「農民」記事データベース20071008-799-01

いま注目 国産の自給飼料

稲発酵粗飼料 ホールクロップサイレージ

 トウモロコシなどバイオ燃料の需要増に伴って、飼料穀物が高騰。畜産農家の経営を直撃しています。こうしたなか、輸入穀物にたよらない国産の自給飼料を見直す動きが強まっています。そのひとつが、稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ)です。熊本や宮崎、秋田などを中心に、その作付面積は全国で五千ヘクタールを超えています。


水稲農家と畜産農家がタイアップ

 いわば一石三鳥の取り組み

 ホールクロップサイレージ用の稲(飼料イネ)は、大豆などの転作作物とくらべ助成金が有利なうえ、いつでも食用に変更が可能で、しかも飼料自給率の向上にもつながる、いわば一石三鳥の取り組みといえます。

 福島県農民連は九月十三日、郡山市の石筵(むしろ)地域で、ホールクロップサイレージの現地視察会を開きました(写真上〈写真はありません〉)。この地区では、水稲農家三十四戸と酪農家十一戸で機械利用組合を作り、二十八ヘクタールに飼料イネを作付けしています。飼料イネの品種は、主に夢あおばやクサユタカなどですが、この地域では通常食べるチヨニシキなどを栽培しています。これは、以前に飼料イネの品種を栽培しましたが、気候にあわなかったためです。

飼料穀物高騰のなか輸入ものに頼らずに

 通常3千円が半額で購入も

 田植えから八月末までの管理は水稲農家が行い、収穫や運搬、保管は畜産農家が行います。水稲農家には、産地づくり交付金と耕畜連携水田活用対策から助成金(郡山市の場合、十アール当たり六万一千円。なお、地域によって助成金額に違いがあります)が支払われます。また、ホールクロップサイレージを家畜に給与する畜産農家には、十アール当たり一万円の助成が支払われますが、この地域ではこの助成金を機械利用組合に入れてコンバイン購入金や委託作業料金にあてています。

 酪農家は、一ロール千五百円で購入します。通常は三千円程度するので、酪農家にとっては買いやすい価格となっています。牛には一日十キロ程度与え、食いつきも大変良いという実績から、さらに作付面積を増やしていく計画です。

作付面積拡大には助成策が必要

 2年後には作付を5割増に

 しかし、行政からの助成金がなければ、水稲農家も畜産農家も採算ベースに合わず、作付面積を拡大できません。現に二〇〇三年度には全国で五千二百ヘクタールまで拡大しましたが、米「改革」で転作作物への助成体系が変更し、さらに畜産農家への給与助成が二万円から一万円に半額になったことから、翌年には約一千ヘクタールも減少しました。また、収穫用のコンバインが約一千万円以上かかることも大きなネックになっています。コンバイン導入には、国から約五割の補助がありますが、それでも五百万円以上を農家が調達しなければなりません。この地域では、作付面積の増加に伴い、新たなコンバインの導入を検討していますが、「助成の見通しが必要だ」と農家は要望しています。

 国は、飼料自給率を現行の二五%から二〇一五年度には三五%まで高め、飼料イネの作付面積を二年後には七千五百ヘクタールに拡大しようとしていますが、目標を設定するだけでなく、それに見合った支援策が求められています。

いつでも食用に変更可能
飼料自給率の向上にも

 いい需給状況が整えれば…

 また、もう一つネックとなっているのが、地域内に水稲農家と畜産農家が混在して、ほ場の団地化や作業条件、運搬、畜産農家への給与状況などが整うかどうかにあります。

 この地域では、水稲農家と畜産農家がうまく混在し、需要と供給がマッチした良い事例といえます。米作りができなくなった農家の農地を預かり、作付けから収穫まで行い、地代を払って飼料イネを確保することもあり、水田機能の維持にも役立っています。

 現地視察会に参加した酪農家の橋本整一さんは「『いざ鎌倉(食料不足)』という時に、いつでも米に変更できるのがこの取り組みの最大の特徴。酪農家の立場からも、飼料高騰の中では非常に有効な取り組みだ」と話していました。


 稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ、WCS)とは…

 稲の米粒が完熟する前(糊熟期〜黄熟期)に、穂と茎葉を同時に刈り取り、サイレージ化(ロール状にした穂や茎葉をフィルムで包み込み発酵させる)した粗飼料で、乳牛や牛肉に給与。

(新聞「農民」2007.10.8付)
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2007年10月

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