「農民」記事データベース20040112-618-01

アメリカでBSE感染牛

外圧に屈せず食の安全守れ

極めて甘いアメリカの監視体制 ノーチェックで輸入の日本政府

関連/外圧に屈せず食の安全守れ
  /『BSEはアメリカでも起こりうるか』
  /輸入依存が元凶、安易に解禁するな

 「やっぱり出たか」――。昨年十二月、アメリカ・ワシントン州でBSEに感染した乳牛が見つかりました。日本が輸入する牛肉の約五割、国内流通量の三割を占めるアメリカ産。同国はこれまで「アメリカ産は安全」と、日本に牛肉を売り込んできましたが、その欺まん性が明白になりました。


 「レベル2」と高い危険度

 「アメリカにBSEが潜在している」という指摘はかねてからありました。その理由は、(1)BSEの感染源となる肉骨粉を、一九九七年以前は広く使用していたこと、(2)昨年五月にBSEが発生したカナダから一昨年だけで百七十万頭も生きた牛を輸入していること、(3)アメリカでBSE検査が実施された牛は、出荷頭数のわずか〇・〇六%にも満たないことなど。

 だからこそ、EUは「BSE発生危険性リスト」でアメリカを「レベル2」の「BSE発生の可能性はないとはいえない」に評価。〇一年八月の「ウォールストリートジャーナル」の社説は「(アメリカ)政府と産業界は、いつかはきっと国内でBSEが発生することを確信しながら、この十年発見されないことを祈り続けてきた」と酷評していました。

 表示義務の法案に横ヤリ

 ところが自らの甘い監視体制には目をつむり、日本に売り込みをはかってきたアメリカ政府と食肉業界。「全米食肉輸出連合会」は、日本がBSEパニックに陥っていた〇一年、「米国では狂牛病は発生していないので安心してお召し上がりください」という全面広告を全国紙に掲載。国産牛肉の風評被害を広げ、日本の畜産業界に大打撃を与えました。

 さらに昨年五月、輸入牛肉にトレーサビリティを義務づける法案が国会にかけられようとしているときに、アメリカ大使館が農水省に圧力をかけ、法案を葬り去った経過もあります。今回のBSE発生は、食の安全を経済の犠牲にしてきたアメリカの横暴を白日のもとにさらしました。
こんなに差がある! 日本とアメリカのBSE対策
 
日  本
アメリカ
BSEの検査 食肉に処理される牛は全頭、と畜場でBSEの感染の有無を検査。検査実績は、01年10月以降で270万頭。農場などで死亡した牛についても、来年4月以降、全都道府県で検査を実施 検査実績:90年〜5万頭、昨年2万頭
検査率:出荷頭数の0.06%、飼養頭数の0.02% BSEの兆候のあるものだけ検査
トレーサビリティ 乳牛、肉牛を問わず国内使用牛すべてに耳標を装着。1頭ごとに出生からと畜までの飼養地などをデータベースに記録
不可能
肉骨粉の給与 牛由来の肉骨粉は全面禁止。脳、目、せき髄など特定部位はと畜場で除去焼却 牛の特定部位も含めて肉骨粉に処理。牛以外の家畜への給与は認められている。混入の可能性も指摘されている

 「特別扱い」に鋭い批判の声

 同時に、アメリカ産牛肉を事実上ノーチェックで輸入し続けてきた日本政府の責任も重大です。厚生労働省の輸入時検疫は、アメリカでの「衛生証明書」があればフリーパス。「輸入のさい、BSE検査を受けたかどうかはわからない」といいます。

 さらに政府は、今回のBSE発生でアメリカ産牛肉の輸入を停止する一方、すでに輸入されている牛肉はそのまま流通させる方針です。日本でBSEが発生した際には、流通していた牛肉を全量買い上げて処分したのですから、その違いは歴然。「アメリカ産は買わないし、食べたくない」という国民の不安を無視した措置に、「なぜ特別扱いするのか」という声があがって当然で、ただちに回収するべきです。

 また、アメリカ産牛肉を使う大手の外食チェーンなどが政府に、輸入の早期解禁を求めて圧力をかけているのも許せません。BSE問題は、国民の命と健康にかかわる問題。アメリカや外食産業の圧力で対応がゆがめられれば、食の安全に対する国民の信頼が総崩れしかねません。政府の対応を厳しく監視していく必要があります。


『BSEはアメリカでも起こりうるか』

著者・シェルドン・ランプトン氏

(EMagazineへの寄稿から)

 アメリカの規制措置は抜け穴だらけである。アメリカ政府は感染の疑いのある輸入食品の禁止ばかりをBSE対策の盾にしている。

 牛の肉骨粉を豚に与えることはアメリカでは合法で、その肉骨粉を食べた豚が牛のエサになっている。

 牛の肉と肉骨粉は「牛に与えるな」と表示することになっているが、FDA(食品医薬品局)の調査では、この法律に違反している飼料業者は数百にのぼる。

 近代的肥育農場では、従来の牧草や干し草、穀物とはかなり異なる物質、例えば、おがくず、ウッドチップ、小枝、細かく粉砕した新聞紙、釜から出たセメント・ダストなどの産業廃棄物、さらには処理済みのふん尿、都市の処理場から出される下水の汚泥さえもが飼料に使われている。

(新聞「農民」2004.1.12付)
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2004年1月

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