「農民」記事データベース20060206-718-03

野菜高値・原油高騰

農家経営ピンチ

 冬の寒さで野菜の価格が高騰しています。寒波の緩みで、落ち着きを取り戻しつつありますが、平年より一・五倍近くの高値に。加えて原油高が農家を直撃しています。市場を通してみる野菜高騰の原因は? 原油高による影響は?


異常寒波・干ばつで出荷減、輸入増

野菜高値を後押し

 「高すぎて売れないね。寒波と雪の影響だよ」(東京都品川区の八百屋)。キャベツ一四五%、ネギ一三一%、レタス一二五%…。平年比(一月十六日〜二十日)の生鮮野菜の小売価格です。寒さと干ばつによる生育の遅れが、市場への出荷量に大きく影響。「入荷量は二割減。今年は葉物が少ない」。東京都中央卸売市場にある卸売会社の担当者は指摘します。

 大手スーパー、加工業者、中食・外食産業は、市場を通さず、直接農家と取引する例が増えていますが、野菜が足りないとなると、「アメリカなどからブロッコリー、ネギなどを緊急に輸入し、レタスなどをカット野菜にして安売りしている」(同担当者)といいます。

 一方で、相場が下がってからも高値で売り続けている大手スーパー。街の八百屋が減り、「セリ」がなくなったことによって、大手は幅をもたせて価格設定ができるようになっています。つまり、小売価格の目安になる小売店が少なくなったことで、大手は原価にたいする利益率を高めに設定できるようになりました。こうして価格が下げ基調にあるときでも、すぐに下げずに、しばらくは高めに設定しているのです。

 政府は本来、自然災害時でも野菜価格の安定に役割を果たすべきです。ところが、契約農家に栽培させたキャベツやハクサイを、野菜の不足時に市場に出して、高騰を防ぐ野菜売買保管等事業を二〇〇三年度に廃止。価格維持の責任を放棄してしまいました。さらに外国からの野菜輸入量を増やし、生産基盤を掘り崩してきた失政も見逃すことはできません。


雪と寒さ、重油高騰で消費増

“油で利益が消えた”ハウス農家

 冬の寒さに追い打ちをかけているのが、重油の高騰問題です。千葉県の印旛地方は一月二十一日、二十年ぶりといわれる大雪に見舞われ、約二十センチ積もりました。印旛農民センターの糸川幸一さん(56)=成田市=は、トマトを五百坪のハウスで栽培しています。「ハウスを始めて以降、初めての寒さ」(糸川さん)というなかで、重油が去年の一・五倍に跳ね上がりました。ハウスの中は常に一〇度に設定。「収量に響くので、これ以上温度を下げられない」と言います。

 重油高騰に伴って、テープなどのビニール製品も軒並み値上げに。今後、寒さを避けて、「栽培する時期をずらすことも考えている」(糸川さん)といいます。

 重油を多く使う施設園芸農家にも大きな打撃を与えています。「どこでも油で悲鳴をあげている。利益が油で消えてしまう」と嘆くのは、佐倉市で洋ランを栽培する齋藤和さん(64)。約一・五倍の原油高は、ハウスの室温を常に一五度かばら二五度に設定しなければならない齋藤さんにとって、大きな負担です。

 それに加えて二十一日の大雪以降、重油を普段より二、三割多く使いました。ハウスの中のカーテンを余分に一枚多く張るなどして、寒さをしのいでいますが、このままでは重油に年間二百万円も余計にかかってしまいます。「花屋に直接持っていっても、寒さで花が凍ってしまい、売り物にならない。ダブルパンチですよ」。齋藤さんの怒りは収まりません。

 印旛農民センターは、農家の負担を少しでも減らそうと、県に減免軽油を申請し、適用を受けています。

(新聞「農民」2006.2.6付)
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2006年2月

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