「農民」記事データベース20050725-693-01

キャベツ、レタス、ハクサイ…

野菜暴落
泣く泣く産地廃棄しても歯止めかからず

 いま野菜産地が、価格の暴落に泣いています(表1)。このうち、キャベツやレタス、ハクサイの産地では、箱代や運賃にもならないと、畑でつぶす緊急需給調整=「産地廃棄」が行われ、なんとか価格暴落に歯止めをかけようとしています。「産地廃棄」は、丹精込めた野菜を処理しなければならず、生産した農家にとっては「一番つらい仕事」です。


輸入量増 と国の大産地偏重型助成
異常気象 前年の3.3倍 廃棄知らぬ顔で

 畑に野積みされたレタス・ハクサイ

 長野県南牧村は、全国でも有数のレタス産地。六月から十月までレタスをはじめとする高原野菜の出荷に追われます。しかし今年は様子が一変。「六月の出始めから、ずっーと価格が下がりっぱなし。こんなことはいままでなかったね。これじゃ、農家は倒産だ」。菊池幸彦さん(62)は、「産地廃棄」のレタスやハクサイが山のように積み上げられている畑を前に、はきすてるように話します。

表1 野菜の卸売価格 表2 生鮮野菜の輸入状況

 六月十五日には、東京中央卸売市場の価格がなんと一キロ四十五円(平年比の三七%)まで暴落。これまでに交付金が出る「産地廃棄」は、六月中・下旬と七月上旬の三回、長野・千葉・福岡で行われましたが、菊池さんによると、南牧村では十四回、全出荷量 の三〇%を廃棄したと言います。地元のJA長野八ヶ岳の薩田行和組合長は、「農水省からも、これだけ廃棄しているのになぜ価格があがらないのか、と言われている。例年だと回復したのに、今年は異常だ」と話します。

希望の灯 農民連のネットワーク
長野・南牧村

 なぜこんなことに? 原因は?

 なぜこんなことに? 直接の原因は、異常気象です。しかし、気象のせいだけではありません。農水省の野菜政策にも問題があります。同省の政策は、産地を指定して助成を集中する大産地偏重型。今年のように、四、五月が低温・干ばつで出荷が遅れた産地と、六月に入って気温の上昇と適度な雨量によりいっせいに野菜が成長した産地の出荷が重なると、一挙に野菜の供給と価格を不安定にしてしまうのです。

 さらに輸入野菜の増加です。今年一〜五月のキャベツの輸入量は、前年比で三・三倍(表2)。国内で「産地廃棄」しているというのに、輸入量は外食・加工用を中心に、いっこうに減少しません。

 南牧村で農業委員会の会長を務める高見沢英範さん(61)も野菜農家。「この値段じゃあ、どうしようもねえ。それに量が少なくなろうが、多くなろうが関係なく安値だけは続く。どうなっているんだ」と、怒りがおさまりません。この時期、どこの農家も収穫の忙しさからパートを雇っています。最近では、外国人労働者もめずらしくありません。高見沢さんも六、七人のパートを雇っていますが、その日当への支払いで精いっぱいの売り上げです。

JA長野八ヶ岳と出荷契約
農業委・会長 “大いに期待、応援も”

 量の少なさから敬遠されてきた

 こうしたなか、菊池さんたち地元の農民連は、“高原野菜を産直のネットワークにのせて全国に発信できないか”とJA長野八ヶ岳に相談。これまでは、直販は基本的にやらないと断られてきましたが、今年は七月七日にJAと長野県農民連産直協議会(小林吉彦会長)がはじめて出荷契約を結びました。菊池さんは、「当面はJAを通じて産直ネットへ供給していくが、将来は産直部会を作り、生産者の顔が見えるネットワークへと育てたい」と話しています。高見沢さんも、「こういう動きが大事なんだ。大いに期待しているし、応援するよ」と、さっそく新聞「農民」の読者になってくれました。

 「産地廃棄」で重苦しい空気がただよう村に、農民連の「もうひとつの流れをつくろう」という呼びかけが、希望の灯となって輝いているようでした。

(新聞「農民」2005.7.25付)
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2005年7月

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