「農民」記事データベース20060206-718-05

  異常気象と食糧生産 》4《
―農業のはなし―

お茶の水女子大学名誉教授 内嶋 善兵衛


朝焼けは大冷害の予兆

 低温・少日射が93年の大凶作に

 一九九三年の春先、晴れた日の早朝の空は、紫を帯びた不気味な深い赤に染まり、なにか不吉なことが起きるのではという感を抱かせました。この年は、夏のなかった年と呼べるほどに日本全体が低温・少日射に襲われ、全国の水稲作況は七四となり、約二百五十万トンの米不足が発生して台所を直撃しました。

 異常な朝焼けは、一九九一年六月に大爆発して、大量の二酸化イオウを成層圏へ送りこんだマニラ近郊のピナツボ火山のせいでした。

 成層圏の汚れが太陽の光を吸収

図2点 一・五億キロメートルの宇宙からの太陽光は、地球の気候を生物に都合のよい温湿度に保っているだけでなく、植物の光合成活動を通 じて全生物の生存を支えています。その様子がモデル的に図上に示されています。

 太陽から成層圏にとどく光の強さはほぼ一定で、一平方メートル当たり千三百六十七ワットです。火山の大噴火で成層圏に二酸化イオウが多量に注入されると、硫酸エアロゾルという小さな粒からなる汚染雲が形成されます。この汚染雲は太陽の光を強く吸収、反射するので、成層圏の下の対流圏へとどく太陽エネルギーが減少します。このため、地球全体の温度が低下し、冷夏が発生しやすくなるのです。

 冷害の60%近く火山噴火のせい

 約二千年前に日本に渡来した稲作は、多くの先人たちの工夫、努力によって全国に広がっていきました。しかし北日本や東日本の一部では温度資源が不足気味で、これまで枚挙にいとまがないほど夏の低温害(冷害)に傷めつけられてきました。

 研究からその六〇%近くが、前年または当年早期に大規模な火山噴火が起きた時に生じたことがわかりました。その例が図下に示されています。

(つづく)

(新聞「農民」2006.2.6付)
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2006年2月

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