「農民」記事データベース20080707-835-01

くずれる“米過剰論”
MA米 在庫は一掃か!!

関連/食料自給率の向上、再生産可能な価格保障を

 農水省は備蓄米の「試行的売却」を六月九日と二十四日の二回、実施しました。結果は、「過剰」なはずの〇七年産米が異常な値上がり。このことは、〇七年産が決して「過剰」ではなかったことを示しています。

 米価下落の原因は、米過剰でもなければ、農家のつくりすぎでもないことがはっきりしてきました。そして政府が米の需給と価格の安定への責任を投げ出し、市場まかせにした「米政策」の結果であることが、いよいよ明らかになりました。


備蓄米売却でさらに高騰 政府はボロもうけ

画像 備蓄米の売却は、表のように、「市場での品薄感が強い」と言われる七銘柄が入札され、二回とも〇七年産は全量 落札。その価格は、コメ価格センターの入札価格を平均で三千円以上も上回りました。この結果 、新潟コシヒカリは、政府が買い入れた価格と売り渡した価格差は、なんと七千二百十二円。農水省はトータルで七億三千二百万円余りの“暴利”を懐に入れました。そしてこれらの利益は、農家には一円も還元されません。

 備蓄米売却は、大手コメ卸業者が三月ころから卸間売買の流れを止めたのがきっかけに「コメ不足」が表面化。四月に入って全銘柄が急騰し、中小の卸や米屋さんが大混乱したためでした。こうしたなかで、最大手コメ卸の(株)神明は三月期決算で売り上げが前期比二・八%減にもかかわらず、営業利益は七〇%増の十六億円余りも大もうけしています。今も、「県の農政事務所が三回目の減反協力要請に来た」(千葉県内のある産直センター)など、「米が過剰だ」と言って減反を強制しています。しかし、日本経済新聞社の世論調査(六月二十三日付)で、「減反政策を見直すべき」が八五%にも及んでいますが、その主な理由は「世界的に食料が足りないから」。これがまともな国民の声ではないでしょうか。

世界も日本も米不足“減反どころではない”

 農水省は国民が望みもしないミニマム・アクセス米(MA米)を義務と称して輸入を続けてきましたが、四月のMA米入札では買い付けができず、今後の輸入もまったく計画がたたない状況です。もはや、カネを出せば買える事態ではなくなりました。

 三月末のMA米在庫は約百三十万トン。米不足が深刻なフィリピンに二十万トン、スリランカにも十万トンなど援助する方向で協議中です。さらに国内の加工用、エサ用などにまわせば、在庫は一掃される見通しです。今後、輸入できない事態になれば、加工用や海外援助用などすべてを国内産でまかなわなければならず、百万トン規模の増産が必要になります。田んぼを減反で遊ばせておく余裕などまったくありません。

 読売新聞の社説(六月二日付)でも「日本のコメ輸入は、国際情勢に適合していない。日本はWTOのルールの変更に向け、本格的に交渉に入るべきだ」と主張。いまやMA米の輸入を中止しおおいに米を作ることが、国民と飢餓に苦しむ人々への最大の貢献です。

政府は米の需給と価格の安定に責任をもて!

MA米の輸入禁止、WTO制度見直しを
埼玉県農民連が請願

 埼玉県農民連では、六月議会に向けて「ミニマム・アクセス米の輸入を中止し、制度の見直しをWTO交渉の場で強力に働きかけること」を求める請願を、県下いっせいに行っています。米どころ、大利根町では六月六日の議会最終日に、全会一致で意見書を採択。また美里町、秩父市、北本市、熊谷市、本庄市、飯能市、上尾市、行田市でも採択されました。


画像

政府の見通しの甘さに怒りが…

宮城県農民連副会長の千葉勇治さん(58)

 国の見通 しの甘さ、無責任さに怒りさえ覚えます。私は繁殖牛を飼いながら、有機・循環型で作った米を天日干しして準産直米に出していますが、いまこそ、中小の卸や米屋さんの期待にこたえて、大いに準産直米を広げる時です。


食料自給率の向上、再生産可能な価格保障を

秋田・湯沢雄勝農業者大会 トラクターデモ

画像 「食料自給率の向上、農業所得の保障制度の確立で希望の持てる農業を」―秋田県湯沢市で第八回湯沢雄勝農業者大会が六月二十一日開かれ、七百人が参加。今回はじめて農民のたたかう姿を市民に示そうと、トラクターを先頭に市内を二キロ余りデモ行進しました。主催は湯沢市、羽後町、東成瀬村の農業委員会や農協など十団体で構成する実行委員会。

 湯沢市長の鈴木俊夫さんは「農業が基幹産業のこの地域で、米価が大幅に下落したことが、農家の生産意欲の減退に結びついている。生産費は補償されるべきであり、国は再生産可能な保障価格を明示するよう、つよく求めていきたい」とあいさつ。

 また、JAこまち青年部委員長の中川徹さんが「元気ある、夢のある農業について」、JAうご青年部長の平柳俊明さんが「いま、農業の置かれている現状と課題について」、それぞれ意見発表しました。

 大会は、国が再生産可能な価格対策を講ずることやミニマム・アクセス米の縮小、開発輸入の規制など六項目の決議を採択しました。

(秋田県農民連 佐藤長右衛門)

(新聞「農民」2008.7.7付)
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2008年7月

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