「農民」記事データベース20060220-720-11

タイ農村かけある記(3)


“社長は私たちのお父さんです”
豊かな農村に変えた日本人

 バンコクから東に約三百五十キロ離れたコラートは、アメリカがベトナム戦争の時、呼びやすいように付けた地名で、正式にはナコンラシャシマ。田中鴻志(こうし)さんは、元福岡県農協中央会の職員で、一九八四年からJICA(国際協力機構)の専門家として農協振興プロジェクトにかかわりました。五年間のプロジェクトが終わった時、田中さんはタイに残ることを決意。有機野菜や自然を取り入れた養鶏・養豚を中心に「コン・フジ・ファーム」を経営しています。

 鳥インフルエンザが流行し、周辺の養鶏場が壊滅的な被害を受けるなか、「卵は数時間で売り切れ。供給が追いつかない」と言う田中さん。このファームだけは鳥インフルエンザの猛威からまぬがれています。それはなぜか。流通している飼料を使用せず、抗菌剤や農薬をいっさい使わないトウモロコシが主原料ですべて自社で飼料を配合しているからです。また清浄な土壌づくり。土の中の有用菌を増やして鶏の排出物などに含まれる有害菌を抑えています。ほかに鶏舎内の空気の清浄化や、鶏の数を減らすこと。実際、土の上を元気に飛び回っている鶏をみれば、「なるほど」と納得しました。

 またこの地方は、塩害でやせた土地のため、バンコクへの出稼ぎ者が多いところ。田中さんは、「出稼ぎして月一千バーツ稼ぐのがやっとなら、この村で一千バーツ以上稼げる仕事をつくればいい」と、生まれ故郷の福岡県八女市の業者と連携して、絹布製の盆提灯(ちょうちん)づくりの事業もしています。自社工場で絹布に仕上げ、提灯の骨組みにのり付けしていきます(写真〈写真はありません〉)。とても細かな手仕事ですが、農家にとっては貴重な現金収入。こうして貧しかった村は、郡で二番目に豊かな村になりました。

 農場で働く日本語のじょうずな青年が言いました。「研修生として日本に行きました。社長は、私たちのお父さんです」。田中さんとそこで働く農家の人たちに会えて、とてもうれしくなりました。

(つづく)

(新聞「農民」2006.2.20付)
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2006年2月

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