「農民」記事データベース20090330-870-08

バイオ燃料
持続的拡大を図るには…

地球・人間環境フォーラムなど 3団体がシンポ開く


画像 NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク、国際環境NGO・FoEJapan、地球・人間環境フォーラムの3団体は3月5日、都内でシンポジウム「バイオ燃料と土地利用〜持続可能性の視点から」を開きました。

 バイオマス資源

 東京大学工学系研究科の山地憲治教授は「バイオ燃料をめぐる国内外の概況」について報告。2007年の世界のエタノール生産量は、アメリカとブラジルで7割以上を占め、EU(欧州連合)ではバイオディーゼルの生産が圧倒的になっている現状を指摘しました。

 さらにアメリカでは、22年までに年間生産量360億ガロンとする「再生可能燃料基準」を制定し、オバマ政権は、これをさらに拡大し、30年までに600億ガロンとしていると紹介しました。

 一方、日本では、バイオマス資源として、稲・麦わらを使った未利用系、家畜のふん尿・建設廃材を使った廃棄物系、休耕地等を利用した資源作物系があると説明し、「大量にバイオ燃料を生産するには不足している」と述べました。

 価格高騰の一因

 国連食糧農業機関(FAO)のキース・ウィーブ農業経済開発部次長(アメリカ)は「バイオ燃料〜見通し、リスクと機会」について発言。世界のエタノールとバイオディーゼルの生産量について、「エネルギー全体に占めるシェアは少ないが、成長は著しく、今後10年間は、この傾向が続く」と予測しました。

 バイオ燃料が食料価格高騰の主要な要因の一つになっている問題点を指摘し、「貧しく、食料不安に直面している人々への保護、環境の持続可能性の確保など、政策対応が早急に必要だ」と警鐘を鳴らしました。

 「バイオ燃料の持続可能性〜基準についての議論と今後の方向性」について東京大学アジア生物資源環境研究センターの井上雅文准教授が講演。「バイオ燃料の導入拡大を図るには、導入目標と具体的な行動計画が必要」と指摘し、各国の取り組みを紹介しました。

 産業技術総合研究所素材エネルギー研究グループ長の匂坂正幸氏は「東アジアにおける持続可能なバイオマス利用ビジョンとLCA」について講演。東アジアでのバイオマスへの期待の高まりについて語り、政策提言や相互学習が進められている現状を報告しました。

 高まる反対の声

 「バイオ燃料は持続可能か?」のテーマで報告したのは、FoEインターナショナルアグロ燃料キャンペーン・コーディネーターのトリー・クスワルドノ氏(インドネシア)。インドネシアでアグロ(バイオ)燃料生産のためのパーム油プランテーションが森林破壊を招き、農民のコミュニティーを破壊している実態を報告し、各地で広がる抗議行動を紹介しました。

 地球・人間環境フォーラムの満田夏花主任研究員は「土地利用転換の現場から」と題して講演。インドネシア・西カリマンタン、マレーシア・サラワクのプランテーション開発の現場を調査した結果について述べ、「森林、泥炭地の減少、モノカルチャー(単一栽培)化による生息地の消失と分断、地元社会や文化への影響などが大きく、開発に反対する地元住民の声も高まっている」と、問題点を指摘しました。

(新聞「農民」2009.3.30付)
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2009年3月

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