「農民」記事データベース20050711-691-11

旬の味


 湿度の高い日が続く雨期はうっとうしいが作物の成長は早い。病気や雑草にも油断ならないので気の抜けない季節である▼汗ばむほほを風が抜けてゆく。あぜ草のなかには野アザミの花が咲き、水辺にはアヤメの群落も見える。山形の詩人、真壁仁が詩集『日本の湿った風土について』のなかで“景観はいつも濡(ぬ)れていた”と書いたのを思い起こす▼この国の農の豊かさと文化は、湿った風土のなかで培われた。人の心の機微も情緒も、言えば思想も、そこにたどり着く。真壁はそれを“植物的な、きわめて植物的な”と言った▼たしかに記憶には、草木の家に住み、その実や芽や花を食い、寒い冬はそれで暖をとった郷愁のような情景がある。それゆえに山河草木には畏敬(いけい)の念をもち、大事に育て、ともに生きた。しかし、今その思いはわずかに農のなかに残るのみである▼戦後六十年の節目に振り返れば、真壁の言う“植物的な、きわめて植物的な”農の思想は、憲法九条のなかに収れんされる。九条の会へ―。

(新)

(新聞「農民」2005.7.11付)
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2005年7月

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