「農民」記事データベース20090323-869-06

食の安全・監視市民委が学習会

2人の報告者が指摘

 食の安全・監視市民委員会は3月2日、都内で学習会を開き、2人の報告者が体細胞クローン家畜をめぐるこの間の動きと問題点を指摘しました。

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体細胞クローン家畜をめぐるこの間の動き

日本消費者連盟事務局長  山浦 康明さん

画像 1980年代以降、受精卵移植が普及し、欧米を中心にクローン動物の実験が行われてきました。96年には、イギリスで世界初の体細胞クローン羊「ドリー」が誕生し、98年には日本でも2頭のクローン牛が生まれました。その後、毎年のように体細胞クローン牛が生まれ、2008年9月末までに557頭の体細胞クローン牛が出生しています。

 08年1月にアメリカFDA(食品医薬品局)がクローン家畜について「従来の家畜と同等に安全」との評価を公表したのを受け、日本でも5月に食品安全委員会のワーキンググループで審議が始まりました。
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世界初の体細胞クローン牛(右の2頭)=1998年(農水省農林水産技術会議の『Q&A集』から)

 


体細胞クローン家畜の問題点

市民バイオテクノロジー情報室代表  天笠 啓祐さん

画像 09年1月にワーキンググループがまとめた評価書案は、クローン家畜とその後代(子どもや子孫)の食肉・乳製品と既存の食肉等を比較した安全性の評価だけになっています。また一定期間育った体細胞クローン牛や後代は健全だと述べていますが、その根拠は不明確です。

 今まで出されてきた報告書や評価書は、クローン家畜の死産・生後直後の死・病死の多さ、後代家畜への影響、一定の割合で起こる過大子などの問題点にはまったく答えていません。出生時の異常の多さは否定できません。

(表)「家畜クローン研究の現状」(農水省)
体細胞クローン牛
死産
生後直後の死亡
病死等
事故死
廃用
試験と殺
研究機関で育成・試験中
受胎中
557頭誕生
78頭
91頭
136頭
8頭
11頭
151頭
82頭
14頭
(2008年9月末時点)
体細胞クローン豚
死産等
病死等
事故死
試験と殺
研究機関で育成・試験中
256頭誕生
88頭
59頭
10頭
47頭
52頭
(2007年9月末時点)

 食品としての健全性がとてもあるとはいえませんし、安全性も不明です。動物福祉や倫理観の欠如も問題です。食文化や宗教への介入、生態系など環境面への影響も懸念されます。

 FDAは、クローン家畜製品についての表示を義務づけていません。現在日本では、受精卵クローン家畜製品については任意表示になっています。表示を義務化しなければ、消費者が知らないまま口にする可能性があります。

(新聞「農民」2009.3.23付)
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2009年3月

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