「農民」記事データベース20090316-868-01

耕作放棄地をなくそう

画像 耕作放棄地の面 積は、表のように38万6千ヘクタールで、埼玉県の面積に匹敵します。各地で耕作放棄地をなくそうとさまざまな取り組みが行われていますが、1985年から20年の間に3倍にも増加。農水省は農家の高齢化や後継者不足、条件不利地などを理由にあげていますが、農業で経営が成り立たない現状では、増加傾向に歯止めをかけることはできません。何よりの解決策は、おおもとの農政を変えることです。


荒れた田んぼ復田して

福島県農民連 佐々木健洋さん
〈実践報告〉

 ススキ刈り取り、柳を切り株除去

画像 昨年2月、県北農民連の会員から、「耕作放棄地をどうにかできないか」と相談を受けました。この地域は、30年以上前に基盤整備で20アールに集積されましたが、かなりの耕作放棄地がめだちます。酪農を経営する父親に「飼料高騰の対策も兼ねて自給飼料栽培(飼料稲)ができないか」と相談しました。

 話はすぐに決まり、賃貸契約を結んで80アールの田んぼを借りましたが、ほぼ5年間栽培されておらず、ススキと柳がおおっていました。刈り払い機でススキを刈り、柳を切り倒し、株を取り除く日々に、「なんてたいへんな田んぼを借りてしまったんだろう」と後悔することも。しかし、農民連の仲間にアドバイスや励ましを受けながら、復田作業を続けました。

 湿田が多く機械が入れないので機械作業ができるように排水溝を掘り、4月末になってようやく耕運できる状態になり、5月下旬に何とか田植えができました。収穫までさまざまな問題もありましたが、なんとか9月上旬の稲刈りを無事終えることができました。10月には、春の刈り取り用牧草をまき、今年5月には牧草の刈り取りと田植えをする予定なのでまた忙しくなりそうです。

農家が作らなくなった理由は価格低迷…

農産物の輸入抑制と
価格補償あってこそ

 増加した理由語られないまま

 食料自給率向上のために耕作放棄地の解消が注目されていますが、増加した理由が語られないまま解消だけが叫ばれているようです。また、「放棄地」というと農家が怠慢で耕作していないようにも聞こえます。作らなくなった理由は、生産物の低価格や高齢化、条件不利地などさまざまですが、特に価格低迷でやればやるほど赤字になる今の状況では、生産から撤退し耕作放棄地が増加するのは当たり前です。

画像
耕作が放棄された荒れた“もと”田んぼ

 当然、解消に向けて国をはじめ行政がバックアップすることは必要ですが、再生産可能な生産物の価格が補償されなければ、何度「開墾」しても「放棄地」にもどってしまうということを、肝に銘じるべきです。輸入農産物の抑制と農産物の価格補償が行われなければ、本当の「耕作放棄地の解消」は進みません。


荒廃地を復活してナタネ・ソバづくり

長野・佐久楽農倶楽部 荻原 徳雄さん

 長野県農民連・佐久楽農倶楽部の荻原徳雄さんは、「子どものころ、よく見た農村の風景を取り戻したい」と、仲間5人と荒廃地を活用してナタネ(2ヘクタール)・ソバ(1ヘクタール)づくりに取り組みました。種子は、青森・津軽農民組合から取り寄せました。いまでは4ヘクタールに広がり、小諸市や上田市でも栽培の指導を行うなど、食料自給率の低いナタネを普及し本物のナタネ油を作っています。

 荻原さんたちは、ナタネ栽培を通じて農村文化を起こそうと、「菜の花」を題材に俳句を募集したところ、小学生から90歳を超えるお年寄りまでたくさんの応募があり、表彰式も行いました。また、校外学習で菜の花畑を訪れる地元の小学生に、食や食文化を伝え、奥さんの節子さんが昔話の語りを聞かせています。そして、ナタネ油を学校給食に提供し、かき揚げてんぷらを子どもたちに食べてもらいました。

作った農作物を学校給食に提供
麦踏み体験・バレイショ栽培も

 これを機に学校給食にかかわるようになり、子どもたちとの交流もさらに深くなりました。小学2年生がおおぜい訪ねてきて、麦踏みの農業体験を行っています。収穫した小麦は、小さな街のパン屋さんに焼いてもらって給食のパンに。3年生はバレイショ栽培に取り組み、収穫祭では獲りたてのジャガイモを食べてもらいました。子どもたちの感想文には、農作業を通じて自分の生きがいや励みにもつながっていることがつづられていました。

食育・地域づくりにも大いに貢献

 さらに、このジャガイモを材料にフランス料理のシェフからコロッケづくりを教わり、農家と子ども、レストランがいっしょになって「本物の味」を作り上げました。

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荻原さんに教わって“麦踏み”する小学生

 荻原さんたちは、農閑期には荒廃地の地権者を招いてソバで感謝祭を行うなど、地域づくりにもおおいに貢献しています。

(長野県農民連・佐久農民センター 高橋達夫)

(新聞「農民」2009.3.16付)
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2009年3月

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