「農民」記事データベース20041129-662-01

農水省の推進戦略

関税引き下げ・撤廃狙うFTA EPA

日本農業を一層破局に導く小泉首相の「農業開国」宣言


相手国の農業や自立も破壊 撤回せよ

 農水省は十一月十二日、六項目からなる「みどりのアジアEPA推進戦略」(以下、「推進戦略」)を発表しました。EPA(経済連携協定)とは、すべての物品の関税を撤廃するFTA(自由貿易協定)に加え、投資や労働力移動、知的財産権などの規制も撤廃する協定。この「推進戦略」は、昨年十月に「農業鎖国は続けられない」と暴言を吐いた小泉首相が、トップダウンで農水省に作らせたものです。

 農水省のシナリオ

 「FTAは、関税引き下げ、撤廃が大前提」――。十一月十七日、農民連、食健連が行った農水省との交渉の場で、同省の担当者は、あからさまにこう述べました。

 「日本経済新聞」は十二日付で、「農産物関税コメ除き削減対象に」とする記事を掲載。主な農産物の輸入関税について「早期に撤廃・削減、段階的に削減」などと品目別に分け、農水省の描くシナリオを示しています。(表)

 
主な農産物の輸入関税
早期に関税撤廃・削減
 ナシ(4.8%)
 リンゴ(17%)
 アスパラガス(3%)
 バナナ(約10%)
段階的に関税削減
 鳥肉(約10%)
 合板(約10%)
 マグロ(3.5%)
当面は関税削減の対象外
 コメ(490%)
 砂糖(270%)
 コンニャク(990%)
(注)カッコ内は関税率。関税率は輸出国や数量によっても変動することもある
 「日本経済新聞」から

 農水省は、訂正を求めるなど打ち消しに躍起ですが、「日経」の記事通りに、事を進めようという意図が、交渉のなかでの農水省担当者の言葉からも見て取れます。

 「推進戦略」は「EPA推進に当たっての六つのポイント」のなかで、アジアの農民の「所得向上につながる市場アクセスの改善」「我が国食品産業のビジネス環境の整備」「我が国食料輸入の安定化・多元化」などをあげています。

 要するに、(1)日本の食品産業が開発輸入を進める「環境を整備」し(2)日本の農民の「所得」を減らしてでもアジアからの農産物の輸入を増やすもので、これまでになく踏み込んだ「農業開国」宣言です。

 警鐘鳴らしたが…

 交渉で農水省は「農産物輸入のアメリカ一辺倒から、アジアにシフトしたい」と述べましたが、アメリカ言いなりに、自衛隊をイラクに派兵する小泉内閣が、同国からの輸入を減らすことなど到底できないのは明らか。現に「アメリカに向かって輸入を減らすとは言えないが…」と口ごもるありさまです。

 アメリカからの輸入を減らさず、アジアから増やすだけでは、すでにアジアの農産物輸出のたまり場になっている日本の農業を犠牲にするだけです。

 海外の農業・食糧情報を提供する民間の農業情報研究所は、世界八番目の農産物輸出国にのし上がったタイの農業が、輸入化学肥料と農薬の大量使用という自然資源の犠牲の上に成り立ったものだというタイ政府研究機関の分析を紹介。「FTAは、小農民駆逐、貧困化、持続不能な農業、森林破壊への動きに、一層拍車をかけるだろう」とのべ、「EPA戦略に展望はあるのか」と警鐘を鳴らしています。

 「農業構造改革は待ったなし」として、日本農業をつぶしてでもFTA交渉に血道をあげる小泉首相。メキシコとは協定締結を終え、現在、タイ、フィリピン、マレーシア、韓国などと交渉中です。日本農業と相手国の経済発展を犠牲にしたFTA、EPA協定の締結を急ごうとしています。

 断じて認められぬ

 全国食健連と農民連は十七日の交渉で、「多国籍企業の思いのままに、輸入を拡大することは、がけっぷちにある日本農業を破局に導くとともに、アジア各国の農業や自立を破壊するもので、断じて認めることはできない」と指摘し、農産物の関税削減、撤廃方針の撤回を強く求めました。

(新聞「農民」2004.11.29付)
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2004年11月

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