「農民」記事データベース20030714-594-05

第23回全国農協大会

協議案の問題点(2)

JAグループ米改革戦略


減反の“執行人”と米集荷業者のはざまで

 全国農協大会の第一議案は「JAグループ米改革戦略」です。実績わずか二百三十一トンにすぎない「日本米の輸出」を九本柱の一つにすえるなど、目先を変える「苦労」が目につきます。

 しかし率直に言って、戦後最大規模の悪政である「米改革」に対して、組合員(農民)の利益を守る協同組合として正面から立ち向かうのではなく、膝まずき、攻撃の正体をぼかしながら、組合員に「米改革」を受け入れさせる役割を果たす――ここに議案の第一の問題点があります。

 たとえば、議案の冒頭には「(米改革が)われわれにとってたいへん厳しく受けとめざるをえない方向も打ち出されている」と、危機感をチラリとにじませながら、「国・地方公共団体の果たすべき役割はこれまで以上に幅広くかつ重要になる」とのべています。

 しかし「米改革」が明記しているのは、七年後の二〇一〇(平成二十二)年には、転作助成や米価下落対策を廃止し、転作目標配分もやめるということです。もっといえば、この時までに米不足状態を作り出し、「転作」が不必要な状態(「米づくりのあるべき姿」)にして、国民の主食・米から国が完全に手を引くということです。「国の役割が重要になる」どころか、その逆です。

 減反は「協同」、販売は「競争」?

 第二は、従来、行政が権力的に転作を押しつけてきたのに代わって、遅くとも〇八年から農民の協同組合である農協系統が転作配分の「主役」にさせられることに関連した問題です。

 権力を持たない農協系統がどうやって転作配分を行い、目標達成を確保するのか?議案は「水田営農実践組合」を作り、農民を「担い手」と「非担い手」に分けたうえで、「協同」して減反に取り組み、販売は「競争」にまかせるとしています。また「生産したものを集荷・販売する取り組み」から、「需要に基づき売れるもの」だけを生産させ、販売する仕組みに変えるとしています。

 しかし、農民の協同組合である農協系統が、農民がいやがる減反の“執行人”になることと、米を集荷し共同販売することとの間には、大きな矛盾があります。

 悪政に歯止めをかけ、いくらかでも改善を実現させること、あるいは大資本の買いたたきに抗して生産コストに見合う価格で販売すること――これこそが「協同」の意義のはず。しかし、農民の利益に反する政策の下請を「協同」で行い、「販売は競争で」「売れるものしか売らない」というのでは、「協同」組合の存立意義そのものを否定するにひとしいといわなければなりません。

 米の需給調整のジャマになっているミニマム・アクセス米には手をつけず、減反を強化して政府が手を引き、しかも農家と農協を反目させる――こんなことが実現したら農家も農協も不幸です。「農家の農協離れ」「農協の農家離れ」のスキを突いて、漁夫の利を占めるのは、農協の事業を虎視眈々とねらう大企業です。

 悪政を進めているのは政府であって、農協系統ではありません。残念ながら、政府のお先棒をかつぐ一部の人々によって農協系統を悪政の「下請」団体にする動きが執拗です。それだけに、いま大切なのは「米改革」の中身を集落や地域、単位農協レベルでよく吟味し、地域から農業たてなおしのビジョンを作ること、農家と農協の深い絆を再興することではないでしょうか。

(つづく)
(農民連副会長 真嶋良孝)

(新聞「農民」2003.7.14付)
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2003年7月

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