「農民」記事データベース20090330-870-09

うまい! 辛い! 優秀(有臭)!

ただ今人気上昇中「ハリマ王」ニンニク

画像 「うまい! 辛い! 優秀(有臭)!」――兵庫県加西市の農民連会員、北本惠一さんが、祖父の代から作り続けている古い品種のニンニクが、加西市の特産品として脚光をあびています。その名も「ハリマ王」ニンニク。なにしろ臭いが強く、辛味バッチリ。「これぞニンニク」という風格で、地元の焼肉屋さんのタレに、フランス料理に、居酒屋メニューにと、ただいま人気上昇中です。


兵庫・加西市 北本 惠一さん

在来種が地域おこしに一役

 加西の風土に合ったニンニク

 北本さんのおじいさんがニンニクを作り始めたのは、今から80年ほど前の昭和初期のことでした。「村役場のすすめとか聞いてますが、なにしろ祖父さんの代のことで…。でも神戸ビーフがよく知られているように、兵庫は牛肉の食文化がとても古くて、薬味としてニンニク需要が昔からあったのかもしれません」と北本さん。しかし戦中・戦後の食料難の時代にニンニク畑はイモ畑となり、捨て去られたニンニクが畑の隣の竹やぶに野生化し、自生するのみとなっていました。

 名もない地ニンニクにふたたび脚光が当たったのは昭和30年代。復員した北本さんのお父さんのもとに、市内で焼肉屋を開業する人が「秘伝のタレ」に合うニンニクを探しているという話が持ち込まれました。「そういえば…」と竹やぶのニンニクを思い出し、さっそくタレを試作してもらったところ、「これはうまい。毎年作ってほしい」ということに。

 以後40数年、「秘伝のタレ」が評判を呼んで焼肉屋さんも繁盛し、北本さん親子も世代を越えてニンニクを作り続けてきました。「買い続けてくれる業者さんがいたから、特別な意識もなく、ずっと作り続けてきました。でも今思うと、 このニンニクが風土に合っていたこと、持ち味を生かしてくれる料理人さんに出会えたことが長続きした力だったんですね」と北本さんは言います。

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ニンニクの収穫。農業体験者も加わって共同作業

 地域の種をみんなで育てる

 さらにここ数年、新たな広がりが生まれています。一代交配種(F1)などに押されて多くの在来の種子が姿を消していく中で、「このニンニクはうまい!辛い!臭い! 個性があるし、80年も細々と作り続けられてきて、まさにこの地方の種だ。北本さんの種株(球根)を分け合って、みんなで作り続けていこう」という仲間が広がってきたのです。「ひょうごの在来種保存会」をはじめ、地域の有機農業研究会や農民連の会員農家で栽培が始まり、生産量 も徐々に増えてきました。

 北本さんと「ひょうごの在来種保存会」代表の山根成人さんで相談し、「ハリマ王」という品種名をつけ、昨年は特許庁への商標登録も行いました。

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乾燥中のニンニクの前で 北本さん

 「ハリマ王」を地域の特産品に

 加西市も3〜4年ほど前から、「『ハリマ王』ニンニクを市の特産品に」と乗り出しています。加西市北部の中山間地では近年、農家の高齢化と農地の荒廃が進み、鳥獣被害が深刻化しています。「『ハリマ王』ニンニクなら高齢者にも作りやすいし、鳥獣被害にもあいにくい」と、加西市農政課も北本さんにラブコール。「ニンニクで地域の力になれるなら」と、球根と栽培技術を北本さんが提供し、昨年は市の農政課を通 して20人が「ハリマ王」ニンニクを栽培しました。

 加西市の応援もあって、焼肉屋さんの他に、居酒屋さんやゴルフ場、県営施設などで「ハリマ王」ニンニクの特色を生かしたさまざまなメニューが登場。「うれしいことに地域のみんなで作らないと追いつかないくらい、『ハリマ王』ニンニクも認知されてきました」と喜びもひとしおの北本さん。

 「温暖化の影響もあって、大きな玉を種株にすると病気が出やすくなったり、栽培の苦労は絶えません。でも親父もぼくも土作りに力を入れたりして、安全な栽培方法をずっと続けてきましたから、その技術をもっともっと地域に生かしていきたいですね」と、話しています。

(新聞「農民」2009.3.30付)
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2009年3月

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