「農民」記事データベース20060213-719-01

新たな機器導入と施設拡大へ

2000万円募金を呼びかけます

食の安全守るとりで 食品分析センター

関連/“GM食品の表示に疑惑”テレビ番組が紹介

 国民の食の安全を守って、日々活躍している農民連食品分析センターは、五月に設立十周年を迎えます。残留農薬をより厳しく規制するポジティブリスト制が五月から施行されるのに伴い、新たな分析機器の導入が求められています。農民連は、分析センター十周年を記念して、二千万円の募金を呼びかけています。石黒昌孝所長に聞きました。


石黒昌孝所長にきく

 政府動かした実績

 ――分析センターが十年間で果たしてきた役割についてお話しください。

 石黒 一九九六年の設立以来、学校給食パンの残留農薬の分析で、有機リン系農薬を検出し、国内産小麦を使ったパンを学校給食に使用させるきっかけになりました。中国産冷凍ホウレン草から違反農薬を検出したときは、厚生労働省を動かし、輸入を停止させ、食品衛生法を改正させる力になりました。

 コーンスナック菓子や大豆健康食品から遺伝子組み換え(GM)を発見し、「遺伝子組み換え不使用」表示の豆腐からGM大豆を検出しました。輸入農産物とのたたかいや、食の安全を守る上で、大きな役割を果たすことができました。数次にわたる募金にご協力いただき、九九年に遺伝子組み換え分析機器、〇三年には重金属分析機器の導入など設備の充実ができたおかげです。深くご支援に感謝いたします。

残留農薬の規制拡大でより高い分析能力を

 対象農薬7百以上

――五月から実施されるポジティブリスト制とは何ですか。

 石黒 今まで、食品中の残留農薬は、残留基準が決まっている二百五十農薬だけが規制の対象でした。これがポジティブリストになると、残留基準が決まっていない農薬についても、すべて一定基準以上に残留していれば、流通が禁止されます。農薬のほか、動物用医薬品、飼料添加物など対象が広がることになります。食品の残留農薬の安全を求める国民の運動によって実現したものです。

 ところが、アメリカ産小麦にあるクロルピリホスメチルの小麦の基準値が一〇ppmと、米の百倍も緩めている問題もあり追及が必要です。対象農薬数は約七百ですが日本で使用されていない農薬も多く、輸入食品の農薬等の水際検査を強化させましょう。分析センターでもそのためにがんばります。

 一方、生産現場では、空中散布や他の栽培畑からの飛散によって使用していない農薬が出る場合があり、花き、果樹など許可農薬も違うので地域での共同も必要です。いずれにしても、分析センターで分析し、原因究明や国産のよさをアピールすることが必要です。

輸入食品の歯止めへさらに本領発揮

 10周年記念として

――ポジティブリスト制の実施で、より高い分析能力が求められますね。

 石黒 制度の実施で、約七百種の農薬と動物医薬品、飼料添加物などの分析が必要です。従って農薬を分析できるガスクロマトグラフ質量スペクトル装置の導入や高価な標準試薬の購入、現存装置の付帯設備と分析試験室の拡充がどうしても必要です。この機会に輸入食品の危険性を追及するとともに、国産品の安全性を明らかにし、食の安全をはかるうえで、大きな役割を果たしたいと考えます。

 そのために「分析センター十周年記念二千万円募金」をお願いすることになりました。食の安全を守るとりでとしての食品分析センターの充実・強化のために、募金へのご協力を心からお願い申し上げます。

農民連分析センター募金の振込先 郵便振替口座 〇〇一六〇―六―七七三五四二 「農民運動全国連合会分析センター」まで


GM大豆検出した分析 センター

“GM食品の表示に疑惑”テレビ番組が紹介

 マスコミからも注目される農民連食品分析センター。一月十八日に放映された読売テレビ系「ニューススクランブル」の「本当に安全? 遺伝子組み換え食品“表示”に疑惑」の番組でも紹介されました。

 豆腐などの大豆製品にみられる「遺伝子組み換え大豆は使用しておりません」の表示。番組は、GM不使用表示のある、六つの異なったメーカーの豆腐を分析センターに持ち込み、検査しました。

 分析方法を紹介した後、八田純人主任が「(蛍光でスポットが出れば)組み換え遺伝子のDNAが増えていることを示します」と説明。結果は、スポットがすべて認められ、六つすべてからGM大豆が検出されました。

 同番組は、食用大豆の八割以上が輸入され、流通現場でのベルトコンベアーによるGM大豆混入の可能性を告発。混入率五%以下ならば、「不使用」表示が許される問題にもふれ、EUでは〇・九%以下と、日本より厳しい規制を課していることを指摘。「表示と中身が最初から違っていたとしたら、こんな腹立たしいことはありません」と結んでいます。


GM拒否の運動にセンターが威力発揮

 「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」代表の天笠啓祐さんの話 アメリカ産大豆の八六%はGM大豆です。日本は輸入大豆の七六%をアメリカに依存しており、日本の食卓に登場するGM大豆の割合は六二%となります。大豆を輸入に依存している限り、GM汚染は免れないと言わなければなりません。

 GM作物の混入が五%以下だったら「不使用」という表示が許されるというのも問題です。せめてEU並みの〇・九%までとし、全食品に表示を義務付けるべきです。

 自分で食べるものは、自分で作るのが基本です。それが食糧主権の考え方です。日本人にとって主食に近い大豆を外国に依存し、農家の切り捨て政策をとっている限り、食料自給率はもっと下がってしまうのではと危ぐしています。

 私たちは、大豆畑トラスト運動を通じて、自給率を高める取り組みを行うとともに、遺伝子組み換え作物(GMO)を拒否するGMOフリーゾーンを全国に広げる運動を強めています。

 今まで、GM食品の分析を食品分析センターに何度もお願いしてきました。私たち市民、労働者が分析センターを持っている意義は大きい。

 国の研究機関に負けない幅広い分析能力で、たたかいの大きな武器になっています。国の食品行政のごまかしを許さないためにも、役割と責任は重要になっています。

(新聞「農民」2006.2.13付)
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2006年2月

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