「農民」記事データベース20060220-720-08

本の紹介

桜井豊著「日本国憲法と農業政策」


憲法理念ゆがめている自民農政

 憲法改悪が声高になってきている時、「農業を守るために憲法を学ぼう」と訴えかけるタイムリーな本が出版されました。著者は、北海道の酪農学園大学で長らく農業政策学や酪農政策論を担当してきた桜井豊さん(現、同大学名誉教授)です。

 この本は、一九七四年十月、北海道大学農学部で行われた「北海道平和研究会」における報告―「農政と憲法」が下敷きになっています。じつにいまから三十年以上も前に、自民党農政がいかに農民の基本的人権を侵害しているか、論じられていたのです。

 本書によれば、敗戦直後、平和憲法を農業政策に生かそうとした農林省の役人がいました。石黒忠篤氏です。桜井さんは、石黒農政を「彼の強みは、トルストイの人道主義と農業尊重の勤労精神を心のかなめとし、彼自ら直接末端の農民と接触し、農民の要求を肌で感じ取り、土地問題の解決を彼なりに果たそうとした」ことだと、評しています。本書は、こうした役人がいたことにあらためて光をあて、高度経済成長の下、いかに自民党農政が憲法の理念をゆがめてきたか、また憲法にもとづく農政の可能性について、明らかにしています。

 桜井さんは呼びかけます。「これを農村文化運動にする必要がある。『再び戦前の過ちを繰り返せぬ』という原点・初心を忘れていないか。憲法精神に暢気(のんき)になっていないか。農林漁業は憲法を論じ、これを活かす上で優先的に点検すべき重要分野であろう」

 いま、「農林水産九条の会」への賛同が広がっています。本書は、この運動を大きく励ましてくれるでしょう。

(筑波書房、定価1500円+税)

(新聞「農民」2006.2.20付)
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2006年2月

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