本の紹介
天笠啓祐著
「バイオ燃料 畑でつくるエネルギー」
温暖化防止できるのか
バイオ燃料の全容に迫る
食品価格の高騰が食卓を直撃しています。穀物価格の値上げに端を発し、食用油やめん類、パンなどの食品に波及。トウモロコシの高騰は、飼料価格も押し上げ、畜産農家の経営を圧迫しています。
原因の一つは、二〇〇六年後半に、突然脚光を浴びたバイオ燃料ブーム。その背景には、アメリカの食糧戦略とエネルギー戦略が密接に絡み、さらに主要穀物の流通を握る穀物メジャーとモンサント社などのバイオテクノロジー企業、アメリカの大規模農業経営企業が巨利をむさぼる―という構図がみえてきます。こうしたアグリビジネスがバイオ燃料ブームの火付け役となり、それを各国政府が後押ししているのです。
「温暖化防止」の名目で登場したバイオ燃料。本当に環境に優しいのか。南米や東南アジアで急速に失われる熱帯雨林、インドネシアのアブラヤシ・プランテーションの泥炭地域から排出される二酸化炭素など、かえって温暖化に逆行する事態が起こっています。
さらにバイオ燃料の原料となるトウモロコシ、大豆、ナタネで増えつづける遺伝子組み換え種子。製造効率を上げるためと称して、バイテク企業はこぞって組み換え技術の開発に奔走しています。
著者は「バイオ燃料もまた、グローバリゼーションのなかで、富める者をいっそう豊かにし、貧しい者をさらにどん底に突き落とし、格差を拡大する役割を果たしている」と警鐘を鳴らします。
最後に、太陽光、風力、バイオマスなど小規模な自然エネルギーを基調とした社会をつくることを提言。バイオ燃料ブームの全容に迫ります。
定価 一六〇〇円+税 コモンズ TEL03(5386)6972
(新聞「農民」2007.10.29付)
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