「農民」記事データベース20080428-826-01

世界の米価高騰

各国で“米騒動”米輸出規制相次ぐ

危機打開へ食糧主権確立の議論を

 いま、米をはじめ穀物の価格が世界的に高騰。各地で食料暴動や「米騒動」が起こり、銃を持った兵士が監視する異様な事態に。七月のG8サミット(北海道・洞爺湖)でも、食糧危機が主要なテーマとして浮上してきました。ところが日本政府は“米の作りすぎはもったいない”と、農家に異常ともいえる強制減反を押し付け、国民が望みもしないミニマム・アクセス米(MA米)の輸入を続けています。世界的な食糧危機のなかで、食料自給率の向上は待ったなしの課題です。


異常な強制減反、MA米輸入…

危機に逆行する政策を転換せよ

FAOがまとめた途上国の食料価格高騰の状況 世界の穀物価格の指標となるシカゴ先物相場は連日高値を更新。小麦は二年前の三倍に、トウモロコシ、大豆は二倍以上に値上がりし、世界の穀物期末在庫率は一四・七%で、危険水域といわれる一七%を大きく下回っています。

 穀物需給のひっ迫と価格暴騰のなかで、主要穀物を輸入に頼る途上国では、政府への抗議デモや暴動が頻発。国連食糧農業機関(FAO)によれば、エジプト、カメルーン、コートジボワール、セネガル、ブルキナファソ、エチオピア、インドネシア、マダカスカル、フィリピン、ハイチで食料暴動が起きました。

 パキスタンやタイでは、田畑や倉庫からの食料略奪を防ぐために軍隊まで動員され、穀物輸出国は相次いで輸出規制に踏み切っています。

 FAOは、すべての援助国や国際金融機関にたいし、支援を増やすか、または食料価格高騰で悪影響を受けている国への支援の再検討を要請しています。

 イギリスのブラウン首相は、北海道・洞爺湖G8サミットを主宰する福田首相に親書を送り、食料危機解決への協力を求め、世界銀行など国際機関・会議も緊急支援を行うよう呼びかけています。

 これまでのサミットでは、“WTO(世界貿易機関)交渉の促進”を宣言文に盛り込んできましたが、洞爺湖G8サミットでは、“ストップ! WTO”、食糧主権の確立と食料危機打開に向けた真剣な議論が求められています。

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バングラデシュの女性=テレビ東京・WBS「食糧危機…世界で何が?」から(4月18日放映)

 急増する需要に生産追いつかず

急騰する米価格 「米価 らせん状に上昇、天井見えず」(国際稲研究所=IRRI=発行「ライス・トゥデー」誌)――。米の国際価格も各国で軒並み上昇しています。IRRIによれば、米の生産が、急増する需要に追いつかず、米価上昇は当分続くとみています。世界最大の米輸出国タイでは、この三カ月で米価が二倍に高騰(グラフ)。

 米不足を背景に、各国は米の輸出禁止に動いています。ベトナム、カンボジア、インドでは禁輸を発動。中国は、輸出税を課し、制限しています。タイやインドネシアなども禁輸を検討しているといわれています。

 このため、二〇〇八暦年の米貿易量は、二千七百五十万トン(精米ベース)と前年比二百八十万トンの減(アメリカ農務省「ライス・アウトルック」四月十日付)となっています。主要穀物のなかで、米が貿易に回るのは、生産量のわずか六〜七%にすぎず、米を輸入に頼る国は大きな打撃を受けています。

 こうした食糧事情を受けて、主要生産国は増産政策に転じ、世界の米生産量(〇七・〇八年度)は、前年度比一%増の四億二千五百三十万トン(精米ベース)と、史上最高を更新しましたが、急増する需要に遠く及ばない状況です。

 ばく大な税金のムダ遣いして

 義務でもないのに義務だと称して、MA米を輸入し、「米の作りすぎはもったいない。資源のムダ」(東北農政局作製ポスター)と減反にしがみついている日本とは対照的です。

輸入米(ミニマム・アクセス米)これだけのむだづかい MA米の輸入量 の合計は、一九九五年度から〇七年十月末まで約八百三十二万トンに及び、今年十月末には約九百十万トンになると予想。保管料に使われた税金は、合計して一千百億円を超える見込みです。

 一方、MA米の販売用途は表の通り。一部(年間十万トン)は主食に回り、その主力は中国産です。しかし、店頭で中国産を見かけることはありません。外食等で国民は知らないうちに食べさせられているのです。

 最近は飼料用売却が急増。〇八年度には、輸入量(七十七万トン)にほぼ匹敵する七十万トン程度が販売される予定です。

 MA米の輸入量は、米不足に陥っているフィリピンの輸入量の三分の一にあたり、同国が緊急に手当てを必要としている七十万トンとほぼ同じ。日本が不要な米を輸入することは、国際価格の高騰に加担することにつながり、飼料用として販売することは、米不足に苦しむ途上国の国民感情からも許されません。


日本の米は高い、援助に回せない

 途上国にたいして国際的な援助が求められています。しかし農水省の白須敏朗事務次官は、四月十日の会見で、「MA米と国産米の在庫を、フィリピンなどに援助することはあるのか」との質問に、「日本の米は、とてもじゃないけれども高い。輸出のターゲットは、現地の富裕層とか、高級レストラン向け。価格差が大きくて、援助用は難しい」と発言。

 「在庫の米は高価だ」と言わんばかりの的外れな答えをしたばかりか、国際援助に背を向けています。MA米は、海外援助に回すなどして在庫を一掃すべきです。

(新聞「農民」2008.4.28付)
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2008年4月

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