「農民」記事データベース20060710-739-09

さらに汚染広がる

食品分析センター調査
GMナタネ自生


全国10地点・121検体採取

6地点で35検体を検出

市民調査でも5件検出

 輸入され、こぼれ落ちた遺伝子組み換え(GM)ナタネの自生がさらに広がっている実態が明らかになりました。農民連食品分析センターは三月から六月にかけて、独自に調査を実施するとともに、全国の農民連会員、市民、消費者に調査への参加を呼びかけてきました。

 分析センターは独自に、全国十地点で調査を行い、百二十一検体を採取。六地点、三十五検体からGMナタネが検出されました。除草剤ラウンドアップの成分グリホサートに耐性をもつラウンドアップ・レディー(RR)は二十件、除草剤バスタの成分グルホシネートに耐性をもつリバティー・リンク(LL)が十五件でした。(各地点の詳細は図)

遺伝子組み換えナタネ自生調査2006

 調査の詳細はビデオでも見ることができます。

 昨年同様、輸入ナタネの陸揚げのある港を中心とした地域では、GMナタネの自生が続き、静岡県清水港と兵庫県神戸港は初の検出。四地点でRRとLLのGMナタネが確認され、二種類のGMナタネ間で交雑が起きる可能性が考えられます。

 千葉港、名古屋港、四日市港のように、陸揚げ場所から搾油工場、飼料工場までの輸送経路がある地点では、こぼれ落ちた種子が原因と考えられる自生が見られ、とくに四日市港から国道23号沿いでは、農耕地への侵入が確認されました。

 この結果について、四日市近郊の製油会社は「市民団体からの指摘も受け、種子のこぼれ落ちを防ぐ自社マニュアルを作成し、ナタネの引き抜き作業も繰り返し行ってきました。排出口のパッキンの点検・修理を行い、さらに車両の点検を徹底し、輸送中のこぼれ落ちを防ぐ方向で、改善していきたい」とコメントしています。

 今回、呼びかけに応えて、調査に応募した件数は二十七件、参加者は三十二人にのぼり、百四キットが配布されました。うちGMが検出されたのは、横浜(一件)と四日市港(四件)の二地点でした。検出された五件すべてがRRでした。

 世界のGMナタネの作付面積は二〇〇一年二百七十万ヘクタールだったものが、二〇〇五年には四百六十万ヘクタールにまで年々拡大。カナダでは、ナタネの作付割合の七七%がGMです。ナタネの自給率が〇・一%以下の日本は、カナダから八一%を輸入。大ざっぱに言っても、ナタネ油やマヨネーズ、マーガリンなど食用として、GM食品が食卓に出回る割合は六割以上ということになります。


自治体に防止対策や規制条例づくり求める

遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表・天笠啓祐さん

 私たちの調査では、大分県や千葉の幕張で検出されるなど、輸送経路以外の、予想外の場所からGMナタネが検出されています。想像以上に汚染が広がっています。

 千葉では、グリホサート、グルホシネート双方に耐性をもつものが検出されるなど、種子汚染が深刻化しています。汚染の広がりを発見できたことは、参加者が増えたからです。

 昨年は、慣れなかったから失敗も多かったのですが、今年はほとんどありませんでした。これは、市民の監視能力が高まったことを示しています。

 今回の調査結果を自治体に持って行き、交雑・混入を防ぐ対策をとらせるとともに、GMを規制する条例・指針づくりを求めていくことが必要です。


スーパー雑草化心配、国の抜本対策ぜひ

生井兵治・筑波大元教授(受粉生物学)

 一昨年、農水省が茨城での三種類の除草剤耐性GMナタネの自生を公表以来、市民が輸入港周辺や長野などでの自生を確認し、環境省も二種類の除草剤耐性遺伝子をもつGMナタネを津市で確認(「毎日」)しました。

 日本の品種キザキノナタネなどはGMナタネと同種です。ナバナも同じかハクサイなどの種で、種間の自然交雑も容易です。種間雑種の初期世代は生育おう盛でも結実率は低いですが、後代にGMナタネの遺伝子をもつ復帰型ハクサイなどが生じます。さらに、GMナタネが交雑して生じる複数の除草剤耐性遺伝子をもつGMナタネなどのスーパー雑草化も心配です。

 農水省と環境省は、生物多様性に及ぼすGMナタネの自生の影響を過小に評価しますが、国の抜本的対策が待たれます。


国産ナタネの自給率回復ますます重要

ナタネトラストに取り組む福岡・京築農民組合の木本正見書記長

 分析センターが行った調査によると、港から三十キロほど離れた地点でも検出され、二種類のGMナタネの間で交雑が起きている可能性が考えられるなど、すでに自然界でGM植物の交雑が繰り返し広がっているということでしょう。

 京築農民組合は、自給率〇・〇四%になっている国産ナタネの自給率回復と、日本の原風景である「菜の花畑」の復活運動として「ナタネトラスト」を始めて六年になります。輸入農産物によって自然生態系まで破壊されかねないことが明らかになった今こそ、輸入食料を押しつけるWTOを拒否し、“安全な食料は、その国の大地から”のスローガンのもとに、食糧主権の確立、食料自給率の向上を求める運動がますます重要になってきました。


除草剤耐性ナタネだけ生育、異様な光景

調査に参加し、GMナタネを検出した吉川重彦さん(61)=津市在住=

 昨年の調査で四日市港周辺の道路脇に生えるナタネにも除草剤耐性ナタネが見つかったと知り、栽培ナタネに広がっているかどうか調べたいと思って友人と連休に参加しました。

 三重県ではナタネは今でも、“菜花”と称して脇芽を冬の緑色野菜として出荷したり、家庭菜園で栽培したりしています。

 幸いに栽培ナタネにはGMナタネは見つかりませんでした。しかし、昨年同様、港近辺の道路脇のナタネからはGMナタネを確認しました。

 除草剤で他の草が枯れた中で、GMナタネだけが生育し、花をつけているのは異様です。また、点々とナタネの花が山間部の道路脇にさえ見つかるのも驚きました。そして、こんなに簡単に、はっきりと遺伝子の相違が試験紙でわかるなんてと、感心した次第です。

(新聞「農民」2006.7.10付)
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2006年7月

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