「農民」記事データベース20051003-702-06

中越大地震 あれから一年

ボランティア活動の先頭に献身

十日町市 山本浩史さん


山間地守れ 仲間と手携え

活動続ける農民連会員

 ひび割れた道路がところどころ陥没し、山崩れで茶色の土がむき出しに―。昨年の中越大地震の傷跡が今も生々しい新潟県十日町市の山間部。農民連会員の山本浩史さん(54)は、昼間は生コン会社で働く兼業農家。「震災からの一日も早い復興を」と、ボランティアに精を出しています。

 実行委つくって分校を拠点に

 隆起・沈降した田んぼ、崩落した棚田とあぜ…。震災から半月後、自分の田んぼを見たときのショックは忘れられないという山本さん。打ちひしがれた悔しさだけが残りました。結局、棚田の作付けを断念せざるをえませんでした。

 過疎化と高齢化により、農作業や集落の共同作業に人手不足が常態化していた十日町。震災が、過疎化と森林・農地の荒廃、農村の衰退に追い打ちをかけかねません。

 こうした状況に危機感をもった山本さんは、友人らと一緒に、「十日町地域おこし実行委員会」を立ち上げ、ボランティアを通じた、地元住民や地域外の人たちとの交流の場をつくりました。

 その拠点施設が、現在廃校になっている市立飛渡第一小学校池谷分校。山本さんが小学校時代に通いつづけた分校です。ボランティアが宿泊できるよう、トイレ、台所を整備し、宿泊部屋に改造しました。

復興へ 被災住民の頼もしい味方

 全国からの支援者を世話して

 ボランティアに参加する人々は、高校生・大学生から五十代までの男女と幅広く、インターネットや新聞を見て、今も全国各地から駆けつけます。ボランティアの募集や地域おこしに大きく貢献しているのは、NPO法人JEN(ジェン)です。

 山本さんのボランティア仲間、今村安さん(63)は、JENのプロジェクトコーディネーターです。雪かきボランティアがきっかけで、十日町に長期間滞在。いまは、旧池谷分校に住み込み、ボランティアの世話などをしています。

 農家ならではの指導力発揮

 山本さんをはじめ、地元住民らは当初、「ボランティアでちゃんとした仕事ができるのか」「よその人に頼んでいいのか」と半信半疑でした。

 しかし今では、人手不足を補う大事な働き手として、頼りにされています。住民は、ボランティアの献身的な支援活動に励まされ、逆に、落ち込まずに黙々と被害に立ち向かう住民の姿が、ボランティアの心をとらえる―そんな交流が根付きつつあります。

 今村さんが「浩史さんがいなければ、ボランティアへの指導、分校の修繕などはできなかった」と言うように、山本さんは、あぜや水路の補修、草刈り、苗床づくりなど、農家ならではの指導に力を入れています。

 「農業ができるのは、地域があってこそ。地域を守ることは、農業を守り、自分の足元を守ることです」。しかし、こう強調する山本さんも、ボランティアの世話で精いっぱいで自分の田んぼまで手が回りません。「まずは自分の田んぼを復旧しないと…」と笑います。

 農民連十日町支部の大津久支部長は「地域おこしは、農民連の活動そのもの。われわれも大いに協力したい」と期待を寄せます。

 山間地、農村の復興はこれから。山本さんと今村さんとの二人三脚は続きます。

(新聞「農民」2005.10.3付)
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2005年10月

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