「農民」記事データベース20040614-639-12

明治の老農 船津伝次平〈中〉

 船津伝次平は、大農論に反対して駒場農学校を辞した後、明治二十三年に『稲作小言』を作りました。各地に講演に行った時、もくぎょを叩きながら、おもしろ、おかしく歌ったと言われる『稲作小言』を紹介します。


おもしろ、おかしく

稲作小言
ヤレヤレ皆様
しばらく御耳を
拝借しますよ
わたしと申すは
ずーっと昔の
その又むかしの
神代の時代に
豊蘆原より
あらわれ出まして
それより日本に
広まりましたる
御米であります
(省略)
飯にはもちろん
酒でも寿しでも
菓子でも味噌でも
御米で作れば
味いよろしく
紙すくのりにも
布張るのりにも
調法致して
無類のものなり
(省略)
精げる時分に
いでたる粉糠は
牛馬の食料
風呂場に有用
肥料に要用
沢庵漬には
最も必用
糠味噌漬にも
これ又同様
その又茎藁
飢饉の食料
製紙の材料
縄 蓑 筵に
俵にかますに
わらじに脚絆に
(省略)
そのほか効用
枚挙につくせず
貴重の貴重の
無類のものなり
然るに此のごろ
御米を廃して
肉食世界に
改良しなさる
御説もきいたが
肉食世界を
拒むじゃなけれど
獣類何ほど
繁殖なすとも
値段が高くちゃ
下等の人民
食うことかなわず
肉食するには
現今一日
四五十銭ほど
要するなるべし
米なら三銭
四銭でたくさん
穀類作れば
一反二反の
わずかな田地の
収穫ものでも
一戸の家内の
四人や五人は
年中食して
余りがあります
牛馬を一頭
そだてて見なさい
一町二町の
草ではたるまい
ある人申すに
数年原野に
放牧するには
一頭飼育に
六七町余の
地面を要すと
ヤレヤレ皆様
よくききなされよ
六七町余に
一頭ぐらいを
飼うよなことでは
三千八百
余万の人民
匂いをかぐには
足りるであろうが
食うにたるまい
足らざるときには
肉類輸入し
つまりは必ず
御国の損まう
近年御米が
豊作つづきで
やすねであれども
やすねであるとて
棄てはいけない
充分はげんで
智力をつくして
赤米青米
腹白しいなは
少しもなくして
光沢味い
最も宜しき
日本固有の
上等種類を
多分に作りて
俵になすまで
手ぬけのなきよに
御注意なされて
ドシドシ輸出し
外国一般
そのよきあじわい
十分しらしめ
肉食世界も
米食世界に
変ずるようにと
尽力するこそ
農家の職分
(省略)
皆様はげんで
勉強しなされ
皆様はげんで
勉強なされば
御金はどっさり
日本に充満
日本に充満
(新聞「農民」2004.6.14付)
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2004年6月

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