「農民」記事データベース20040105-617-01

元気はつらつ

んダ、一家の“主人”はお母ちゃん

安房農漁民組合〈千葉県白浜町〉

 「みんなで集まればおしゃべりもできるし、楽しいよォ」「ンダンダ」――青い海と温暖な気候、冬でも花が咲き乱れる房総半島の南端、千葉県白浜町は、観光と沿岸漁業のさかんな小さな農漁村です。この町の安房農漁民組合のお母ちゃんたちの元気なこと。農作業を切り回すのも女房なら、財布のヒモを握っているのも女房、という白浜のお母ちゃんたち。菜花の出荷が始まり、ひとあしもふたあしも早い南房総の春を訪ねました。


農作業切り回し、財布のヒモ握る

お父ちゃんは、つき従って野良仕事

 遠洋漁業の男長く留守がち

 「朝起きたら“今日の作業はこれとこれと…”って、母ちゃんにすでに決められていて、父ちゃんは“ハイ、これはどうやるんですか”ってつき従がって農作業すんだヨ」というのは、お父ちゃんの一人、由木尾晋さん。白浜町は海女さんで知られ、漁業がさかん。戦後、お父ちゃんたちは皆、マグロ船など遠洋漁業の乗組員になって一年から長いときは三年くらい、家を留守にしました。

 その間、家庭を守って子どもを育て、農業を支えてきたのが、お母ちゃんたちの細腕でした。高木由美子さんは胸を張って言います。「このあたりはどの家も女房が主人なの。“結い”の作業や寄り合いに出るのも女。もちろん作付計画を立てるのも、お金の計算も女房がやらないといけなかったの」。お父ちゃんたちは定年で“陸に上がって”からも「浦島太郎みたいなもんで、母ちゃんのデッカイ尻を追っかけながら、農作業を教わるしかない」と口を揃えます。

 切り花中心の小さな農業…

 面積あたりの生産額が日本一になったこともある白浜の農業は、小泉内閣の「農業改革」のもとでは跳ね飛ばされてしまいそうな、小さな小さな農業です。作っているのは、キンセンカやキンギョソウ、ポピーなど露地の切り花を中心に、菜花などの野菜と米。

 立派な“担い手”となっているお母ちゃんたちとおしゃべりしながら、キンセンカやストックの咲く小さな畑を訪ねると、周囲の畑から「いいねぇ、あんたたち楽しそうで」と声がかかります。「ああ、楽しいねぇ」と満面の笑顔で答える農漁民組合のお母ちゃんたち。その結束の強さが伝わってきます。


働くのが趣味みたいなもんな

楽しいよ菜花産直出荷

 税金勉強会から組合が生まれた

 この白浜に、安房農漁民組合が誕生したのは、十年前のこと。農家にいっせいに税務調査が入るという噂がたち、税金申告の勉強会をしたのが始まりで、以来毎年、税金申告中心に活動してきました。

 さらにここ数年の間に高木さんや平野三津子さんといった若い仲間が加わわったことで、雰囲気もググッと変化。千葉県農民連の小倉毅さんのすすめもあって、「稼げることを何かやってみんべ」と、房総食料センターをみんなで視察し、去年から菜花の産直出荷が始まりました。出荷先は、千葉県内の産直センターの野菜ボックス。

 平野さんは「うちらの畑の単位は“反”なんて大きい方で“畝”なんです。一畝、一株から収入があがって、しかも南房総らしい作物となると、菜花がぴったり」と言います。「手入れや後片付けがたいへんな切り花作りに比べて、菜花は価格は安くても作業がラク。高齢化しても、皆が作れる」(高木さん)というのも大きな魅力でした。

 出荷量の調整、集荷などは、高木さんと平野さんが担当。昨年は一人あたり約九万円の売り上げになり、みんな大喜び。「産直なんて初めは億劫だったけど、やってみると楽しいなァ」「ンダ。一人や、年寄りだけじゃできねえなァ」「待ってる人がいるとなると、鼻すすってでも働く気になるねェ」「ンダンダ。オレらは働くのが趣味みたいなもんだからなァ」と話がつきません。

 「これからもっともっと菜花作りの仲間を増やしていきたい」と高木さんは力強く話してくれました。

 価格暴落、1本5円のなかで…

 ちなみに、今年の秋は雨が多く、切り花の出来は思わしくありません。しかも価格が暴落。キンセンカが一本五円、キンギョソウなどは市場から「よこさねえでくれ」と言われ、次の花芽を伸ばすためにわざわざ収穫してから捨てるのだといいます。これを読んで「もったいない! 捨てるなら欲しい、買いたい!」という人も多いはず。これからは食べられる菜花だけでなく、心を豊かにする切り花の産直も、少しずつ始まります。

(新聞「農民」2004.1.5付)
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2004年1月

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