「農民」記事データベース20071022-801-01

米価暴落

農民連の緊急対策の実現は“待ったなし”

備蓄米を計画通り購入し古米の超安値放出にストップを

 農民連が発表した「米価暴落にたいする緊急対策」が、各方面から注目を浴びています。十月一日に農水省で行った緊急行動と交渉は世論を動かし、自民党もJA全中(全国農業協同組合中央会)も対策を検討せざるをえない事態に。「おいしい米を作りたい、食べたい」という米農家、消費者の願いに応えるためにも「緊急対策」の実現は待ったなしです。


根本原因は政府の米流通責任放棄

 米価暴落の要因の一つは、政府備蓄米。政府が自ら決めた百万トン備蓄の計画も守らず、一方、十六年産を一万六百円という超安値で放出、市場をかく乱しています。

 備蓄米は現在、六十八万トン。政府があと三十二万トン買い上げれば、需給は締まり、価格はまちがいなく安定します。こうした備蓄米買い上げの要求に対して、若林正俊農水相は「備蓄米で買い支えはしない」と冷酷に言い放ちました。

 新潟の米農家、今井健さんは「今の食糧法では、米不足などの緊急時に、農水大臣が米穀の売り渡し命令を出すことができる。しかし、米価暴落を放置し、備蓄米も満足に買い入れない農水省に、だれが命令に従って供出するというのか。バカにするのもいいかげんにしろ」と怒ります。政府自身が決めた百万トン水準に見合う買い入れと、備蓄古米の超安値放出をストップさせることが緊急の課題です。

 主食に回る輸入米、知らぬ間に消費者の口に

 一方で政府は、毎年七十七万トンものミニマムアクセス(MA)米を輸入。不人気で売れないために在庫は増え続け、百八十九万トン(〇六年十月末現在)が倉庫に積み上がっています。保管料だけでも九五年から〇五年までに九百三十六億円というばく大な費用がかかっています。

 国産米が過剰といいながら、輸入米を主食に回していることも重大です。最近、加工用の輸入米を不正に主食用に回していた事件が発覚しましたが、これは氷山の一角とみなければなりません。今どこを探しても外国産表示の米は見当たりません。

 一日の農水省との交渉で、農民連は「消費者は知らない間に輸入米を口にしていることになる。輸入米であることを表示すべきだ。それができないならせめてMA米を扱う業者名を公表せよ」と迫りましたが、農水省は「MA米の販売システムへの信頼が失われる」などの理由にならない理由で公表を拒否しました。

 また輸入米の入札をめぐって、農水省職員が米輸入会社に入札予定価格を漏らして逮捕される事件も発生するなど、不正は後を絶ちません。

 農水省は、四十万トンの輸入米をえさ米として処理するために八百億円費やしたとしています。売れない輸入米の処理には巨費をつぎ込みながら、国産米の買い支えには一円も使わないのが政府の姿勢です。

 くず米混ぜた安売りを規制せよ

 「十キロ二千五百円」「激安米」などのポップが躍るディスカウントストアやドラッグストア。袋の中をよく見ると「白く濁った米」 「割れた米」などがいっぱいです。これらはくず米を混ぜたもので、米価引き下げに一役買っています。くず米は二十五万トン程度あるとも言われ、これが主食に回れば政府の需給計画にも大きく影響します。

 農民連食品分析センターが首都圏のドラッグストアや量販店の安売り米を検査したところ、一・七ミリの網目をすり抜けて落ちたくず米がゾロゾロ。

 農民連は十月一日に行った農水省との交渉の場で、分析センターの検査結果を示しながら、「農産物検査法では一・七ミリのふるい目から落ちたものは米ではなく『異物』扱いである。検査法対象外の『異物』が混ぜられ、何の規制もなく売られている。農水省はどう指導・監督するのか」と問いただしました。くず米混入は、米価対策のうえでも、消費者に当たり前の品質の米を食べてもらううえでも、政府が緊急に対策をとるべき問題です。


検査対象外の“くず米”混入流通野放しは問題だ

米検査と検査員の育成に長年携わってきた佐保庚生さん(大阪農民連)

 計画流通制度の下では、「精米の品位基準」が設けられ、販売業者が精米を販売する場合には、これに適合するものを販売することが順守義務とされていました。

 農産物検査法における「完全精米」の規格の扱いでは、「一・七ミリの規格ふるいを通過するものは異物にカウントする」とされています。

 表示だけの問題でなく、農産物検査法との関連も含めて精米の品位・中身をチェックする必要があります。農産物検査の対象外となった、ふるい下のくず米を混入した米が流通し、野放しにされているのは問題です。

(新聞「農民」2007.10.22付)
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2007年10月

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