)と、さっそくそれぞれの町の豆腐屋さんに「飛び込み」で豆腐産直のお願いに行きました。すると…。

 「相手にしてくれないのでは…」と思っていた町一番の老舗が快諾してくれたり(千種支部)、昔九軒あった豆腐屋が一軒もなくなり、四苦八苦して高齢の昔ながらの豆腐屋さんを捜し当て、頼むことができたり(同市熱田支部)と、この十年で半分に減ってしまった「わが町の豆腐屋事情」が次々と明らかになっていきました。

 ほんのわずかな加工料にもかかわらず、多くの豆腐屋さんが快諾してくれたのは、豆腐屋さんにも「本物の、おいしい豆腐を作りたい」という願いがある――。これも訪ねて初めてわかったことでした。

 こうして現在、名古屋市と豊田市の十一支部で、二週に一回(支部によっては毎週)、豆腐産直が始まっています。農民連の大豆で町のお豆腐屋さんに豆腐を作ってもらい、新婦人の野菜ボックスのポストまで届けてもらう、というやり方で、豆腐は一丁二百円。オカラのおまけが付くほか、豆乳を産直している支部もあります。

 小さな大豆作り

 こうなってくると、とたんに嬉しい悲鳴を上げたのが愛知農民連でした。「大豆が足りない!」。とりあえず「あるだけやるわい!」ということになり、半年分は愛知農民連から、もう半年分は茨城県西産直センターの大豆が豆腐屋さんに届けられています。

 愛知農民連が大豆作りに取り組み始めたのは、大豆畑トラストの呼びかけがあった五年ほど前から。豆腐産直には農民連組合員がほそぼそと作っている大豆が、愛知県じゅうからかき集められています。

 県連事務局長の土屋元義さんは「オペレーター集団のような大規模生産者に加盟をよびかけるのももちろんだが、交付金の対象にもならないような“小さな大豆作り”も応援していきたい」と言います。

 野菜の大産地、豊橋農民組合でも五年前から、共同の大豆作りに取り組んでいます。税金や政治課題だけでなく「作る話をしようよ」と、誰もが初体験というなかで始まった大豆作り。二十アールの小さな畑ですが「とにかく年に何回か皆でワイワイ集まって、一緒に汗して働いて、その後一杯やるのが楽しい」と、同組合の伊藤政志さんと本多操さんは声を揃えます。

 もっとも、共同畑の収穫では豆腐産直の必要量にはほど遠く、「転作大豆を大量に抱えてる所に農民連に売り先あるぞ、団体加盟しないかって懇談に行ってみるか」「豆腐屋さんや新婦人の農民連への信頼を裏切れないね。農民連の会議でも大豆のこと、もっと話し合わなきゃ」……と、二人の抱負は尽きません。


誇りをもって作っています

福盛屋の水谷公行さん

 僕と両親、弟の家族四人で誇りをもって豆腐作りをしています。

 農民連の大豆で豆腐を作り始めて、同じ品種でも豆によってこんなにも性格が違うのかと、あらためて思いました。作るたびに豆乳の濃度が違ったり、微調整はとてもたいへんです。出来具合も毎回違います。新婦人の豆腐をどこまで愛してもらえるか、作り手の責任を感じています。

 ここ瑞穂区でも豆腐屋は三十年で半減してしまい、残っている店も高齢化して豆腐組合の団結力にまで影響が出ています。スーパーには一丁三十円で納めることも。僕ら豆腐屋もこの町に暮らして、将来に不安なく豆腐作りをしたい。“安ければ何でもいい”では必ずひずみが出ます。本当のものの流れについて考えてほしいと思います。

 今まで農家と話す機会はほとんどありませんでしたが、豆は農家が働いて作ってくれたもの。お百姓さんをバカにしちゃいけない、と強く思います。

 豆腐は生き物。豆腐には心が入っています。腹立てて作れば荒れ、穏やかな気持ちで作ればやんわりとニガリが寄ってくれます。国産大豆は甘くておいしい。これからもずっと作り続けたいと思います。

(新聞「農民」2003.7.7付)
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2003年7月

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