「農民」記事データベース20061030-754-08

衝撃

遺伝子組み換え大豆食べたラットの子
高い死亡率 成長も遅い

GM食品の安全性に波紋広げる

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 遺伝子組み換え(GM)大豆を食べたラットから生まれた子ラットは、死亡率が高く、成長も遅かった――こんな衝撃的な実験結果が波紋を広げています。豆腐やみそ、しょう油などに欠かせない大豆。この実験が訴えるものは…。

 ロシアのイリーナ博士の実験結果

 実験を行ったのは、ロシア科学アカデミー高次機能・神経行動学研究所のイリーナ・エルマコヴァ博士。「毎日食べる食品であるにもかかわらず、子どもへの影響をみる実験が行われていないのはおかしい」として、GM大豆をラットに与え、その子どもにどういう影響がでるかを観察しました(二〇〇五年)。博士は七月に来日し、東京、大阪など全国六カ所で講演しました。

 実験は、雌ラットを(1)大豆を使わない普通の飼料を与えたもの(2)通常の飼料にGM大豆を加えて与えたもの(3)通常の飼料にGM大豆から抽出したタンパク質を加えて与えたもの(4)通常の飼料に在来大豆を加えて与えたもの―の四つの集団に分けて行われました。そして四つの集団の雌ラットを、健康な雄ラットと交尾させ、子ラットへの影響をみたのです。同じ実験を三回繰り返し、三週間以内に子ラットが死んだ割合(死亡率)は(1)八・一%(2)五一・六%(3)一五・一%(4)一〇・〇%となり、GM大豆を与えたラットから生まれた子ラットの死亡率が異常に高いという結果がでました。

 さらに生後二週間目の子ラットの体重を調べたところ、十グラムから二十グラムの低体重だった子ラット数の割合は、雌ラットに(1)通常の飼料を与えたものが六・〇%(2)通常の飼料に大豆を加えたものが六・七%(3)通常の飼料にGM大豆を加えたものが三六・〇%でした。GM大豆を与えたラットから生まれた子ラットは低体重で成長が遅いという結果が得られました。

 政府も実験に否定的な見解を紹介

 この実験を、GM食品推進側は猛烈に攻撃。モンサント社などバイテク(バイオテクノロジー)企業で構成するバイテク情報普及会は、実験結果の打ち消しに躍起になりました。農水、厚生労働両省も、ホームページのQ&Aで、実験に否定的な見解を紹介しました。

 これにたいし、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン、日本消費者連盟などは連名で、「遺伝子組み換え食品の次世代への影響を評価する実験を求める」要請書を政府に提出。「実験自体はまだ最初のステップであり、試行錯誤のところがあり、緻密(ちみつ)さに欠ける点があった」としつつも、「遺伝子組み換え食品の安全性で重要な問題を提起した」と、実験の意義を強調。イリーナ博士は「他の科学者や企業に実験を繰り返すよう呼びかけます」と警告しています。

 遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表の天笠啓祐さんは「GM大豆は入手が困難で、研究の段階で『特許権侵害で訴える』という圧力があり、再現実験が困難な状況にあります」と指摘します。

 日本政府も安全性確認の追加実験を

 アメリカでのGM大豆の作付けは年々増え、〇六年は大豆作付面積の九割近くにのぼります。日本は、アメリカからの輸入が七五%を占め、日本の大豆の自給率は五%。GM大豆が、食卓に上る割合は六割以上ということになります。

 農民連食品分析センターの石黒昌孝所長は「イリーナ博士の報告に強い衝撃を受けました。今まで実験されてこなかった分野で、このような結果が確認されたことは極めて重大です。第一世代に発現しているからです。GM大豆には除草剤が残留しており、危険だとは思っていましたが、事実で証明されました」と指摘。「大豆は日本人にとって重要な食品であるのにその六割はGM大豆。政府は、安全を確認する追加実験をすべきだし、厳重なGM汚染のチェックを要求します。いま、種を超えたGM作物は危険があり時代遅れだとされ、種内での良い形質を取り入れたMAS技術に進もうというのが主流です。人類の安全を考え、実験で検証された農作物を国民に提供するのが当然ではないでしょうか」と警鐘を鳴らします。


茨城県南・枝豆取り交流会

無農薬のマメ食べ大満足

GM作物についても勉強

 遺伝子組み換えでない、国産の大豆を作り、大豆の自給率を上げようと、農家と消費者が取り組む大豆畑トラスト運動。十月一日、茨城県河内町で茨城県南農民組合の主催の枝豆取り交流会が開かれました(写真〈写真はありません〉)。今年で九回目。約五十人の親子連れ、消費者などが集まりました。

 できるだけ多く束ねようと四苦八苦する参加者。二人でやっと運べるほどの枝豆を収穫するベテランの姿も。子どもたちは、バッタやカエル、コオロギなど、虫取りに夢中です。「こんなに虫がいるということは、安全な証拠」と、お父さんは子どもを見守りながら語ります。「無農薬の枝豆はなかなか食べられない」「市販されている枝豆と色も味も違う」―など、参加者は大満足の様子でした。

 昼食後は、県南農民組合事務局長の小林恭子さんが遺伝子組み換え作物と食の安全について講演。「遺伝子組み換え大豆が飛散すると在来種が育たなくなってしまう」と指摘。また、輸入食品が健康に及ぼす害を紹介し、国産の農産物を食べる重要性を強調しました。

 組合員の小更(こぶけ)〓(※)史さんは、ちょうど六、七月の種まき時期と重なった異常な長雨を悔やみます。不作ながらも手間をかけて育てた枝豆を手に取って喜ぶ参加者たち。小更さんを含めた五人の長竿第一生産組合員は、うれしそうに収穫を手伝っていました。

※〓は、「まだれ」+孝。

(新聞「農民」2006.10.30付)
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2006年10月

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