「農民」記事データベース20061218-761-04

NAFTA13年目
メキシコ農業の実情(下)


崩壊寸前になった穀物生産

 NAFTA(北米自由貿易協定)の下でメキシコ農業は、コーンに限らずその他の穀物でも深刻な影響を受けています。

 小麦…輸入が41倍の伸び、国内生産は半減

小麦・米・大豆の自給率の推移 小麦については、NAFTAによって、アメリカ・カナダからの輸入が十年目の〇三年一月から関税が撤廃されています。メキシコにおける小麦の生産量は、最高時(八五年)の四百四十万トンから〇四年には二百四十万トンへと半減しています。その背景には、アメリカなどからの輸入量が、八五年の九万トンから〇四年の三百七十二万トンへと、実に四十一倍も増加したことがあります。その結果、七〇年代には一〇〇%前後あったメキシコにおける小麦の自給率が、その後も国内消費は伸びつづけているのに、輸入増と国内生産の縮小によって、〇四年には四〇%へと大幅に低下しています。

 米…アメリカからの独占的輸入が急増

 米についてもNAFTAでは、十年目の〇三年からの関税撤廃が定められ、すでに完全自由化が行われています。メキシコの植物防疫規則では、米の輸入をモミ形態で行うことがきめられており、容量がかさばることから国境を接するアメリカからの半ば独占的輸入となっています。メキシコの米輸入は、八五年にはわずか千トンしかありませんでしたが、九〇年代から急増し、〇四年には五十五万トンになっています。その結果、八五年にモミ換算で七十五万トンあった国内生産量が、〇五年には二十七万トンとほぼ三分の一に減り、国内自給率も一一四%から二三%まで落ちています。

 大豆…国内自給率が90%から2〜3%へ

 大豆では、最も激しい自給率低下が起きています。アメリカからの大豆輸入は、九〇年の八十三万トンから〇五年には三百七十三万トンと四・五倍に増え、国内生産は八九年の九十八万トンから〇三年は七万トンと十四分の一に激減しました。その結果、国内消費に占める国内生産の割合(自給率)は、六〇年代には九〇%を超えていた実績があるにもかかわらず、その後は大きく低下して、八九年の五四%から近年ではわずか二〜三%へと、劇的な低下をみせています。
(山本博史)

※分析とデータの詳細は、農水省ホームページから「第二回食料需給動向総合検討会」報告書を参照してください。

(新聞「農民」2006.12.18付)
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2006年12月

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